誰かのために、どろんこになって考えてみる。上級ウェブ解析士、植田 薫さん

「仕事とウェブ解析士」をテーマにお送りするウェブ解析士インタビュー。30人目は、SLOP代表/クリエイティブディレクターの植田薫さんです。

ホームページを基点として、コミュニケーションのあり方をどろんこになって考えてみる。そんな植田さんの提案は、まさに本質そのもの。また、「納得できる仕事がしたい」という信念は、新型コロナウイルスの影響で頼りの収入源を失っても変わることはありません。

そんな植田さんに、現在のお仕事、上級ウェブ解析士の活かし方、起業されてからのこと、今後の展望について伺いました。どんな環境でも前へ進み続ける植田さんの姿は、フリーランスの方はもちろん、あらゆる人を鼓舞してくれるはずです。

(インタビュー・編集:ウェブ解析士 佐藤 佳)

植田さん
目次

傷ついてでも、そもそも論を伝えてみる

植田さん、本日はよろしくお願いします。まずは植田さんのご経歴や、現在のお仕事について教えてください。

広告代理店のインハウスデザイナーとして7年勤務した後、フリーランスとして独立しました。SLOP(スロップ)と言う屋号で、デジタルマーケティング、コミュニケーション設計、広告クリエイティブの3つを事業領域としています。

今行っているのは、奈良県宇陀市にある保険代理店のホームページリニューアルの仕事です。創業38年の会社さんなのですが、アフターコロナも見据えてホームページをどうしていくか?ご相談に乗っています。

まさに、コミュニケーション設計を変えていこうというお話ですね。

おっしゃるとおりです。ただ、オンライン相談は大手さんもされているので、どう違いを出したらいいのかずっと考えていました。そこで宇陀市について調べたところ、最先端の農業技術があることや、人口が減っていることを知ったんです。

この先、テレワークをしながら地方で働きたい人や、家庭菜園をやりながら働きたい人は増えると思ったので、まちの魅力を取材して発信することで、そもそも人口を増やすことをご提案しました。

なんと、ホームページリニューアルのご相談が、人口を増やすご提案に(笑)

そこからやっていった方が、お客さんはもちろん、働き手も増えると思ったんです。それに、保険を買ってもらおうと思ったら、まちの人たちがどんな生活をしているのか、どんなライフプランを描いているのか知る必要があります。

そこで、地元の企業や商店を取材したり、地元のイベントを取材したりすれば、宇陀市やまちに暮らす人のことも理解できて、魅力も発信できる上に、何よりまちの人と仲良くなれますよね。

そもそものお客様との出会い方を変えるということですね。

そうすることで、新人の子が成果を出しやすい営業スタイルもつくれると思いました。保険って、結婚したり、子どもが生まれたり、ライフステージが変わると必ず必要になってくるものですが、大事なのはその時に思い出してもらえること。

取材で仲良くなれたとしたら、それだけでも成約率は変わってくるはずです。新人の子にチャンスをつくるためにも、まちの魅力を取材してもらって、愚直に書いてもらうサポートをしたいと思いました。

「コンテンツの洗い出し」のワークを実施中。Zoomで画面共有しながらお互いに作っていきます。

植田さん、この案件をどうやって受注されたのですか?本質的にも、中長期的にも正しいと思いますが、目の前の利益に結び付きにくいことを伝えるのは難しいと思うのですが…。

実は、Zoomで2時間お話して受注しました。資料もなしで、僕のエネルギーを全部ぶつけて。決まった理由は、金額と意気込みのバランスじゃないでしょうか(笑)

それに、最初の時点でパッションが合わない人は、長期的にうまくいかないことも多いので、傷ついてでもそもそも論を伝えるようにしています。フリーランスになった今、自分をごまかしながら仕事をする必要もなくなりましたし、何より納得できる仕事がしたいですね。

上級にお勧めなのは、自分で事業をしている人

植田さんは、どんなタイミングでウェブ解析士を取ったんですか?

独立して1年後に取得しました。当初は、代理店経由の仕事を取っていけば、食べていけると思っていました。でも、仕事にこだわりがあるからでしょうか、結局クライアントさんと直に接する仕事が増えていったんですよね。

そうなると、予算の関係でウェブ解析も含めてすべてを1人でやる必要が出てきたので、Google アナリティクスを使えるようになりたいと思ったのが動機です。そういう資格ではなかったことは、後から気がつきました(笑)

ウェブ解析士を知ったきっかけは何だったんですか?

周りでウェブ解析士を持っている人がいたので、存在は知っていました。箔をつけるためにも取りたいなと思って、2016年の8月にウェブ解析士を受験して、そのまま10月に上級ウェブ解析士も受験しました。

一気に取得した理由は、覚えているうちにやってしまおうというのもありますが、講師の神谷さんから「コンサルティングをするなら上級まで取得した方がいいですよ」とお勧めされたのもあります。

実際に取得してみて、どんな人に上級ウェブ解析士がお勧めだと思いましたか?

自分で事業をしている人にお勧めです。
具体例で言えば、パティシエであり、上級ウェブ解析士でもある友田成生さんです。彼は自分で事業をしながらホームページを作って、ブログを書き、解析もしているのですが、まさにこういう人が上級を活かせるなと思いました。

あとはフリーランスの人にもお勧めです。意思決定をする人が知識を持っていないと、全部丸投げになったり、情報を鵜呑みにして失敗したりするからです。事業のことを知らないと、なぜ分析するのかって話にもなりますしね。

同感です。ウェブ解析で分かったことを事業に反映させないと、本当の意味での改善・改革ってできないですしね。

もちろん、事業をしていない人は学んではいけない、という意味ではないです。ただ、事業をコントロールできない人が上級を学んでも、学んだことを活かしきるのは難しいと思います。

なぜなら、結局はビジネスの本質的なところに迫っていく必要があって、細かいテクニックの問題ではなくなっていくからです。事業を変えられる人、PDCAが回せる立場にいる人、両方に影響を与えられる人が学ぶと、より大きな成果が出せると思います。

上級を取得された後、机上で学んだことと実務のギャップを埋めながらお仕事されていると思いますが、どのような工夫をされていますか?また注意すべきことは何ですか?

最初の動機であるGoogle アナリティクスについては、人に聞いたり、本を読んだり、YouTubeを見たり、あらゆる手を尽くして自分で学んでいきました。

注意している点は、「知恵をつけると知恵を使いたくなる」という点です。学んだことって実践したくなりますが、それゆえに本質からそれてしまう要因にもなるんです。知恵をつけない方が相手に寄り添えることもあるので、ここのバランス感覚は気をつけています。

大切なのは、小さく始めてみること

そもそも植田さんはなぜ起業されたんですか?

もともと、独立するつもりはありませんでした。会社を辞めるかどうかの瀬戸際でプレゼンした案件が受注できちゃって。これまで尽力してくれた仲間を不義理にできず、植田さんが抜けたら困りますと言われて……(苦笑)

転職活動はあきらめ、会社に所属している体裁のままそのプロジェクトを取り組むことを決意しました。当時、口座を開いてくれた社長、上司を説得してくれた後輩に今でも感謝しています。その案件以外にも、1人で活動していたら、お世話になったウェブ制作会社さんからお仕事いただいたり、紹介でいろんな方から引き合いの連絡があって、そこそこやれそうな気持ちになってきて。

独立して1年後、ようやくそこで、フリーランスの道を選択しました。

植田さんのプロフィールにある好きな言葉って、吉田松陰ですよね。どこでこの言葉と出会ったんですか?

広告代理店に転職して、徹夜ばかりしていたころですね。その時はとことんネガティブになっていたのですが、“悔いるよりも今日直ちに決意して、仕事を始め技術をためすべきである。” という吉田松陰の言葉を目にして、ものすごい衝撃が走りました。

なぜなら、どうせ無理だと、言葉にしていない企画やアイデア、人に伝えてない感情など、たくさんありましたから。大切なのは、小さく試してみることだったと気づかされました。

植田さんのスモールアクションのコツって何ですか?

僕なりに考えた結果、辿り着いたのは「易経(えききょう)」でした。ものごとが芽生える前って、なんでも生みの苦しみがあるじゃないですか。じゃあそれを乗り越えるためにはどうしたらいいかというと、極論はそのことしか考えない、ということです。

いろんなことがあると目まぐるしくなってしまって、やってみようと思ったことも忘れてしまいます。何か自分の中でトリガーがかかったら、そのことに集中するのが良いと思います。

易経(えききょう)って、確か中国の書物でしたよね?

僕も2年前に勉強し始めたところなのですが、東洋最古の書物で、占いの書とも、学問の書とも言われています。バイオリズムや物事のタイミング、人間関係などの“兆し”を読むのに古くから使われていたそうですよ。

さっきお話したのは易経の全64卦のうち“四大難卦”とされる水雷屯(すいらいちゅん)のことで、僕は「産みの苦しみ」と捉えています。怖いけど、焦らず、妊婦さんのように産みの苦しみを味わおうと受け入れる。そうすると、案外道が開けるものだと思っています。

たとえば、こちらの写真。

易経の資料
「風沢中孚(ふうたくちゅうふ)」という卦

「卦」って、こんなふうに意味が入ってるんですね!

これは「風沢中孚(ふうたくちゅうふ)」という卦で、誠実さを表しています。卵みたいな形で可愛くて好きな卦です♪
コロナ禍のような不安な時だからこそ、新しい取り組みや交際は誠実さをもって、信頼関係をつくり上げていくことが大切だと思います。

変化に対応する人だけが、次のチャンスを掴む

インタビューも終盤になってきました。植田さんの未来でやりたいことってなんですか?

絵本を書きたいと思っています。もしかしたら僕は、好きな絵を描いて、放浪して、かすみを食って生きていく方が向いているのかもしれません。でも家族も大事だし、お客さんに喜んでもらって生計を立てることも大事なので、この夢が叶うのは10年先でいいと思っています。

ただ、自分の中で沸き起こるものに対して素直でいるために、自ら望んでフリーランスの生き方を選択したんだから、思うようにやりたいと思っています。

選択肢がない苦しさもありますが、選択肢があるからこそ迷って辛いこともありますよね。

それ深いですよね。
今、あるプロジェクトを行うために中高生たちと哲学対話をやっているのですが、みんなホントにピュアだし、選択肢があるから悩んでしまって、逆に踏み出せないんだなと感じています。僕みたいに40も近くなると、選択肢がないじゃないですか(笑)

こうなったら火事場のバカ力というか、もうミラクルを起こしていくしかないんです。それに、同じように頑張っている経営者を見ると、自分もそうなりたいって感化されますしね。

みんなの頑張る姿をみて、鼓舞されている人って私も多いと思います。

実を言うと、新型コロナウイルスの影響で、今年のメイン案件だった300万円を失って、定期的な収入源もバッサリなくなってしまったんです。この穴埋めをするために、とにかく節約して、メルカリでモノを売って、いっそLINEスタンプでも作ろうかとか、もう必死です。

こんな状況だからめげずに頑張っている人を見ると勇気づけられますし、変化に対応する人だけが、次のチャンスを掴むんだなとも思います。

えええー!そんな中、インタビューにお答えいただき恐縮です……。
最後の質問ですが、これからどんなスキルを身に付けていくと、新しいチャンスを掴んでいけると思いますか?

解析しながら自分で書ける人が、企業にもっと増えたらいいなと思います。これは広報の領域だと思うのですが、自社のアピールについて基本のスキルセットを持った人が育っていけば、事業も広がるし、ウェブも盛り上がるし、一石二鳥だなと。

最初の話に戻りますが、宇陀市の保険屋さんへの提案も、そういう人材を育てたいという想いもありました。広報がしっかりできたら、マーケティングもできるし、解析もできるようになっていくと思います。

あとがき

植田さんのお話を聞いて感じたのは、本気でどろんこになろうと思わないと、お客様にこんなご提案はできないし、こんな生き方もできないということでした。自社のホームページの在り方について本質から考えたい方は、ぜひ植田さんにご相談してみてください。優しく、穏やかに、しかし溢れる情熱と強い信念をもって、あるべき姿に導いてくださるはずです。

SLOP(スロップ)さんへのご相談はこちらから

デジタルマーケティングのSLOP
https://www.slop.jp/

植田さんのFacebook
https://www.facebook.com/kaoru.ueda.31

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