Google Analytics 4(GA4)の衝撃。5つのポイントと3つのAIキーワード

窪田 望

株式会社クリエイターズネクストの窪田です。Google Analytics 4 プロパティのリリースに伴い、緊急寄稿をさせていただきます。今回のGoogle Analytics 4 プロパティはウェブ解析の知見と、機械学習の知見とが同時に求められる内容でした。

私は3万8000名のウェブ解析士の中で2年連続に日本一となっており、東京大学大学院松尾研究室のGCI、MITスローン大学院で深層学習のプログラムを修了しています。また、深層学習に関する特許を日本で取得しています。そのため、本記事では、ウェブ解析の知見と、機械学習の知見を両方使いながら説明していきます。

Google Analytics 4の衝撃

Google Analytics 4(GA4)が登場しました。この解析は、これまでとは桁違いにパワフルに顧客理解ができる画期的なものです。ですが、本質を理解しておかないと、今後圧倒的に差がついてしまい、これまでのウェブ解析が陳腐化されてしまうかもしれない危険性もあるでしょう。

一方、この記事を最後まで読むことで、今回の変化の本質を理解し、ただ機能を知るだけではなく、今後の大きな流れを予測できるようになる可能性もあります。個人的には大きな分かれ道が始まったという認識を持っており、ここからウェブ解析の力も二極化していくことでしょう

GA4を理解するための5つのポイント

(1)GA4は昨年ベータ版で登場したApp + Webプロパティの基礎の上に構築

正式名称はGoogle アナリティクス 4 プロパティです。「アプリ + ウェブ」は旧称になります。

(2)機械学習を導入しているアクセス解析ツールになった

顧客が将来取るであろう行動を予測できるようになりました。例えば、解約率を予測するといったことができるようになります。これにより、これまで難しかったコンバージョンの後の世界の解析が可能になります

コンバージョンはしたものの、その後、収益化したかは別問題という状況が実際にあります。例えば、SaaSビジネスでのサブスクリプションモデルなどはその典型と言えます。CPAが2万円で月5000円のサービスだったとして、6ヶ月継続で黒字化するとします。そういったサービスの場合、解約率の予測は経営の根幹を担う重要な指標になります。

(3)UXの検証がより具体的に

Google Analyticsのグループプロダクトマネージャーであるラッセル・ケッチャム氏は、Search Engine Landに次のように語っています。※1

このレポートは、マーケティング担当者がカスタマージャーニーの特定の側面を掘り下げるのに役立つように設計されています。例えば、ユーザー獲得レポートでどのチャンネルが新規顧客を獲得しているかを確認し、エンゲージメントレポートとリテンションレポートを使用して、これらの顧客がどのような行動をとっているか、コンバージョン後に顧客が離れていないかを理解することができます。※2

※1: https://searchengineland.com/google-analytics-4-adds-new-integrations-with-ads-ai-powered-insights-and-predictions-342048
「“We’ve reorganized all of the reports that had been in the App + Web beta, added a handful of additions, and now it’s organized around the customer lifecycle,’” Russell Ketchum, Group Product Manager, Google Analytics, told Search Engine Land」より翻訳

※2: 「The reports are designed to help marketers drill down into particular aspects of the customer journey. “For example, you can see what channels are driving new customers in the user acquisition report, then use the engagement and retention reports to understand the actions these customers take, and whether they stick around, after converting,” the company said.」より翻訳

また、アプリとウェブのインタラクションを一緒に測定できるようになっています。アプリ内とウェブで発生したYouTubeのエンゲージメントビューからのコンバージョンをレポートに含めることができます。YouTubeの動画視聴からのコンバージョンを、GoogleやGoogle以外の有料チャンネル、Google 検索、ソーシャル、メールなどのコンバージョンと並べて見ることで、すべてのマーケティング活動の効果を総合的に把握できます

(4)プライバシー問題に対応

GDPR/CCPAなどのデータ規制に準拠したアナリティクスツールになっています。

  • GDPR:EU一般データ保護規則
  • CCPA:カリフォルニア州 消費者プライバシー法

GDPRに違反した場合、企業の全世界売上の2%以下または1,000万ユーロ(約12億円)のいずれか高い方が罰則になり、企業が倒産に追い込まれるような大きな罰則規定になっていました。EUのみならず、米国カリフォルニア州 消費者プライバシー法も定まったことで、プライバシー保護の強化は世界的な動向になっています。

また、ブラウザーアップデートやITP2.0の実装などによるクッキーの問題、ユーザープライバシーコントロールができるようになってきたため、新しいアナリティクスツールはマーケターの頭痛の種でした。

今回、発表されたGoogle Analytics 4は「クッキーのない未来のアナリティクス」と呼ばれています。サードパーティのクッキーが段階的に廃止されていく中で、Googleはデータの分散化が新たな規範になると予想しています。Googleは、データのギャップを埋めるために機械学習に頼ることになるだろう。そんなことをKrista Seiden氏が話しています。

(5)具体的事例

Vistaprint社は、パンデミックが始まった時のビジネスの急激な変化に対応し、新製品のマスクに対する顧客の反応を迅速に測定することで理解ができました。

Domino’s Pizza of Canadaの副社長であるJeff Kacmarek氏は、「新しいGoogle AnalyticsとGoogle Adsをリンクさせることで、顧客がどのようにブランドと関わりを持つかに関わらず、顧客にとって最も重要な行動を中心に最適化することができる」ことを発見しました。

機械学習の3つのキーワード

さて、そもそも、機械学習にも向き・不向きがあり、魔法の杖ではありません。そこで、機械学習に関する3つのキーワードを知っておきましょう。

(1)回帰問題

回帰問題の特徴は「何を予測したいかの対象が数字(連続値)になる」ことにあります。例えば、過去の売り上げから将来の売り上げを予測したいような状況で必要になります。今回の発表だと解約率予測が該当します。これをしっかりと解き明かすことで、マーケティング予算が逼迫している時期に顧客を維持するための投資をより効率的に行うことができます。

(2)分類問題

分類問題の特徴は予測したい対象が離散値になります。例えば、スパムメールを判別したいなどの際に必要になります。今回の発表だと顧客セグメンテーション分類などが該当します。収益性の高い顧客の発見などがこの分野です。

(3)欠損値処理

GDPRの関係で、データを削除する必要が生まれました。その欠損値をどう処理するかが大事になります。その際の考え方には以下のようなものがあります。

  • 完全にデータを消す
  • 中央値で補完
  • 平均値で補完
  • 最頻値で補完

どの手法がGoogle Analytics 4で採用されているかはわかりませんし、発表されてはいませんが、こういった考え方があるんだ、ということを知っておくと良いでしょう。

まとめ

今後、機械学習はウェブ解析士にとっても必須スキルになります。今回の記事で明らかにしたように、Google Analytics 4の本質的な理解のためには、「機械学習」「UX」「GDPRなどのプライバシー問題」などかなりハイレベルな知識が求められることがわかりました。

しかし、逆にいうと、知っているか知らないかの違いだけになります。そこで私は「おめでとうございます」と言いたいと思います。

この記事を最後まで読んだ時点で、あなたは既にトッププレイヤーの仲間入りをしていると考えてもいいでしょう。

また、今回この記事を書くにあたり、撮影スタジオを押さえて、ビデオ収録も行いました。それがこのビデオです。

このビデオを社内で共有することで、チームメンバーのレベルアップに貢献することも大事です。 

Google Analytics 4の本質を理解し、ただ機能を知るだけではなく、これから始まるダイナミックな変化を感じ取っていきましょう。最後に1つ名言を紹介します。

未来を考えない者に未来はない

ヘンリー・フォード

最後に現実的な話も・・・

では一方で、今回の対応をどうするべきかということについては、各社が迷われていると思います。一番大きな誤解は「移行」という話だと思っています。そもそも、今回のGoogle Analytics 4は移行ではなく、プロパティの作成になり、元のプロパティには一切影響がありません

Google Analyticsの画面に書かれている「GA4へのアップデート」という言葉から、移行を連想しやすいのだと思いますが、実際の画面は以下のとおりで、元のプロパティへの影響はありません。

しかし、実際に試したところすべてのGAでGA4が使えるわけではなく、一部のサイトでのみ適用可能になっているようです。そのため「既存のプロパティとGA4のプロパティの併用」が現実解かと思います。顧客の許諾が取れれば、プロパティを作成して、併用することからはじめてみてはいかがでしょうか?

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