人間愛に基づいたマーケティングで世界中を幸せにするウェブ解析士マスター、窪田 望さん

インタビューを受ける窪田さん

「仕事とウェブ解析士」をテーマにお送りさせていただくウェブ解析士インタビュー。17人目は、株式会社クリエイターズネクスト代表取締役、窪田 望さんです。

同社で提供しているウェブ解析SaaS「KOBIT(コビット)」は、Google アナリティクスと連携して自動でレポートを作成してくれるという、ウェブ解析士やウェブ制作会社にうれしいサービス。2016年のリリース以来、世界15カ国7,000社以上で使われています。

また、窪田さんの活動は非常にグローバルで、日本はもちろん、シンガポール、スペイン、アメリカなど世界各国でウェブ解析に関する登壇をされており、世界中の企業を幸せにするために日々邁進されています。こうした活動が多くのファンに支持され、2年連続でウェブ解析士アワードの Best of the Best に選出されました

輝かしいご経歴を持つ窪田さんですが、子ども時代は引きこもりがちで、人と話すのも怖かったそうです。そんな窪田さんがどうしてウェブ解析の業界と出会い、起業を決意し、世界進出に至ったのか。窪田さんの原体験や人生、そしてこれからの目標について伺いました。

(インタビュー・編集:ウェブ解析士 佐藤 佳)

ウェブ解析を通して世界の富を増やし、社会課題を解決したい

本日はよろしくお願いします。まず、窪田さんのお仕事について教えてください。

僕は15歳の時に初めてウェブサイトをつくったのですが、それがきっかけでこの世界にのめり込み、19歳で株式会社クリエイターズネクストを起業しました。それ以来、お客様のウェブマーケティングをご支援し続けて、これまでに400以上のサイト解析・改善の実績があります。
僕たちは「お客様のお客様」という言葉をよく使うのですが、直接ご相談してくださったお客様の、その先にいるお客様も幸せにできるようなサイト設計やウェブ解析をしていくのが使命だと考えています。

クリエイターズネクストさんのジョブポリシー、とても素敵ですね。ウェブマーケティングの中でも、具体的にどんな分野に注力されているのでしょうか?

一番はウェブ解析ですね。他にもウェブ解析を通じたA/Bテストや仮説検証、機械学習を使ったデータサイエンスもしています。お客様には定期的に解析レポートをご提出しているのですが、レポート作成を効率化することで、顧客価値を創造することに時間を使いたいと思い、ウェブ解析SaaS「KOBIT(コビット)」を開発しました。Google アナリティクスのデータを元に、アクセス解析レポートを自動的につくるサービスなのですが、2016年のリリース以来、世界15カ国7,000社以上で使っていただいています。

すごいですね……!
日本のIT企業で海外進出がうまくいっている会社は少ないと思うのですが、世界進出のきっかけは何だったのでしょうか?

ウェブ解析士協会の代表理事である江尻さんと、シンガポールに行ったことがきっかけです。僕は起業当初から、ウェブ解析を通して世界の富を増やし、社会課題を解決したいという想いがありました。そのためには日本はもちろん、世界を視野に入れて活動したいと思っていたのですが、最初は誰もその可能性を信じてくれなかったんですよね。だけど、江尻さんだけはそのことを笑いもせずに、じゃあシンガポールで講演してみませんか?と声をかけてくれたんです。それがきっかけとなって、今の道が開けました。

シンガポールでの登壇写真
シンガポールでの講演

受けた恩をつなげていく、それが本質的な恩返し

窪田さんはウェブ解析士マスターを目指されて、ついこの間認定されたんですよね。おめでとうございます!
相当大変な道のりだったのではないかと思いますが、マスターを目指したのはどんなきっかけだったのですか? 

ありがとうございます!
江尻さんやウェブ解析士協会が僕にもたらしてくれたものが本当に大きかったので、ずっと恩返しをする方法を考えていました。その時ふと、学ぶことが恩返しにつながるんじゃないか?と思って、マスター講座の申し込みを決意したんです。
ただ、合格したとしても、僕の恩返しがここで終わるわけではありません。昔、尊敬する人たちから「恩返しよりも恩送り」という言葉を教えてもらったからです。自分がウェブ解析士マスターになって、受けた恩を後輩のウェブ解析士たちにつなげていくことが、本質的な恩返しになると考えています。

受けた恩をつなげていくって、とても尊いことですね。講座を受けてみて、実際のところはどうでしたか?

受けて良かったです!かなり大変ですが(笑)。提案書のレベルが30倍くらいになった手ごたえも得られましたし、小川卓さんとか、著名なマスターの方々が作成されたレポートも見ることができて、とても参考になりました。
何よりも、同期がすごい!同じ期で受講したみんなは戦友みたいな感覚がありますし、心から尊敬しています。それぞれにキャラが濃くて、素晴らしい才能の持ち主ばかり。いずれマーケティングの世界で有名になる人たちだと思っているので、このタイミングで出会えたのは本当にラッキーでした。

ウェブ解析士という、自分の立ち位置と可能性を信じる

窪田さん、この場を借りてもうひとつお祝いさせてください。ウェブ解析士アワード2019のBest of the Best、二連覇おめでとうございます!今の純粋なお気持ちは?

嬉しいです!ありがとうございます。同時に、頑張らなきゃ!という気持ちがよりいっそう強くなりました。僕にとって賞をいただくというのは、責任といいますか、自分との約束みたいなものだから。
例えば、僕たちが海外旅行をするとき、そこでの立ち振る舞いって必然的に「日本人代表」として海外の人から見られますよね。それに近い感覚で、僕がこれからどう行動するかで、僕が大切に思っている存在や仲間たちの評価にも影響すると思っています。あとは自分の可能性を信じて、どれだけ高みにもっていけるかですね。

窪田さんのように応援されて、活躍できる人になりたいと思う解析士は多いと思うのですが、そのためのベビーステップって何だと思いますか?

ウェブ解析士という、自分たちの立ち位置と可能性を信じることだと思っています。マスター講座のマクロレポートを作成したとき、検索トレンドはウェブ解析士よりデータサイエンティストの方が3倍以上あると知りました。でも、データサイエンティストとデジタルマーケティングで比較したら、デジタルマーケティングの方が7倍多かったんです。また、アメリカにある世界的なマーケティング団体「DAA(Digital Analytics Association)」は約5,500人ですが、日本のウェブ解析士は約37,000人が受講しています。僕はこういうデータからもポテンシャルを感じ取っています。

面白いデータの共有ありがとうございます。こうした市場において、ウェブ解析士はどのようなポジションを取っていくべきだと思いますか? 

データサイエンティストはデータから未来を予測できますが、ウェブ解析士はデジタルマーケティングの力で非連続的な成長を約束できることが価値だと思います。これまで訴求してきたアナライジングパートナーとしての強みから、ウェブ解析士はイノベーションパートナーであると定義することで、実はデータサイエンティストの次のキャリアがウェブ解析士だ、というように現在の構造を逆転できるのではないかと考えています。また、自分たちの可能性を信じて、身に付けた知識を活かす力に変えていくことも大切だと思います。

次のステップとして、周りの人にも可能性を信じてもらう必要がありますよね。窪田さんはピッチコンテストのご経験も豊富だと思うのですが、ずばりプレゼンのコツは?

キーワードは、「convince(納得させる)」ですかね。プレゼンなら、1枚目でその状態をいかに作れるかが勝負です。というのも実は昔、ニューヨークにあるERA(Entrepreneurs Roundtable Accelerator)で、プレゼンテーションの修行を受けたことがあるんです。そこで言われたのは、「人が自分に興味を持ってくれるなんてあり得ない。だから自分から強みを言わなければいけないし、謙虚はプレゼンの世界では悪だ、自分の命があと数秒しかないと思って戦え!」でした(笑)。良い意味で、日本人の美徳である謙虚さを少し脇に置いてみると、何か新しい気づきや発見が得られるのではないかと思います。

SOUTH SUMMITの窪田さん

高齢者が明るく生きていける世界をつくりたい

ここからは、窪田さんの原点について伺いたいと思います。どうして起業されたんですか?

実は、シルバーエンターテイメントをやりたい、というのが最初の動機なんです。なぜかというと、僕がおばあちゃん子だったから。日本の社会課題の一つに高齢化がありますが、まるで高齢者が悪いかのように取り上げられているニュースをみて、悲しくなったと言いますか、おばあちゃんやおじいちゃんが喜んでくれるようなサービスをつくって、高齢者になっても明るく生きていける世界をつくりたい、と思うようになったんです。そこで、個人ブログでシルバーエンターテイメントについてひたすら書くことから始めました。

おばあちゃんを喜ばせたいというのが原点だったんですね。具体的に、どんな風に会社をつくっていったのですか?

会社をつくろうと思ったとき、実はNPOと株式会社と迷ったんですよね。そこで、まずはNPO団体の話を聞いてみようと思って、医療系とか、ボランティア系とか、いろんな団体に取材をさせてもらいました。どこの活動も素晴らしかったのですが、大半の収益モデルが国の助成金で成り立っていて、自活できている事例が少ないと気がついたんです。その時、ソーシャル・エンタープライズという、企業が利益を上げることで社会貢献につながるという事業モデルを知って、株式会社を選択しました。

答えなき難問の面白さと、数値化できる世界の楽しさ

19歳にして会社をつくることもそうですが、窪田さんって昔からアクティブな方だったんですね。

それが、案外そうでもないんですよ(笑)。実は中学の時は引きこもっていました。そんな自分が変わったきっかけは、高校の時に演劇部に入って恩師と出会えたから。先生の教えを一言でいうと、「その人になれ」ということだったんですが、その人がなぜこのセリフを言ったのか、行動したのか、その理由を考え尽くして演じる必要がありました。ただ、いくら考えても、他の演者がどのように演じるかで、意味合いが変わってきてしまうんですよね。その時に、いつまでも問い続けられる、答えなき難問の面白さを感じていました。

窪田さんのセミナーで、ときどき名演技が入る理由が分かりました(笑)。高校時代の演劇がホントに楽しかったんですね。

楽しかったですね。ただ、同じくらい苦しいこともありました。高校2年生の時に部長になったんですが、リーダーシップやマネジメントがまったく分からなくて、思うような演劇ができなくて…。悔しい思いを抱えたまま、受験勉強を迎えることになりました。ただ、この時に思ったのが、正解がある受験勉強ってなんて楽なんだろう、ということだったんです。それまでは正解なき演劇の世界をずっと探究していたので、やればやるほど単純に上がる世界に意外とハマってしまって。数値化できる世界の楽しさにも気がつきました。

答えなき世界と、数値化できる世界。当時の体験が、まるで窪田さんが今取り組まれているマーケティングのお仕事につながっているように感じます。

そういう意味では、大学の体験もつながっていますね。恩師から「問題は自分で発見しろ、発見した問題に対して自分なりの解決策を考えろ」と言われてハッとしたこととか。また、問題解決ってゼロイチではなくて濃淡が許されるので、0.5が0.51になればそれでいいんだ、と思えるようになりました。他にも恩師の「決断は切断だ」という言葉や、サンクチュアリ出版の創業者の本にあった、「いつだって夢は逃げない、逃げるのはいつも自分だ」こうしたメッセージが自分の中で渦巻いて、行動スイッチが入ったんだと思います。

幸せをベースに、幸せなものを築きたい

続いて、窪田さんがつくられてきたサービスの開発背景を聞いてもいいですか?

意外かもしれませんが、最初は怒りが原動力でした。ある日、介護施設に入っていたおばあちゃんの足が壊死(えし)してしまったんです。『どうして……!』という行き場のない怒りの感情で、介護施設の口コミサイトをつくり、日本で一番になりました。でも、攻撃的な口コミが投稿されるのを見て、気がついたんです。設計者が怒りを入れてサイトを作ってしまうと、怒りの連鎖を呼んでしまうんだって。だったら僕は、幸せをベースに、幸せなものを築きたい。そう思って、「がんばれひよこくん」というゲームアプリや、「カラオケで合いの手」という、ひたすら合いの手を入れてくれるクソアプリもつくりました(笑)。

そんなことがあったんですね……。小人さんのキャラクターをKOBIT(コビット)に採用したのも、そういった想いからだったのでしょうか。

そうですね。ストーリーがあって、心があったかくなるような、絵本みたいなサービスをつくりたいと考えていました。また、当時の僕はSEOを意識したサービス名をつけていたのですが、自分のアイデンティティに組み込みたくなるようなサービスって、SEOにあまり関係ないサービス名の方が多いなって気がついたんです。ブランドの作り方とかマインドシェアの戦いなんて経験もなかったのですが、目が覚めたら小人が仕事を終えていてくれる「靴屋と小人」の童話をもとに、KOBITがうまれました。

KOBITって、レポートがPowerPointやExcelデータでもらえますよね。自分の手が加えられるって、とても魅力的だなと思います。

介在自由度を上げるというのは、当初から大事にしていました。というのも、世の中にあるサービスの大半が、PDFでダウンロードできるサービスばかりで、自分でつくった感がなかったからです。KOBITのレポートにウェブ解析士が手を加えることで、データがただのデータではなく、ストーリーや意味を持つようになり、新しい体験になっていく。そんなイメージをもって、お客様と一緒に成長していけるようなサービスを目指しました。だからKOBITは、あえてウェブ業界の後輩的なポジションをとっています。

SOUTH SUMMIT・KOBIT背景

窪田望が目指す世界

早いもので、インタビューも終盤となって参りました。窪田さんの今後の展望を教えていただけますか?

ウェブ解析士協会ともっと連携を深めることで、新しいサービスをつくりたいと思っています。実はもうプロトタイプ版ができていて、名前は「The Answer(ディアンサー)」と言います。KOBITで出したレポートをオンラインでウェブ解析士がご案内した後、GoogleオプティマイズでABテストを設定し、毎月仮説立案と実験をすることで、年間12回のコンバージョンアップを支援してくれるような仕組みです。プロトタイプ版を試していただいているお客様からは良い反響も出ているので、全国のウェブ解析士にぜひ使ってもらいたいと思っています。

最近では、機械学習の専門資格G検定を取得して、東京大学松尾研究室GCIデータサイエンティスト講座も修了するなど、新しい領域を開拓されているようですが……?

「Deep Experience Strategist養成講座」という、ウェブ解析士が深層学習時代の体験設計を学べるプログラムをつくりたいと思っています。ターゲットは、Googleアナリティクスのデータ以外に、多くのビッグデータに触れる機会があるウェブ解析士。講座の特徴は、深層学習についての知識を伝えつつ、「深層学習を活用した体験設計まで学べる点」です。これからはデータをもとに設計していくプロデュース能力がより求められると思いますし、ここがウェブ解析士の強みになると思っています。

窪田さんは世界を視野に入れた活動もたくさんされていますよね。それはなぜですか?

もともとニューヨークで生まれたこともあって、日本人とは?ということを幼いころから突き付けられていたからですかね。今思えば、これは自分にとって置き土産みたいなもので、原動力になっているなぁと思います。あと、大学時代の恩師である、アントレプレナー塾の塾長、三宅宏先生の影響も大きいですね。当時の僕は生意気にも、「日本だけじゃなくて、世界を変えないと!」と言って、よくマーケティングに関する議論をさせていただきました。ただ、結局いつも人間愛の話になってしまうのは、今も昔も相変わらずです(笑)。三宅塾長から教わったさまざまなことが、自分の人生のコアになっていますね。

窪田さんの行動スイッチが入るきっかけになった先生ですよね。具体的に、先生のどんな言葉が印象に残っていますか? 

例えば、「テクニックは陳腐化するが、原理原則は変わらない」「遊びは真剣に、仕事は遊びのように」「一流を知れ」「仲間を大切にしろ」「いいやつになれ」など、たくさんあります。その中でも一番胸に響いたのは、マスター講座を受講したことにも関係していますが、「俺に恩返しはするな」「恩返しより恩送りだ」という話です。実は、20代前半のころにお世話になった、dot installの田口元さんにも全く同じことを言われたんですよね。尊敬している人が同じことを言ったのが衝撃的で、一流の人は共通しているんだなと思いました。

最後の質問です。窪田さんの目指されている世界や、今後の目標は?

ウェブ解析を通じて世界が豊かになって、社会問題が解決される。そんな世界を目指して、これからも頑張っていきたいと思っています。仕事柄、ウェブ解析士や制作会社さんと付き合うことが多いのですが、その人たちがいかにすごいか、僕は知っています。小さい会社でも、実はとても大きいサイトの管理をしていたり、発想がとてもユニークで面白かったり。根底にあるのは、彼らをもっと知って欲しい、支援したいという気持ちです。そのためにも、まずは国際特許の出願、または特定の分野で世界一を目指して頑張りたいと思います。

あとがき「誰かを想う力が、世界を変える。」

起業の原点となった窪田さんのおばあちゃんについて伺ったところ、「僕はキヨコおばあちゃんが作ってくれたおこわが大好きで、その中にはいつも銀杏が入っていて……」と笑顔で話してくださり、窪田さんにとって本当に大切な方なんだなと思いました。

戦火を生きぬき、女手一つで子どもを育てたおばあちゃんは、とってもイノベーティブな方だったとか。経済を読み解く方法を教えてくれたり、日本酒を使った思いがけない方法で銀杏を集めたり。「朝焼けや夕焼けを見るとおばあちゃんを思い出すし、不思議とつながっている気がするんですよね。」という窪田さんの言葉を聞いて、私もたくさんの人に支えられて生きてきたことを改めて感謝したいと思いました。

窪田さんのSNS情報

★Twitter:https://twitter.com/cnxt_nozomu

3.4万人のフォロワーを持つ窪田さんのTwitterアカウント。「#つぶやきマーケ講座」では、新鮮なお寿司屋さんのごとく旬なマーケティングのネタが紹介されています。ぜひフォローしてみてください。

★note:https://note.com/nozomukubota

窪田さんが参加された勉強会の書き起こしが公開されているnoteのアカウント。
実は、書き起こし芸人の異名を持つ窪田さん。登壇者が話した内容を講演終了後1分以内に記事として公開をすることができる技術「FLASH PUBLISHING(FP)」をメソッド化し、楽しく学べて成果がその場で出る大人気講座を不定期開催されています。

★Youtube:https://www.youtube.com/channel/UCFhlkeINByW0hGGXoJ0zFiA

2020年4月1日から開設された窪田さんのYouTubeチャンネル。「窪田望のアンテナ」は、マーケティングに関わるトピックを短時間で分かりやすく学べる番組で、めちゃ分かりやすい!イイ声!○○について解説して欲しい!と好評です。マーケティングを楽しく学びたい方は、ぜひチャンネル登録してみてください。