組織を越えて業界全体を盛り上げよう!ウェブ解析士マスター、井水 大輔さん

講演中の井水さん

「仕事とウェブ解析士」をテーマにお送りさせていただくウェブ解析士インタビュー。21人目は、株式会社S-FACTORYの井水大輔さん。

6/29日発売の著書『コンバージョンを上げるWebデザイン改善集』は予約開始直後にAmazonの新書売れ筋ランキングで1位(Web作成・開発部門)に。

普段は中小企業向けのウェブコンサルティング会社を経営する傍ら、ウェブ解析士協会のブランディング部の部長を務め、協会の周知活動と組織の団結力アップに貢献されています。

2年連続でウェブ解析士協会のベストエバンジェリスト賞を受賞された井水さん。エバンジェリストとは、専門分野のトレンド、知識をわかりやすく伝える「伝道者」です。ご自身の事業でも同じようなことをしてきたと話す井水さんの、業界を超えて伝えたいウェブ解析士の魅力を伺いました。

(インタビュー・編集:ライター ふじねまゆこ)

目次

理解することと、やってみて結果を出すことは違う

はじめに、どんな事業をされているかお話いただけますか?

ウェブサイト制作と運用サポートをしている会社を経営しています。中小企業の経営者やそれに近い方の相談を聞いて、売上をどう伸ばすか戦略を立てて、その中でウェブサイトにどう役割をもたせるか設計する。ということをずっとやってきました。
経営者の方って、話すとめっちゃ良いこと言うじゃないですか。しっかりしている会社って、ちゃんとウリがあるのに、大体ウェブサイトに書いていないんですよ。そういうところを、しっかりウェブサイトに反映させると。

確かに、会社概要しかウェブサイトに載っていない会社も多いですよね。

相談を受けたときは、調査の一環としてその会社のお客さんにつないでもらっています。経営者の主観的な強みではなく、その会社をいいなって思っているお客さんのところへ行って、話を聞いてコンテンツ化することが多いですね。

制作と企画、すべてお一人でされているのですか?

経営は妻と一緒にやっていて、ごく小規模なサイトは自分で手を動かすこともあるけれど、大体はパートナーに制作をお願いして、自分はディレクター的なポジションで動いています。

ディレクターなのですね。ウェブ解析士を取得したきっかけは?

2012年にウェブ解析士を取得したんですが、そのときに上級ウェブ解析士の方と話す機会があって、「上級ウェブ解析士ってなんかかっこいい!」みたいに思って(笑)
当時は、“なんとかコンサルタント” って多かったけれど、ちょっと胡散臭く思われる印象があって。“上級ウェブ解析士”ってちゃんとしてそうじゃないですか。

そうですね(笑)

その頃は主に制作を受注していて、1ページいくらみたいな換算の仕方をしていました。制作はお金になるけれど、ずっとやっていくにはキツイ。ちょっとずつ頭を使う方向にもっていかないとなーと思って、ウェブコンサルタント的な立ち位置を想像したときに、ウェブ解析士って “ぽいな” と思ったんです。
それが仕事になるイメージは無かったけれど、上級を取得して「なんとなくちょっとできそう」って思えてきて。でも、その時点では中途半端に感じていました。そこで「マスターも、やってみようかな」と受講しましたが、講座は想像と違っていました。だいぶ勘違いしてましたね(笑)

大変だとはよく聞いています……(笑)

でも、ウェブ解析士マスターの講座を受けたことで学び方が能動的になり、どう学べばいいかわかってきたんです。ウェブ解析士のコミュニティで色んな人に教えてもらいながら、何を信じて学べばいいか、学びの型ができたというか。
結果的に、仕事で「これくらいの結果を目指すために、これをやります。だからいくらもらいます」みたいな成果の見積もりをお客さんと話せるようになりました。

確かに、上級ウェブ解析士を取得しただけでは、説得力に欠けるというか知識を使いこなせていない感じが自分にもありました。

ウェブ解析士マスターは、上級ウェブ解析士で学んだ内容を教えるレベルが求められるので、知識を理解して覚えることと、教える側に立つことはかなり違います。上級の講座でそうだねふんふんってわかることと、いざやってみたときにわかるところの差ですよね。
マスターとして教える側に立って「あ、そういうことか」と理解ができた。実際に手を動かして進めたときに、すべきことと、やってはいけないことがわかってくるのかな、そんな気がします。

ウェブがもっと面白くなる! 人と情報をつなげるエバンジェリストとしてやりたいこと

ウェブ解析士アワード2019、受賞おめでとうございます。受賞されてどんなことを感じましたか?

いただいた賞が「The Best Evangelist」で、要は「わかりやすく広めていく人」ってことなんですが、実は2年連続だったんですよ。毎年、違う賞をそれぞれ受賞されている方がいる中で、同じ賞を2回もいただいたので、「やっぱり、自分はエバンジェリストなんだ」と自覚した感じですね。
もともと、お客さんが持っている良いものを広めるための事業をやっていたので、自分の活動の軸はズレていないのかな。いいなと思ったものを広めていくのが得意なのかもしれないです。

ウェブ解析士アワード 2018 での授賞式

ウェブ解析士協会のブランディング部のリーダーもされていて、まさしくエバンジェリストですよね。

部長に選ばれた時、「なんで僕なんですか?」って聞いたら、「いろいろ、みんなのことを考えてやってくれるから」みたいな答えが返ってきました。客観的に見てくれるとか、バランスを取ってくれるとか、そんなことを言われましたね。

ブランディング部で力を入れられていることは何ですか?

ブランディング部の目標はウェブ解析士の社会的価値の向上なんです。
つまり、ウェブ解析士の人は「ウェブ解析士で良かった」と思ってもらうこと。ウェブ解析士を知らない人は「ウェブ解析士ってすげー」とか、サイト活用・SNSやりたいって思ったときに「ウェブ解析士に相談しよう」と思ってもらうことですね。「ウェブ解析士になれば給料上がりそう!」って思ってもらうことも(笑)
それが広く周知されるまで、とても時間がかかることだと思っていますが、そのための試行錯誤をしています。

始まったのは2019年の途中くらいからで、協会の事業として計画的にスタートしたのは2020年の1月からと伺っていますが、難しく感じることはありますか?

そもそも、ブランディングにはインナーブランディングとアウターブランディングがあって、そのうちのインナーブランディングの部分が難しくて。
協会は会社とは違って、関係者それぞれが個人で事業を持っていたり、会社に属していたり、利害関係もバラバラ。みんなが社員だったら評価制度などの指標や共通の目標があるけれどそうではない。関わっている理由が皆さんそれぞれ違うんですよね。
関わっている人の満足度がすごく高い状況が良いと思うんですけれど、それができていないというか。まず関わっている人たちがもっと楽しく、「ウェブ解析士いいよ」って言えるようにしないとダメだなって思っています。自分の関わっているものって、「良い」って言いたいじゃないですか。「カッコイイ」ものであってほしいじゃないですか。そのために何ができるか考えています。

営業と同じで、自社の商品が良いと思っていないと、良い営業はできないですもんね。

ウェブ解析士協会の「このコンテンツ、良いな」と思っている部分もあれば、詰めが甘いと感じる部分もあって。テコ入れすればするほど、良い面も悪い面も気づいちゃうところはありますね。

とても試行錯誤されているのですね。今後のウェブ解析士協会の活動が楽しみです!

コーヒーを飲みながらトップから学べる場を創りたい

ちなみに今後、挑戦してみたいことってありますか?

ウェブのメッカみたいなコワーキングスペースを作って、そこのカウンターでコーヒーを淹れる人。
そこで休憩に来た人にコーヒーを淹れて相談に乗りながら、「それだったらあの人に聞けば一発で解決するよ! 」みたいにつなげられたらいいなって。

コーヒーを淹れるひとを目指す井水さん
カフェラテが特に大好きとのことです

それ最高ですね! ぜひ行ってみたい!

ウェブ解析士協会代表理事の江尻さんにもそういう話をしたら「いいねいいね!予算出すよ!」 と仰っていただけて(笑)
ノリもあるんですけど、本気でやるなら事業として考えなくてはいけなくて。場所も重要ですし、マネタイズも考えなくちゃ。
やっぱりみんなが「来たい」と思える状態がいいな。「そこに行くと楽しいとか、人とつながれる」みたいなものができたらって考えています。

みんなをつなげるハブみたいですね。

それ、すごく意識しています。
ウェブ解析士って本当にいろいろな方がいらっしゃって、ウェブ解析のことだったら小川卓さんから学んじゃえばいいし。SNSだったらこの人に聞けばいいとか、SEOだったらこの人がいいとか。
今の時代、わざわざ2番目、3番目の人から学ぶ必要は無くて、そのジャンルのトップから学べばいいと思うんです。SEOも、みんな色んな人に振り回されているけれど、間違いない人から学んじゃえばいい。そう思ってセミナーを企画したこともあります。

業界を俯瞰する知識を、共通点を持った仲間と共に大いに活用しよう!

これからウェブ解析士を受験する方や、受講を検討している方へメッセージをお願いします。

今の時代、一生勉強していかなきゃいけないじゃないですか。この業界でやっていくなら、役に立つ立たないの前に、まず学んでみたらいいと思います。ウェブ解析士で学ぶ内容を知っていれば、ウェブのことが大体わかる。できるようになるわけではなくて、わかるようになると思うんですよね。迷っているなら、迷わなくなったときにやればいい。やるなら間違いないからやっとき!って感じです。

ウェブに関わる仕事って、横にいる人がなにしているかわからない人が多いと思うんですよね。SEO、UI・UXのデザイン、エンジニアリング、セキュリティ、マーケティング……。その人たちが持っている情報が社内の常識なのか、業界で当たり前のことなのか。自分たちは良いと思っているけれど、もっといいやり方があるんじゃないかとか。

会社の中だけではつかめない情報をウェブ解析士でおさえておくと、自社がやっていることとか、その中で自分の強みが何かわかるので、選択肢を増やしたりキャリアを築いたりするのにすごく良いと思います。

資格を取ってみて広がる世界ってところ、ありますよね。

どの資格もそういう面はあるけれど、それが顕著に出そうですね、ウェブ解析士の場合。

ウェブ解析士の資格を取得したあとに、資格を活かすために必要なことってなんだと思いますか?心構えとか。

人との関わりを増やしていくことでしょうか。知識やノウハウを身につけるだけなら独学でできると思うんですよ。でも、ウェブ解析士という共通の資格を持ったコミュニティに参加すると、一人では気づけないことに気がつけるんですよね。正解が山のようにあるので、自分や会社と比較して気づくきっかけがあると思います。ウェブ解析士協会主催のイベントはオンライン・オフライン関係なく開催されているので、積極的に活用してほしいですね。

ウェブ解析士会議 2019
ウェブ解析士会議 2019のスタッフと登壇者集合写真

それは、ウェブじゃない業界の方が受験した場合も同じでしょうか?メーカー企業のウェブ担当者とか。

むしろ、むちゃくちゃいいと思いますよ。企業のウェブ担当者は社内で一人ぼっちで、他部署にわかってもらえずに、同じ境遇の仲間を求めている。僕がウェブ解析士協会のセミナーに参加した時も、主催する側に立った時も、「社内でわかってもらえないんです……どうしていますか?」ってお互い声をかけあって、やっとわかってくれる人ができたという話はよく耳にします。

これからの世の中って、社内外においてどういうコミュニティに属するかが、人生を豊かにする鍵だと思います。資格を取得したばかりのときは、多様な立場の人が交わるコミュニティに抵抗を感じることもあると思いますが、大いに活用してほしいですね。ウェブ解析士という共通点は代えがたいものがあるので、それをうまく利用すると楽しくなりますよ。

ウェブ解析士は資格の性質上、代理店やコンサルタントの取得が多い印象で、そういう業界以外の方にもっと知ってもらえたらいいのにと個人的に思っていました。

ウェブ解析士として学んでおけば、コンサルタントや代理店と対等に話せるようになるのも有名な話です。代理店が適当なこと言っていないかとかチェックできますよね。

言葉は悪いかもしれませんが、経営者から見れば、3万円の投資でウェブを理解する人を育てられるので、めっちゃ良いはずなんですよね。資格試験だから、担当者はがんばって勉強してくれますし。困ったときに相談できるコミュニティもできる。
そういう面も、もっと伝えていかなければいけないですね。

ウェブ業界全体を盛り上げるには?ギブファーストの相乗効果

最後に、これだけは言っておきたいことってありますか?

登壇したときに、よく話すことがあるんですが「みんなでウェブ業界を盛り上げましょう!」 ってことは伝えたいですね。
なぜかというと、日本でウェブ系の職業はまだまだ給与や社会的価値が低いと思っていて。欧米のウェブデザイナーは日本と比べて給料が倍近く違いますし、役所の書類関係で「ウェブ〇〇」といった欄は無いですよね。IT、コンサルタントはあるけれど、厳密に言えばどちらも違う。友達や親に説明しても一向に伝わらない。だからウェブ業界内の競争ではなく、みんなで一緒に学んで、成果を出して、一般化するくらいに盛り上げたいです。

わかります! 一歩外へ出ると伝わらないジレンマをずっと持ち続けている業界だと思います。

ノウハウや知識を共有していると、僕と一緒にやっている人たちの中にも、「なんで教えてくれるんですか?」と疑問を持つ方がいるんですが、いや、そんな出し惜しみしてる時代じゃないから(笑)
業界チームプレーくらいでいかないと。横の会社と競争して勝った負けたみたいな話では絶対に業界全体が良くならないと思っていて。僕がおつきあいしている経営者の方もよく知識やノウハウを共有していただくのですが、できる人たちはそこを意識していると感じます。

働くとは「傍を楽にする」という話を最近よく耳にします。まさに、社内外問わないギブですね。

ギブファーストです。それをやった人が一番恩恵を受けるし、そういうひとに情報が集まる。そういうのを自分も肌で感じています。
だから情報を囲い込まずに、ノウハウをシェアしまくって、どんどんパクってくださいでいいじゃん!って。そうやってみんなで教え合って結果を残せば、その人たちの価値は間違いなく上がります。周りのウェブなんとかの人で年収1000万超えの人がもっと増えれば、「ウェブってすげーじゃん!」ってなるわけですよね。周りも変わるし目指す人も増える。
この流れは個人でがんばっても作れないので、ウェブ解析士協会としてやる意味を大きく感じています。

業界全体の底上げには、多様性のある人たちの助け合いが肝になりそうですね。貴重なお話をありがとうございました!

あとがき

年々、ウェブ活用の手段は多様化し、人によって使うツールも細分化しています。そういった状況で成果を出すには、幅広い知識と本質的なコミュニケーション設計が求められ、日ごとに難しさが増しているように感じます。

そういった難しさを、各分野の最先端を走る方々に学びながら、切磋琢磨して乗り越えられる環境がウェブ解析士取得のメリットだと、井水さんのお話で再認識しました。

業界全体が盛り上がるように、自分もみんなの一員としてできることをやろう!と、インタビューを通じて背中を押してもらえました。ありがとうございました。

井水さんのSNS&書籍の紹介

★Twitter:https://twitter.com/ImiDai
ウェブマーケティングに役立つ情報が紹介されています。

★SlideShare:https://www.slideshare.net/ssuserf0b1bb1
過去に井水さんが登壇されたときのスライドが共有されています。

★著書:コンバージョンを上げるWebデザイン改善集
すべてのウェブ担当者必須の一冊です。

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