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マレーシアで日本企業のウェブマーケティングをして気づいたこと ウェブ解析士、ワン・アミルル・ハキムさん

「ウェブ解析士と仕事」についてお聞きするインタビュー、60人目はマレーシア在住でデジタルマーケティングスペシャリストのワン・アミルル・ハキムさんです。

マレーシアで日本語を3年学んだ後、国費奨学生として日本の大学に編入。卒業後は大阪の企業に就職しました。新型コロナウイルス感染症流行の影響で2021年6月に帰国し、今はマレーシアの首都クアラルンプールでウェブ関連企業にお勤めです。外から見ると、日本のウェブマーケティングはどう映るのでしょうか?

(インタビュー・編集:上級ウェブ解析士・Ayan)

目次

ウェブ解析士の上司と一緒に試験対策

――クアラルンプールからインタビューに応じていただきありがとうございます。日本との時差は1時間ですね。まず、今そちらでどのようなお仕事をしているか教えてください。

ワン・アミルル・ハキム(以下、ハキム)さん:ITソリューション企業でサイト制作やウェブマーケティングの仕事をしています。CEOは日本人で、私の所属しているチームでは顧客のほとんどが日本企業です。社員の7割はマレーシア人で、残りは日本人などさまざまです。

――ウェブ解析士の資格を知ったきっかけは何ですか。

ハキムさん:今の会社にはマーケティング職で採用されました。以前はシステムエンジニアで、マーケティングが専門ではなかったんです。そこで、上司にウェブ解析士の資格取得を勧められました。その方もそのまた上司もウェブ解析士で、日本の方です。

――日本語の公式テキストで学んだのですね。

ハキムさん:はい、英語版もありますが私は日本語版を使いました。職場でも日本語を使っていて、慣れていますから。それまでもウェブマーケティングを独学してきたので、内容も理解できました。

ただ、試験突破には慣れが必要でしたね。試験時間は60分で設問は60問、つまり1問あたりの回答時間は1分です。日本語の問題を時間内に読解するのに苦労しました。

公式テキストや公式問題集を使い、試験2週間前からは時間内に読み終わる練習をしました。出題されやすい箇所の傾向と対策もしっかり調べましたよ。

7月の入社から12月の試験まで合計4回各1時間ずつ、上司が勉強を支援してくださいました。私以外に2人も一緒です。励まし合って学び合格できました。ぎりぎりでしたが(笑)。

日本の大学を卒業、エンジニアに

――ウェブマーケティングは独学から入ったとのことですが、日本ではどのようなお仕事を?

ハキムさん:大学は東京でしたが、住みたかった関西で就職先を探しました。大阪の大手IT企業にシステムエンジニア職で新卒採用されました。

2019年に入社し、社内のシステム開発やプログラミング担当部署に配属されました。他の部署には中国の人もいましたが、私以外は日本人でした。もっと言うと、関西人がほとんどです。

日常の日本語は問題ないですが、敬語などのビジネス日本語は難しかったです。こちらが外国人とわかっているので、周囲も多少の間違いは見過ごしてくれましたが。

日本で働いていた頃のハキムさん。京都・伏見稲荷にて

日本で勤めたのは3年で、初めのうちはゴリゴリのコーディングでした。もともとものづくりに興味があったので、コーディングをして何かを作り上げるのが楽しかったです。知識も増え、いいものを作りたいと思いを強くしました。

ただ、社内システム構築が主な仕事なので「こういうものを作る」と始めから決まっています。新しい知識を吸収している段階はよかったのですが、だんだんルーティン化していきました。

アイデアを生かせる仕事にやりがい

ハキムさん:そこで、興味のあったマーケティングに関わりたいと思い上司に相談したんです。許可が降り、デジタルマーケティング部署の手伝いをするようになりました。マーケティング観点からコーディングし直したりするようになり、サイト制作にも関心が広がりました。任された仕事の範囲内ではありますが「自分のアイデアを生かしてほしい」と言われてやりがいを感じましたね。

それまでGoogle アナリティクスを使ったこともありませんでしたが、もっとよく知りたいと思い分析やマーケティングを学び始めたんです。

――ご自身でも必要性を感じていたのですね。

ハキムさん:解析ツールを使った経験があまりなかったので、ウェブマーケティングではわからない点がたくさんありました。特に専門用語ですね。学習を始めてから、こういうことかと納得する知識がつき楽しかったです。

今は自社と顧客のウェブサイト分析をするのが仕事です。顧客の業種は製造業からサービス業までさまざま。マレーシアでビジネスを立ち上げようとしている日本企業が主ですね。ランディングページのキーワード、クエリなどのデータを使って分析に生かしています。

その中で気づいたのは、日本とマレーシアのマーケットは方向性が全く違うということ。日本は商品の性能がどれほど優れているかを大事にしますが、マレーシアだとコスパが大事です。その結果、サイトの作り方もマーケティングの方向性も変わってきます。売り方のアプローチが全然違うんです。

地方出身、いたって普通の自分が留学

――そもそも日本に留学しようと思ったきっかけは何でしたか。

ハキムさん:私はマレーシアの地方の島出身です。クアラルンプールから車で5時間、さらにフェリーで1時間かけて渡った先にある島で、人口は500人くらい。多くの人は漁業に関わって暮らしています。中学校からは島を出て少し大きな町に通ったのですが、成績はいたって普通でした。将来については漠然と「マレーシアの大学を出て、クアラルンプールで仕事ができればまあいいかな」くらいに考えていました。

ハキムさんの故郷の島

変わったのは、中学の英語の先生の影響です。米国に留学した経験があり、留学中に南米などさまざまな国に旅行した経験を個人的に話してくれました。飛行機に乗ったこともなかった自分に、旅行も含めて世界を見て視野を広げたらとアドバイスしてくれました。

他の国に行ってみたい、先生のように留学したいと思うようになり、奨学金を得るため頑張って勉強しました。もともとの留学希望先は英国でしたが、日本への留学プログラムの奨学生に選ばれ日本語を学ぶようになったというわけです。

マレーシア政府は「ルックイースト・ポリシー(東方政策)」を長年行ってきました。日本や韓国の経済的成功に学ぼうと、1981年に当時のマハティール首相が提唱した政策です。私が選ばれた留学プログラムもその一つです。

マレーシアに多く進出した日本企業は以前は製造業が多く、留学プログラムでもそういった産業を視野に日本語で物理や数学を学びます。大学の専攻に理系を選ぶ人は多かったですね。最近では日本の産業構造の転換にともなってIT分野の企業が増えました。私も大学の専攻はコンピューターサイエンスでした。

――ご希望通りマーケティングの仕事をするようになり、ウェブ解析士の学びが役に立ったことはありますか。

ハキムさん:顧客企業のウェブサイト管理をしている中で、アクセス数の変化について根拠を持って説明できるようになったことがまず一つです。

アクセス数の急変動には曜日、季節などさまざまな要因があります。ウェブ解析士取得前は原因を想像してはいましたが、根拠を持ってお客さまに伝えられていなかったと思います。専門用語で抽象的に表現するのではなく、具体的に何が起きたのかをわかりやすく説明し、クライアントにも納得してもらえるようになりました

また、根拠を持った改善提案が可能になりました。お客さまの依頼通りサイトを改修したけれどアクセス数が悪化してしまったことがあったんです。理由はユーザビリティーが悪くなったとか、CTA(Call To Action)のボタンがどこにあるかわからないとか、ユーザーに何をしてもらうのかはっきりせず離脱を招くといったものでしたね。そうした原因を突き詰めた上で改善策を提案できるようになりました。

複数言語での展開に大切なこと

――ウェブ解析士の中でも、マレーシアでのビジネスに詳しい方はそれほど多くないでしょう。マレーシアをはじめ、アジア圏での事業展開を考えている日本企業やマーケターが知っておくべきことを教えてください。

ハキムさん相手を知らなければよいサイトは作れません。ターゲットが違うならコンテンツも違うものを用意する必要があります。

ウェブマーケティングの観点で改善すべき点はどの言語であれ共通しています。ユーザーに何を伝えて何をしてもらいたいのかです。他方、言語や文化の違いを軽視するとうまくいきません。それを油断してしまうと欲しい結果は得られないです。

マレーシアにはさまざまなバックグラウンドの人がいますから、コンテンツも複数言語化する必要があります。例えば、中華圏の人は風水や縁起の良し悪しをとても大切に考えています。四は「死」と音が似ているので不吉とされ、中華系の企業のビルに4のつく数字の階や部屋番号はありません。それから風水的に悪いと考えられる色も避けます。中華系の文化をよく知らないデザイナーが、お客さま企業の社長名のフォントに赤っぽい色を使ってしまい、ダメ出しをくらったことがあります。

――日本でも名前を赤字で書くのは不吉だから避けるべきだといわれていますね。

ハキムさん:複数言語化してはいても、コストを抑えるためか機械翻訳を使った日本企業のウェブサイトをよく見かけます。バナーに入れる文言は特に第一印象が大事です。マレー語ではあるけれど「日本語だったら絶対に入れないだろう」と思うような意味の文言もあります。機械翻訳の変な文言を入れてはダメです。

マレー語版サイトの場合はマレーシア人と、中国語版のサイトを作る際には中華圏の言語と文化を理解しているメンバーと一緒に考えるべきです。ウェブサイトを用いたビジネスで押さえなければならないポイントは同じ。それを各言語や文化の文脈でコンテンツ化するのです。一つのコンテンツで複数のターゲットを「全取り」するのは無理です。

故郷のためにいつか起業を

――ウェブマーケティングに大きなやりがいを感じていらっしゃるんですね。

ハキムさん:今すぐにではないですが、いつか起業したいと考えているんです。ウェブ解析士の公式テキストではビジネス戦略についても学びました。ウェブ以外にも役に立つ知識だと思います。競合分析などビジネス自体を展開・改善する時、何を分析すべきか丁寧に解説されており、興味深かったです。

――どんなビジネスを考えていますか。

ハキムさん:マレーシアと日本両方で、特に地方の人の役に立つビジネスですね。東京もクアラルンプールも、人が多すぎます。

マレーシアの場合は仕事がもともと少ないので、首都に行かないと働けない状況です。コロナ前は観光で地方にも恩恵がありましたが、今は飛行機も減便や欠航になってしまって難しい状況です。

私の故郷の島には海、きれいな星空、おいしい魚といった魅力がいっぱいありますが、マレーシア人はあまり行かないところです。スキューバダイビングスポットとして有名で、高級リゾートホテルには外国人観光客しか行かないからかもしれません。本来は穏やかな暮らしが魅力です。こういった各地の個性的な魅力を日本とマレーシアそれぞれでシェアするビジネスで、地方の仕事の創出に貢献したいです。

あとがき

オンラインインタビューで、私がバーチャル背景に使った日本の観光地の写真を見てすぐに「ここに行ったことありますよ」と場所を言い当てたハキムさん。日本滞在中は地方を満喫していたのでしょう。コロナ禍でご自身の働き方に大きな影響が出た後でも、柔軟に対応して前に進んでいる印象を受けました。ハキムさんが地方のためにどんなビジネスを起業するか、とても楽しみです。

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