上級ウェブ解析士満点の秘訣とその背景、柴 佳織さん

今活躍しているウェブ解析士の方にお時間をいただいて、「仕事とウェブ解析士」をテーマにお送りさせていただくウェブ解析士インタビュー。第2回にお時間をいただいたのは、上級ウェブ解析士の柴さん。なんと2018年12月の上級ウェブ解析士試験を「満点」で合格しているすごい人なんです。

そんな柴さんの経歴はひとことでいうなら圧倒的なオールマイティ

と幅広い領域の知識・経験があるんです。
今回ウェブ解析士だより編集部は、そんな柴さんのお仕事と、「ウェブ解析士」との関わりかたに迫りました。

上級ウェブ解析士の柴さん

(インタビュー・編集:上級ウェブ解析士 飯川 慶子)

さっそくですが、上級ウェブ解析士“満点”の秘訣は?

とはいえども、編集部としてどうしても気になってしまうのが……

上級ウェブ解析士、満点……。おめでとうございます。
私も一応所持してはいるものの、そもそも“満点”をとることが物理的に可能なのだ、ということに大変驚きました。
差し支えなければ、満点をとるための秘訣を教えていただけますか?

満点だったのですね!私もびっくりです。大きく私は2点意識していました。
まずひとつめは、わからないことは講師にきちんと確認することですね。私は事前課題の時から質問していました。講師の先生には、私の細かい質問にも、都度ご丁寧かつ迅速にお応えいただいていたので、本当に感謝しています。
ふたつめに、”相手(クライアント)がいる仕事と同じ責任感でやりきること”でしょうか。“自分の資格のため”だと思うと妥協をしてしまうと思ったので、これを心がけたことが、得点につながったのだと思います。

たしかに、私が上級ウェブ解析士を受講したさいは、柴さんのおっしゃっている”悪い例”の状態になってしまっていたような……。
タイムマシンで戻れるなら、あの頃の私に教えてあげたい……。

受験理由はこれまでのキャリアの整理

それだけの志と、実務経験がおありなのに、どうして上級ウェブ解析士を取得しようと思われたのですか?

2つあります。
ひとつめは、産休育休のブランクを早く取り戻すためです。育休から復帰してからの仕事に+αで取り組めるものをと思い、勉強をはじめました。
ふたつめの理由、これが手段としてウェブ解析士を選んだ理由ですが、断片的に独学で得てきたモノ(知識・スキル・経験など)を体系立てて整理したかったからです。

上級ウェブ解析士を受講したことで、お仕事で何かしらお役に立てていますか?

ウェブサイトの企画をするときに活きています。
それまでももちろん3Cや競合調査、ペルソナ設計やカスタマージャーニーなどやっていました。
しかし上級ウェブ解析士を受講したことで、「自分の型」にプラスして「協会が作った解析士としての型」を取得できたので、結果的に自分の型をよりブラッシュアップできたと思います。

お仕事にお役に立てていること以外で、何かしら上級ウェブ解析士を受けてよかったことや、改善してほしいことがあれば教えてください。

よかったことは2点ですね。
ひとつめは上級ウェブ解析士を取得したあとも、学び続けられることです。このあいだも、海外展開を考えているクライアントさんがいたので、勉強のためにグローバルマーケティングのセミナーに参加しました。この資格を取得していなかったら、このセミナーにも巡り合えなかったと思います。資格があると参加費も少し安くなるので嬉しいです(笑)
ふたつめは、志気が高く、さまざまなバックグラウンドを持っている人たちと交流できたことは楽しかったです。
改善してほしいことは私のことではなく恐縮なのですが、さまざまなバックグラウンドをお持ちの方が受ける資格だからこそ、Google アナリティクスを触ったことがない人むけのフォローをきめ細やかにしたほうがいいということです。
たとえば、講座受講とセットで最初から上級Google アナリティクス講座の日程を申し込めたらいいのにという印象を受けたのを覚えています。

アクセス解析からSNS、視座をあげるために戦略・企画へ

そんな柴さんですが、私が経歴を拝見してまず感じたのがそのオールマイティーさ。ウェブ解析士の領域に近しいアクセス解析はもちろんのこと、SNS(とくにFacebook)の運用や、サイトの戦略・企画まで幅広く携わっていることに驚きました。

ここからは柴さんのキャリアについてお伺いします。経歴を拝見するととても幅広くいろんなことにチャレンジされているな、という印象を受けたのですが、もう少しお仕事の経歴を詳しくお聞かせ願えませんか?

遡ると、ウェブマーケティングマーケティングのコンサル会社にいたときに基礎を学びましたね。このときは主にアクセス解析を中心に、IA(情報設計)を担当していました。
フリーに転身したきっかけはFacebookが流行りはじめたときに、企業のFacebookの活用事例をまとめた事例集ブログを開設したら、SNSマーケティングの企業さんからお仕事の問い合わせが来るようになったことですね。
当時はあまり企業さんの間でも”Facebookページを分析する”という考えが普及していなかったのですが、私はデータの集計や改善を包括的にやってみたかったので独立に踏み切りました。
フリー時代はSNSコンサルと並行してメディアへの寄稿・書籍執筆、講師なども行っていました。
そして現在の会社ではクライアントのサイトの戦略立案・企画設計、分析、SNS広告運用などを主に担当しています。

“会社員からフリーランスに転身する” というお話はよく伺うのですが、近年その逆、つまり”フリーランスだったけれど、会社員に戻る”という方も多いように感じています。
柴さんもそのようなキャリアを歩まれていますが、差し支えなければその理由を教えていただけましたら幸いです。

今の会社に移った理由としてはフリーランス当時からよく一緒に仕事をしていた代表と、クローズドで運営していたサービスを自社サービスとしてオンライン化させたかったからというのが最も大きな理由です。
また、いままでは専門分野(アクセス解析やSNS)を深堀りする形でキャリアを築いてきましたが、分野を広げたかったというのも理由です。

戦略・企画は「数」を裏切らない

分野を広げたかった、という点でひとつお伺いしてもよろしいですか?
ウェブ解析士の方のなかには、制作・広告運用・SEOなどの “自分で手を動かしたモノにたいして解析ができる分野” と一緒に解析を学ばれている方にはよくお会いするんです。
しかしながら、一見すると、“解析”のフローからは少し離れている “戦略・企画” の部分に手を伸ばされている方は珍しいな、と思いました。
なぜこの “戦略・企画” の領域に携わろうと思ったのかをお聞かせ願えますか?

分野を広げるというよりは、視点をあげたかった、でしょうか。
戦略は、ウェブマーケティングによりビジネスで成果を出すために欠かせません。その後の全行程の根本になるという意味では、どの領域を担当するにしても戦略を理解しておくことは重要です。特に解析においては、成果を数値で見ていくという点で密接していると考えています。
また、これからの自分のキャリアとし、どこを強味としてやっていこうかな?と考えたとき、“中長期的に積み上げていけるスキル” が、戦略・企画といった上流工程だったんです。
自動化が進んでいく業務もありますし、獲得したスキルがすぐに更新されてしまう分野もあります。たとえばSNSを例に挙げると、流行り廃りのサイクルが速いですし、アウトプットとして感覚が若い人のほうが得意なのは事実だと思います。
それと比較して、キャリアが着実に積み上がっていく、数を踏んでいくほどわかってくる領域とはなんなのかを考えたときに挙がってきたのが、この戦略・企画立案の部分だったのです。
今の会社でも、戦略・企画立案は私がするんですが、トレンドが反映される運用部分は積極的に若い方をアサインしてお願いしています。

たしかに……デザインや広告運用ではよく “2019年のトレンドはコレ!” という記事が出回っては消え、出回っては消え……を繰り返していますが、たしかに戦略・企画といった部分においては “今年はこの戦略!” といったものはあんまり見ないですね。

よい戦略・企画を生み出すために必要なこと2つ

そんな戦略・企画部分に携わられている柴さんですが、よい戦略・企画を生み出すために日常生活からこころがけていることがあれば教えてください。

2つあります。
ひとつは自分が惹かれたり、うまいなと思ったコンテンツに触れたときは、なぜそれがいいのか、どこがいいのかなどを抽象化して、言語化することです。
どこがよかったのかを深堀りするのはもちろんですが、大切なのはポイントをまとめて抽象化して、いつでもことばとして引き出せるようにしておく、ということです。
もうひとつは相手に視点移動する練習をすることです。
コミュニケーションを円滑にするために”この人はなぜ、こういう発言をこういう言い方でこの場でしているのか”を相手の視点から見直すようにしています。
コンテンツを考えるうえでは、自分と離れた属性・思考のターゲットのことを想像するときに役立っていると思います。
リアルだけでなく、色んな人が集まるコメント欄などでも意識して取り組んでいます。

そんな柴さんおすすめの本はロジカルな人におすすめ

ここまでは、柴さんのキャリアについて伺ってまいりましたが、最後にお伺いしたいのが定番のコンテンツである「おすすめの本」。

とはいっても、柴さんには以前すでに『データの見えざる手』という本をご紹介いただいていらっしゃいますね。
繰り返しになってしまうかもしれませんが、こちらのインタビューの読者の方に向けて、この本をおすすめなさる理由をお願いします。

この本は、これまで主観的で混沌として捉えがたいとされてきたことをデータを活用して法則性を見出し、把握できるようにしてくれる本です。
身近なところでいうと、この本を読んでから私は一日の使い方をどうするかを考えるときに、エネルギーの容量と配分を考えて動けるようになりました。そういった新たな視点を与え、より多く生きることを助けてくれます。
幸せになりたいすべての人におすすめですが、「データ」という言葉に思わず反応する方はより楽しく読めると思います。
が、今フラットにおすすめしたい本は実は別にあります。
それがこちらの『脳のワーキングメモリを鍛える! 情報を選ぶ・つなぐ・活用する』という本ですね。

なんとまたロジカルな……重ねての質問になりますが、こちらの本の内容についても教えていただけますか?

この本は簡単にいうと “脳のワーキングメモリーを鍛えると、困難な場面でも実力を発揮できるようになるよ” という本です。
この本を読もうと思ったきっかけは、社会人経験を積んできて “スキルを上げること以上に、人間としての能力を上げることがパフォーマンス向上につながる” と実感するようになったからです。
スキルはある程度やる気を出せばつくものですが、この社会で圧倒的な成果を出している人って、スキルとしてではなく、人間としての能力や知能が圧倒的に優れていると思うのです。
この本のおもしろいところは、自分の普段の生活でどうしたらよいのかということにも言及されているので、いますぐ実践可能ですし、子どもを育てる上でのヒントにもなることですね。

題名だけ見るとどちらもロジカルで一見するととっつきにくい内容のように見えるような本でも、日常生活に落とし込んで抽象化・言語化してその感想を話す柴さんのコメントを聴くと、自分にとってははるか遠いと思っている内容がすごく近くに感じられるのが不思議です。

編集部のあとがき・総括

今回は上級ウェブ解析士の、柴佳織さんにインタビューをさせていただきましたが、柴さんをひとことで表すのであれば、ご自身の人生やキャリア、クライアントをはじめとする人の感情といった、一見「分析不可能」に見えるものをとことん突き詰め、そしてそこで得た法則をシステマチックに必要なときに応用できる方という印象を受けました。

今自分が何気なく考えていることも、もしかしたら「何か」の原理原則のもとで動いているのかもしれない、そんなことを感じさせてくださるインタビューでした。