業界内外への発信を通じて“ウェブサイトの育成”の推進に取り組む上級ウェブ解析士、吉田哲也さん

「仕事とウェブ解析士」をテーマにお送りさせていただくウェブ解析士インタビュー。14人目は、ウェブサイトの制作からウェブ解析、運用代行、コンサルティングに至るまで幅広く対応している有限会社TY Planning代表取締役の吉田さん。2001年からウェブ業界に携わり、制作からコンサルティングまでトータルで対応してきた経験を踏まえ経営視点でのアドバイスも行うなど、事業の成果に貢献するウェブサイトの活用に取り組まれています。

最近ではウェブ関連のセミナーやイベントへ多数登壇されているほか、企業研修やマンツーマンレッスンなども行い、「ウェブサイトを育成する」という考えの教育・推進にも意欲的に取り組まれている吉田さん。長年業界を見てきた吉田さんにウェブへかける熱い想いを伺うことができました。

(インタビュー:ウェブ解析士マスター 小杉 聖)
(編集:ウェブ解析士 中川 千春)

上級ウェブ解析士の吉田さん
撮影:イイダ マサユキ

検証・改善をキッチリ実践

今はどちらでお仕事をされているのですか?

去年、東京から茅ヶ崎に引っ越しました。趣味がサーフィンなので「湘南に引っ越してみようかな」と思いまして。お客さまは以前から継続の方が多く、東京がほとんどです。

湘南の海

お客さまとのやりとりには不便は感じませんか?

東京にいた頃も日頃のやりとりは Zoom などを活用してオンラインで済ませることも多く、毎日都心まで出ているわけではなかったので、今とそれほど変わっていませんね。
今でも、週1~2回くらいは都内に行っています。

上級ウェブ解析士ということですし、登壇もされているので、お仕事の内容はコンサルティングがメインでしょうか。

ウェブサイトの制作と、その延長でコンサルも含めて行うこともあるくらいですね。制作までという会社が数社、毎月継続でコンサルなどのサポートもしている所も同じくらいあります。
あとはパーソナルトレーニングのような形で、トラブルシューティングの個別相談に対応することもあります。

もう少し具体的に伺っても良いですか?

事業の成果に繋げるために、どのようにウェブサイト・ネットショップを改善すべきかという観点で、ご提案しています。
そして、経営者目線でのアドバイスとして事業全体の収益にどのようにウェブサイトを活用するのがよいかという話もしていますね。

自分で実際に手を動かして、運用面も考えた提案も大事にされているそうですね。

はい、制作や集客だけではなく、運用・保守など全ての業務を俯瞰した視点での改善提案やアドバイスを行っています。立派なウェブサイトができたけど集客につながっていないとか、集客で集めたけど現場が回るようなしくみができてない、というケースも見てきたので…。
ウェブサイトは情報の更新や商品の追加といったメンテナンスや運営で育てていくものなので、運営面まで考えて提案をすることが大事だと考えています。

ウェブサイトを公開してから運用し、育てていくためにはどんなことが大事だと思いますか?

まずはプロトタイプのようなものでいいので小さく作って公開してみて、データを取る。それを解析して、お客さまの反応を把握する。こうした解析を踏まえてバージョンアップさせていく、という流れがいいのではと思います。
ウェブの運営では早く反応を見て、検証・改善していくことが大事ですから。自分の仕事でもそれを追求していきたいですね。

言うのは簡単ですしテキストにも書いてありますが、それを実践し続けられるのは、なかなか大変なことですよね。素晴らしいです!

自分たちにとって当たり前のことも、世間では当たり前ではない

最近ではセミナーやイベントの登壇も増えていらっしゃるようで、時折SNSでも拝見していますよ。

はい。去年くらいから、少しずつセミナー登壇を増やしていますね。この前は Google Search Console(サーチコンソール)のセミナーに登壇しました。11月には WordCamp Tokyo 2019 でも登壇しており、現在販売中の WordPress のセキュリティの話について話しました

WordCamp Tokyo 2019 での登壇スライド

最近のセミナーでは、やっぱりセキュリティのテーマですか?

ウェブサイトやネットショップの構築や運営、解析、WordPress、保守管理、セキュリティー対策などが多いですかね。

ウェブに関わるところを全部網羅している感じですね!

制作から運用・コンサルまで全部自分でやっているので、その経験を踏まえて話しています。
以前にも WordPress をテーマに50人くらいの規模のところで話をしたんですけど、「更新して使ってる人いますか?」って質問してみたら、なんと誰もいない状態でして。これには驚きました。

まさか、その人数で1人もいないとは……

「この世界にいると当たり前のことも、世間では当たり前じゃないんだ」と痛感しましたね。お客さまにウェブサイトを納品して終わりという人、制作会社に作ってもらってそのままという人も多いんだな、と改めて感じました。ウェブサイトは作って終わりではなく、公開してから解析、改善、運用していくものだけど、まだまだわからない人も多くて。
今まで自分が学んだ知識や経験を、なるべく多くの人に情報発信していこうと考えるようになってから、セミナー登壇・講演・執筆を増やしています。

吉田さんは、ご自身でも月に数回はセミナーに行ってらっしゃるとか。セミナーの他に、インプット源というか、読んでいる本とかありますか?

最近だと、「アウトプット大全」ですね。精神科医をされていて脳科学分野で情報発信をされてる方のもので。セミナーの仕事でもお世話になっているんですよ。
仕事の効率化などについて取り上げられていて、「インプットだけじゃなくアウトプットしなきゃ」と思うようになりました。
もともと、学んだことを定着させるにはアウトプットしないと!という気持ちが強かったんです。学んだことをツイートして、次の日にはブログにまとめて、それをセミナーで話して……というサイクルでアウトプットするようにしています。

話題の本ですね!私も気になっていたのですが手が出なかったので、年末年始にじっくり読むのもいいですね!

ウェブ解析士という資格の魅力は“情報の鮮度”

吉田さんは、独立して何年か経ってから、ウェブ解析士を取得されたんですよね。きっかけは何だったんでしょうか。

CSS Niteなどのイベントで、何度かウェブ解析士協会のブースやチラシを見かけていたので、ずっと気にはなっていたんです。

そこから取ろうと決心したきっかけはありますか?

それまで独学でやっていたんですが「何か資格が欲しいな」と思うようになって、ウェブマーケティング系の資格を色々と調べました。
その中でウェブ解析士は、カリキュラムの改定も頻繁で最新の情報も網羅しているし、運営母体である協会の信頼感も一番あったように思いますね。
最初から上級までとることは目指していなかったんですが、学んでいくうちに「せっかくなら、レポート作成の技術が学べてコンサルの実践に役立てられる上級まで取ろう」と思い、2014年に上級まで続けて取得しました。

上級まで一気に!実際に取得してみてどうですか?

セミナーやイベントに登壇する前など、話をする分野に関する知識を整理するのにとても使えると思いました。
特に、上級で学んだレポートの書き方が参考になりましたね。経営者向けにアドバイスも行っているので、事業計画書なども為になりました。今でも提案の際に役に立っています。

講座中の吉田さん

事業計画と言えば、2019年のテキストは第2章が特に増強されているので、ここだけでもぜひ読んでみてほしいですね。ベンチマークの考え方とか環境分析とか。
カリキュラムは委員会によって毎年更新されているのですが、私も来年のテキストが楽しみです。

そうですね、最新の情報が載っているのは非常にありがたいんですよ。情報の鮮度が良いというか。

とはいえ、どんどん新しい情報が出てくる時代なので、1年更新というのは正直、それでも遅いようにも思うのです。

すぐ陳腐化するような小手先の情報ではないですからね。
以前登壇した Google Search Console の情報を本で調べた時に、あまり情報が見つけられなかったんですよね。あっても情報が少ないとか、古いままということも多くて。そんなときでも、テキストに書かれていた情報は網羅性が高くて助かりました。

確かに、Google Search Console は変化が大きい割に Google アナリティクスより情報が少ないですよね。

Google Search Console は、ウェブサイトが外からどんな風に見られているのかがわかりますし、コンテンツの伸びしろを見つけるツールとして欠かせないので、もっと情報を共有していけたらと思っています。

先ほどウェブ解析士の公式テキストについてコメントいただきましたが、ウェブ解析士協会の活動についてはどう思いますか?

あれだけ情報量のある分厚いテキストを毎年改定していますし、本当にすごいと思います。セミナーも色んなテーマでやっていますし。ウェブ解析士の資格を持っていると割引があるのもあって、参加しやすくなりますよね。
今年のウェブ解析士会議も良かったですよね!レベルの高い講師陣で、内容がコンパクトにまとまってわかりやすく、解析の前の考え方を身につけるのに良かったと思います。一日で様々なジャンルの知識をアップデートすることができました。自分も講師をするようになって、セミナーやイベントに対する見方がまた変わりましたね。

ところで、ある程度ウェブ業界で仕事をしている人だと、「今さら特に資格なんていらないんじゃない?」って思う方もいると思うんですが、吉田さんとしてはどう思われます?

マーケティング系ってなかなか資格が無いですし、しかも、ウェブマーケティングに直結した資格は貴重です。知識の整理だけでなく、信頼度の向上にも役立っていると思っています。フリーランスの人はもちろん良いと思いますし、会社員でも特にウェブ系のセールス・マーケティング関係の人にもいいのではと思います。
あとは、ブランドというか“ウェブ解析士”という名前も良いと思っています。他業界の人にも何の専門家がわかるので反応も良いですし、運営母体とかカリキュラムの改訂頻度などを見ると、ウェブ解析士は間違いないって思います。

ウェブ解析士マスターとしては、自分が褒められている気分になりました(笑)
とはいえ、資格をとってみたけど、なかなかうまく使えていないという人もいると思うんです。

資格をとった後に、どう自分が動くかが重要だと思っていますね。今でもウェブ解析士向けに関わらず、様々なセミナーに行って最新の情報を吸収することを大事にしています。
あとは、実際に仕事で使っているかどうかも関わってくると思います。どんなに知識を身に着けても、実際にレポートを作ってみないと忘れてしまうと思うんですよね。

先ほどの話にも通じますが、インプットとアウトプットの両方が大切ということですね。

私の場合、制作も解析もコンサルも…とひとりで全部やっていることもあって、網羅的に最新の知識を持っておく必要があるんですよね。今の時代、ネットやブログなどでも情報は得られますが、自分で探すだけだと偏ってしまうこともありますし。
ちゃんとその分野で活躍する第三者から聞くと、学べることがとても多いです。ウェブ解析士にはコミュニティがあり、実際に話を聞ける機会に恵まれるのも魅力ですね。

様々なことをされている吉田さんですが、今後の展望は?

迷っているところもあるんですが、今のところは拡大は考えておらず、プロジェクトに応じて外部のパートナーと提携するというスタイルでいたいと思っています。趣味や自分の時間も大切にしたいですし。
WordPress のセキュリティに関する書籍も発売され、うれしい反響もいただいているので、引き続き「ウェブサイトを作った後に、いかに育てるか」の大切さを伝えていきたいですね。

あとがき

少し照れながらも、柔らかい笑顔でインタビューに答えていただいた吉田さん。「質実剛健なジェネラリスト」という印象で、ウェブに関わる様々な分野での活動を伺うことができました。趣味のサーフィンを楽しんだり、学習欲を満たすセミナーへも参加したりと、ちゃんとご自身の時間も大切にしていらっしゃるところも、とても充実した人生を送られているのだなあと、ほっこりしました。

ウェブ解析士の資格を取得すると、独立起業したくなるとよく言われるのですが、そうなったときに自分のポジションを確立できるヒントが盛りだくさんでした。つまり、インプットとアウトプットのバランスを取りながら、それらの質を高めていくこと。フリーランスのベンチマークにもなりそうですね。

吉田さんは“ウェブサイトの育成”をメインテーマにされていました。課題が絶えないテーマを軸にしてビジネスを展開するのは王道ですから、次はこういった課題の見つけ方についても伺ってみたいところです。

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