最適な「線引き」でお客様の理想をカタチにし続けるウェブ解析士マスター、古橋香緒里さん

「仕事とウェブ解析士」をテーマにお送りさせていただくウェブ解析士インタビュー。24人目は、中小企業向けにウェブ活用を支援しているウェブ解析士マスター、古橋香緒里さん。

物腰の柔らかい古橋さんですが、お仕事の腕もお墨付き。
お客様・パートナーとの役割の線引きを適切にすることで、お客様の理想をカタチにし続けるプロフェッショナルです。

今回のインタビューではそんな古橋さんに、ウェブ解析士マスター資格の活かしかたはもちろん、豊富な事例を交えつつお客様に成果を与えるために大切にしている考え方や、実際に取り組んでいることを教えていただきました。

(インタビュー・編集:上級ウェブ解析士 飯川 慶子)

ウェブ解析士マスターの古橋さん

「継続案件がほしかったから」取り組みはじめたウェブ解析

本日はお忙しいなか、ありがとうございます。
月並みな質問ですが、「ウェブ解析士」を受講・受験したきっかけを教えください。

継続の案件が欲しかったからです。
自分の会社を創業した当初の収益の内訳は、80%がスポットの制作案件で、残りの2割が保守・管理などの継続案件でした。今は逆転していて、80%が継続案件で残りの20%がスポット案件です。

創業当時の収益は、私を含めた当時4人のスタッフの人件費・固定費……あとは金融機関への返済でいっぱいいっぱいでした。

その頃「いい仕事をするには時間とお金が必要だ」と痛感して、ウェブ解析士を取得しました。継続案件が増えたことで一社一社丁寧なお仕事ができるようになってよかったです。

ああ、制作会社あるあるの「作ったら終わり」問題。

そうですそうです、制作会社あるある。笑
それに、スポット案件で作ったサイトって納品後は放置されていることも多いじゃないですか。
せっかくお仕事をいただいたのに、お客様の役に立てていないことが悔しかったですね。

それも、ワンセットであるある。
でも当たり前ですが、継続案件って、ウェブ解析士を “取る” だけではやってこないですよね。ウェブ解析士を取得なさったあと、継続案件をとるために心がけてきたことは何かありますか?

ウェブ解析士のカリキュラムで学んだことを、とりあえずやってみました
あとは時代の変化もいい方向に後押ししてくれたんだと思っています。10年前と比べて今(2020年現在)は、ウェブ担当者じゃない方のリテラシーが高くなっていますよね。

たとえばみなさん、「直帰率」や「CVR」といった指標は理解して見ていらっしゃいますし、SEOでもちゃんとコンテンツを作りこまなければいけないという考え方もわかっていらっしゃいます。ウェブにかける予算も増えていますし。
そういった時代の変化も継続案件の獲得を後押ししてくれたと思っています。

とりあえずやった!
……ウェブ解析士の公式テキストと上級・マスターのカリキュラム合わせたらとんでもない量ですよね。古橋さんが、もっとも役に立ったチャプターってありますか。

事業分析・環境分析です。

!?……
「ウェブ解析士」なのに、ウェブまわりの技術ではなく、戦略のトピックなんですね。

はい、「ウェブ解析士」で戦略のトピックを学んだことで、私がお客様としてお付き合いしている経営者やステークホルダーの方と、共通言語でコミュニケーションできるのは大きかったです。共通言語ができたからこそ、明後日の方向のご提案をして怒られたこともあります。笑

ウェブ解析士マスターを目指したきっかけになったマスターからもらった、今でも活きている助言とは

そうなんですね。
性格悪い質問かもしれませんが、「継続案件が欲しい」という目標は上級……いやウェブ解析士でもクリアできる可能性があると思うんです。なぜ「マスター」を目指されたのかな?って実は気になっております。

数年前に、ウェブ解析士協会の案件で、某国立研究機関のお仕事にマスターの方と一緒に営業に行ったことがあったんです。
そのさいに、先方から解析やデザインについてさまざまな質問をされるんですけど、そのマスターの方は全て的確に答えていらっしゃって、

マスターってすごいなー!!

って思ったんです。

そのままお仕事につながり、納品物(解析レポート)のレビューも同じマスターにしていただいたのですが、そのさいに教えていただいた「数値的事実+要因分析+考察の3つの線引きを、それぞれ明確に示すとわかりやすい」というアドバイスは今のお仕事の思考にも活きています。

ウェブ解析士マスターに学んだことが業務でも活きています

2年前から広告運用を受注しているのですが、(「数値的事実+要因分析+考察の3つの線引きを、それぞれ明確に示すとわかりやすい」という助言は)そこでも生きていると思います。
いまさらって感じですが、実は私、広告の効果測定レポートには以前から携わってきたものの、実際の管理画面って触ったことがなかったんです。笑

でも、広告運用をやってみようと思った出来事がありまして、弊社のお客様が、代理店に広告運用をお願いしたことがきっかけでした。

代理店から、代理店のほうで広告流入用のLPを制作して、広告からの流入はそのページに流入させるという施策を提案いただいて、いったんはまずその方法を受け入れました。代理店としては流入先を集約することで広告配信面の学習効率を上げようとしてくれたうえでの提案だったのですが、結局その方法では成果が上がりませんでした。

実は弊社ではお客様がニーズ別に広告を出稿できるようにサイト設計をしていました。なので、最終的にはニーズに合わせて広告の遷移先を分けたほうがよかったのかな、と思っています。

でも、当時の私は広告の管理画面を触ったことがなかったので、この内容を自信をもって話せていなかったと思います。実際に自分で管理画面を触り運用したことで、今なら「遷移先を分けましょう」と自信をもって言えると思います。

なるほど……さきほどのマスターの方からのアドバイスに当てはめてみると
・事実 広告の成果が思わしくない
・要因分析 ?(広告の知識がなかったのでできていなかった)
・考察 遷移先のページを分割する
という状態だったので広告を運用してみよう、と……モデルケースのように活かされていらっしゃいますね。

成果とは「お客様からいただくもの」

こういった整理整頓された思考法が、ウェブ解析士アワードの受賞にもつながっているんでしょうか。

お恥ずかしいです…
でも実績って、自分一人で作れるものはほとんどなくて、お客様にいただいく部分が多いと思っています。これは協会代表理事の江尻さんも、マスター講座のときにおっしゃっていたことです。WACA Awards 2017 Best Content Producerもお客様からいただいた実績のひとつです。

会計サービスの実績でしたよね。私も拝読いたしました。
記事には数多くの分析・フレームワーク・施策が盛り込まれていますが、どちらも安定した質が担保なされているな、さすがマスターなんだな、と感じました。

「お客様からいただいた実績」ということですが、お客様から実績をいただくための秘訣って何かあるのでしょうか。

はい、こちらの実績です。読んでいただいてありがとうございます。
でも、実はこれも社長さんが昼夜思い描いていらした戦略なんです。私は数値の裏づけをとって市場やターゲットを定義しただけというか。

……そもそも我々って、ウェブマーケティングの知識は持っていても、お客様の領域については完全に素人じゃないですか。なので、私の場合は裏方に徹することにしています。

お客様って、やはり業界に長く携わっていらっしゃいますし、経営者といった立場になれば、業界のこと、会社のこと、社員のことを四六時中考えていらっしゃいますよね。なので、素人の私たちが数日で思いつくアイディアなんて、すでに考えていらっしゃるか実行済みであることが多い。

なので、その業界の現状を教えていただいて、経営者の方の戦略や社員の方がやりたいと思っている施策を形にすることが自分の役割だと思っています。

こちらのお客様は経営者の方なのですが、「50歳までがいちばん挑戦できるときだから、うちの会社でいろいろやってごらん。もし失敗して億単位の損失を出したって、壊れない会社を創りましたから。」というお言葉をくださったのがとても印象にのこっています。

お客様はお客様の領域の、プロフェッショナルなのだと大きな存在感を感じました。

……あ、偉そうなこと言ってませんか?

大丈夫です、実際にとっても素晴らしいことをおっしゃってます。もっと詳しくお聴きしたいです。

笑。
さきほどの代理店の事例も、こういう(プロの部分を線引きする)ことだと思うんです。代理店はあくまで代理店なので、広告運用の面のプロフェッショナルであって。

本来、広告主側にもマーケティング担当者がいますが、中小企業の場合は、そのマーケティング担当者をウェブ解析士が担うのだと思います。

たしかに。
私は普段いわゆる古橋さんのおっしゃる「広告主側のマーケティング担当」の業務に従事していますが、そうですね。

代理店がいるから大丈夫、というわけではなく、我々がウェブマーケティング上の数値や業界ならではの特性や仮説を共有して、役割分担をすることが大切だなって思います。

新しいことをはじめたい!そんなウェブ解析士のみなさまにおすすめしたいのはコレ

ここまでかなり込み入った事例も含めていろいろお伺いしてしまいました。最後になんですが、これからウェブ解析士を目指しました・もしくはなりましたというみなさまにおすすめしたいことはなにかありますか。

委員会活動ですね。
ウェブ解析士の横のつながりができるのでおすすめです。
あとは、委員会が新しい挑戦へのきっかけにもなっています。
私も、委員会に入っていなかったら広告の管理画面を実際触ろうとは思えませんでした。委員会には広告のプロもいらっしゃるので、抵抗なく一からはじめられました。

あとがき

今回は

  • ご自身のお仕事に足りている・足りていない要素は何なのか
  • どこからどこまでがご自身がプロフェッショナルとして働ける部分であって、どこから先をお客様やパートナーのプロフェッショナルにお任せするべきなのか

を大切にすることでお客様の理想を継続的にカタチにしているウェブ解析士マスター、古橋さんにお話を伺いました。

「結果を出すためにはとにかく量をこなさなくちゃ」
「自分はプロフェッショナルなんだから、あれもこれもやらなくちゃ」

私も社会人になってから、幾度となくこのようなことで悩みましたが、解決の糸口は、もしかしたら量を増やすことでも、キャパシティを上げることでもなく、「自分の仕事の要件定義をし、自分の仕事上の役割を見直す」ことなのかもしれない、と感じました。

「ああこれ、今の自分、疲れてるかも。」

そうお思いの読者のみなさま、一度ご自身のお仕事の線引き、見直してみませんか?