【2018年保存版】環境分析によって自社内外の情報をマーケティング施策に活かす6ステップ

こんにちは、ウェブ解析士マスターの中川です。
現在、ソフトバンクとオプトの合弁会社「ジェネレイト」でマーケティングプランニング領域の執行役員をしています。デジタルマーケティングのサービス提供を主業務とし、メディア構築、広告、CRM、などの広告代理店的な業務全般を提供しています。

今回は「環境分析」についてお話します。

環境分析とは、自社を取り巻く内部・外部の経営環境をいくつかの視点から分析することです。自社の置かれている状況を把握して適切な情報を解釈できるようになれば、競合との優位性や市場の機会を見つけ出し、マーケティングに活かすことができます。

マーケティング対象のウェブサイトや企業規模自体が小さい場合でも、業界上位プレイヤーの傾向や戦略を知ることで、対象事業のマーケティング戦略の仮説立ての参考になるはずです。

各種ツールもご紹介しましたので、これから環境分析について考える方も、すでに環境分析をしている方も、参考になさってください。

目次

環境分析の有用性(絶対評価と相対評価)

ウェブ解析を行うにあたり、最も重要な業務のひとつはデータによるパフォーマンス分析です。良し悪しを判断する評価軸は、アクセス解析ではオウンドメディアのデータが中心となるために「絶対評価」が中心となりますが、絶対評価だけでは、市場環境における判断がしずらくなります。

市場におけるオンリーな存在の商品やサービスであれば、絶対評価でも分析をミスリードすることは少ないでしょう。しかし、競争環境にある商品やサービスの分析であれば「他社と比較してどうなのか」が重要で、相対評価の方がよりユーザー目線に近いとも言えます。

図1

評価することのほかに、相対評価には、適切な目標値の仮説立てにつなげやすいというメリットもあります。市場で同水準の評価がなされているサービスの競合関係において、ウェブマーケティングが先行している他社のデータがわかれば、後発である自社の目指すべき目標値(ウェブサイトのセッション数など)を定めやすくなります。

こういった、自社ウェブサイト以外の周辺情報を適切に選び、収集し、評価につなげられる能力は、ウェブ解析を行うにあたり重要な能力のひとつです。

この相対評価の中で、特にウェブ解析において活用しやすい手法である「ベンチマーキング (※)」を意識しながら、環境分析の中でどのようなツールを使い、どのような情報を収集・加工し、分析に活かすのかについてご説明しましょう。

※ベンチマーキングとは(Wikipediaより)

ベンチマーキング(英:benchmarking)とは国や企業等が製品、サービス、プロセス、慣行を継続的に測定し、優れた競合他社やその他の優良企業のパフォーマンスと比較・分析する活動を指す。測定する尺度は、顧客による企業のパフォーマンスに対する評価に直接、間接的に影響を与えるものでなければならない。本質的にベンチマーキングは、ビジネスのパフォーマンスのスナップショットを提供し、標準やベストプラクティスと比べてそのビジネスの現状がどの程度なのかを理解する補助となる。通常、その結果に基づいてなんらかの変革を行い、改善に導こうとする。

https://ja.wikipedia.org/wiki/ベンチマーキング

ベンチマーキングの進め方

ベンチマーキングの基本は、ベンチマーク企業を見つけ、そこの持つベストプラクティスを見出し、自社もしくは顧客との差分を明らかにして目標を定め、成果につなげるための方策につなげることです。

図2

ここでは、以下6つのステップでベンチマーキングを進める方法をご説明します。

図3

Step-1 まずは市場トレンドが伸びているのかを確認し、次にその業界を牽引している法人(主要プレイヤー)の業績を確認。

Step-2 主要プレイヤーのウェブ来訪者の属性や、サイトパフォーマンスは業績と連動しているのか、サービス内容と連動した傾向なのかなど、各社の差分とウェブパフォーマンスを合わせて確認。

以上の2ステップで、ベンチマーク企業のウェブサイトを見つけます。ベンチマークを設定したら、自社とベンチマーク企業の差分を調査し、自社に活かせるベストプラクティスの仮説を立てることに進みます。

Step-3 ウェブサイトへの来訪経路から、集客への取り組みの違いを確認。

Step-4 SEOのパフォーマンスを確認し、検索流入への取り組みの違いを確認。

Step-5 表示速度を確認し、閲覧ストレス軽減への取り組みの違いを確認。

Step-6 更新頻度や更新内容を確認し、ユーザビリティやコンテンツへの取り組みの違いを確認。

以上のステップ3〜6によって、「広告施策・PR施策・SEO施策」「ユーザビリティ改善」「更新頻度設計」「UI設計」「コンテンツマーケティング」などに関わる、自社にとって最適な施策の発掘につなげることができます。

「施策につながるデータに注視する」というのはウェブ解析士の原則です。施策ありきで手段が目的化してしまったり、やみくもにデータを見るのではなく、「分析結果から何の施策につなげられるのか」をイメージしながら調査設計することが大切です。上記のステップに基づいて調査、分析、考察をすることで、自社分析だけでは得難い、自社のポジション評価や課題発見につながることがあります。

マーケティング対象のウェブサイトや企業規模自体が小さい場合でも、業界上位プレイヤーの傾向や戦略を知ることで、対象事業のマーケティング戦略の仮説立ての参考になるはずです。

では、具体的な調査手法と調査ツールをご紹介していきましょう。

具体的な調査手法

調査をするためには数多くの方法がありますが、ここでは比較的誰でも取り組みやすい方法として、無料の情報ソースやツールを利用した方法を A. 分析の視点や方法 B. ツールの使い方、の2つのパートに分けてご説明します(2018年8月時点)。

特にツールは栄枯盛衰があるため、ツールそのものにとらわれずに、必要に応じて取捨選択できる能力や視点が最も重要です。

今回は化粧品(コスメ)業界をテーマに、一通りの調査をしていきます。

Step-1. 業績:市場トレンド、主要プレイヤーの確認

1. 市場のトレンドを大きく把握

Google Trends https://www.google.co.jp/trends/

ベンチマーキングを始めるには、まず、業界全体の傾向をマクロ視点で捉えることから始めます。伸びている業界なのか、需要期、閑散期などの季節性はあるのか、などの確認をします。

図6 過去12ヶ月のコスメとメイクのトレンド
図7 過去10年(2004-現在)のコスメとメイクのトレンド

A. 分析の視点や方法

今回は「コスメ」と「メイク」という2つのワードで調べてみました。どちらも直近1年の数字の推移は大きな上下差異はなかったのですが、過去10年で見てみると、「コスメ」は緩やかな上昇傾向、そして「メイク」は5倍ほどにまで上昇していることがわかります。ただし、直近5年ほどは数字の上昇傾向が収まっており、大きなニーズ増加などの傾向はないことが伺えます。

B. ツールの使い方

どんなワードがその業界の伸長を指し示しているのかを推測するセンス、つまり「その業界への情報感度」が重要です。センスに自信のない方は、Google や Yahoo! Japan などの各媒体が提供しているリスティング広告のキーワードアドバイスツールなどを利用して、検索ボリュームの多いワードを調べるのも手段のひとつです。

2. 業界の主要プレイヤーを確認

Google、Yahoo! Japan などの検索エンジンにて「業界名+業績」「ランキング」などの検索ワードで探すと、業界の主要プレイヤーを確認できます。今回は「業界動向ランキング」というウェブサイトのランキングを参照しました。

図8 ランキング表

業界動向サーチ https://gyokai-search.com/4-kesyo-uriage.htm

A. 分析の視点や方法

企業の業績を示す指標はいくつかありますが、消費者からの支持度合いを示すものとしては「売上」が一般的であり、情報も得やすいと思います。利益や株価、時価総額などの情報は経営的な要素の内包度合いも強くなり、マーケティング視点という意味での分析としては判断が難しくなると考えます。

ランキングの並び順と合わせて、数字の差異の大きさ、市場規模に対して上位数社のシェア率が大きいのか、それとも分散しているのか、なども合わせて考察しながら見てください。それらの状況と各メーカーの製品や販売方法の特性などを合わせて見てみると、ランキングの要因や各社の個性などが見えてきます。

今回ですと、市場規模が2兆円と言われるコスメ業界において、上位2社の市場シェアが圧倒的な様子がわかります。4位と6位の会社は基本的に無店舗販売(訪問販売・通信販売など)を主体としている会社です。5位は男性向けに特化した製品ブランドの会社です。上位2社はコスメだけでなくトイレタリー全般の製品を扱っており、その意味では市場における社名認知度が抜きん出ているのかもしれません。

B. ツールの使い方

業界によって、流通している情報の鮮度(年度)が異なります。検索結果に少し古い情報しか上がってこない場合は、検索ワードに年度の数字も入れてみてください。それでも直近の情報が上がってこない場合は、直近の数字は流通していない可能性があります。また、情報が掲載されている媒体(ウェブサイト)の信ぴょう性も重要です。業界ランキングは個人の方がブログの記事として取り上げることも多く、数字の扱い方やコメントなどが属人的になっていることもあります。

次の項で紹介するような、各社が公表している実際の業績情報と照らし合わせて、ランキングの正確性を確認することも合わせて行ってください。

3. 各プレイヤーの業績を確認

日経会社情報(業績) http://www.nikkei.com/markets/company/

今回は参考に、ランキング1位だった「S社」を調べてみます。

図9 検索結果トップ画面

図9 検索結果トップ画面

図10 売上高の情報画面

図10 売上高の情報画面

図11 業界から銘柄を探す

図11 業界から銘柄を探す

A. 分析の視点や方法

特に確認したい情報項目

  • 業績
  • 株価(時価総額)
  • 関連ニュース、プレスリリース

ここでは、売上高の推移を確認することができます。コスメ業界全体としては直近5年は大きな伸長はなかったのですが、S社の売上高は伸びていますので、上位2社による市場の寡占化が進んでいるような印象を受けます。業界成長が鈍化している中、上位企業の寡占化が進んでいるとなると、上位以外の企業にとっては厳しい状況であるように思われます。このように、全体のトレンド、各社のトレンドを合わせみることで、業界の現在のコンディションを深掘りしていきます。

B. ツールの使い方

企業名を入れて検査します。詳細情報は有料会員のみとなっていますが、売上高の情報は無料閲覧の範囲で掲載されているので確認することができます(図10)。

また、その下の方に画面をスクロールすると「業界から銘柄を探す(図11)」という機能があります。ここでは当該業界の主な銘柄=企業が時価総額の順に確認することができますので、先のランキングと合わせて参考にすることができます。

Step-2. ウェブ来訪数:ウェブサイトのパフォーマンス確認

1. ウェブサイトのアクセス数を調べる

SimilarWeb http://www.similarweb.com/

市場の傾向、各社の業績などのデータの整理ができましたので、ここからはウェブ関係のパフォーマンスの確認に進みます。まずは上位5社のウェブサイトへの来訪数を見てみましょう。

SimilarWeb は視聴率モニターなどをもとにした推計値を基本としており、Google アナリティクスなどの全数データとは値が異なります。このため効果測定などに SimilarWeb の数字を利用する場合は注意が必要です。今回のように、他社との比較や、過去との比較など、相対評価として利用することをお勧めします。

図12 ウェブサイトパフォーマンスの概要(来訪数、平均滞在時間、平均PV、平均直帰率)

図12 ウェブサイトパフォーマンスの概要(来訪数、平均滞在時間、平均PV、平均直帰率)

A. 分析の視点や方法

各社間の業績の差異とウェブサイトのパフォーマンスの差異に大きな違いがあるかをまずは確認します。業績よりもウェブサイトのパフォーマンスが高かった場合には、その企業がウェブマーケティングに力を入れている、もしくはウェブと相性の良い製品を持っている、などの可能性が考えられます。逆に、業績よりもウェブサイトのパフォーマンスが低い場合は、ウェブマーケティングにあまり注力していない可能性が考えられます。

B. ツールの使い方

SimilarWeb に調査したい対象ウェブサイトのURLを入力すると、そのウェブサイトの来訪数などのパフォーマンスを調べることができます。

無料版の場合は、URL第二階層以下を指定した調査ができないため、調査対象はURL第一階層で調査できるウェブサイトに限られます。

無料版は過去3ヶ月間の月平均値を確認することができます。

特に確認したい情報項目

  • 来訪数
  • 平均直帰率
  • 平均PV
  • 平均滞在時間

2. ウェブ来訪者の属性を調査する

eMark+ https://asp.emarkplus.jp/emarkplusfree/index.html

eMark+ は国内20万人規模の行動ログモニター会員による消費者パネルにより、ウェブサイトのパフォーマンス情報を調査できます。SimilarWeb との比較では、来訪者のデモグラフィック属性情報が充実している点が特徴です。

図13 性別、年代、地域

図13 性別、年代、地域

A. 分析の視点や方法

調査対象各社の来訪者が持つ各々の属性に偏りがないかを確認します。業績の良い会社の属性は、勝ちパターンを検討するにあたってのひとつの参考になります。また、各社の持つ主要商品のメインターゲットとの差異がないかの確認も行うと参考になることがあります。

性別、年代、地域、職業、未既婚、子供有無、年収、など、ツールによって様々な情報を確認することができますが、無作為に多くのデータを収集するよりは、その業界、その企業、その製品などの特徴を表しやすい項目にフォーカスした分析を行うことが、ミスリードのない分析につながります。

B. ツールの使い方

eMark+ に調査したい対象ウェブサイトのURLを入力すると、そのウェブサイトの来訪数などのパフォーマンスを調べることができます。ウェブ来訪者の属性を確認する場合には「ユーザー属性」のメニューから調査します。eMark+ の無料版では直近1ヶ月間の情報を確認することができます。

特に確認したい情報項目

  • 性別
  • 年代
  • 地域
  • 職業
  • 未既婚
  • 子供有無
  • 世帯年収
  • 個人年収

以上の2ステップでベンチマーク企業のウェブサイトを設定したら、次に自社とベンチマーク企業の差分を調査し、自社に活かせる最適な手段の仮説を立てることに進みましょう。

Step-3. 来訪内訳:ウェブサイトのパフォーマンスの要因を深掘りする

1. ウェブサイトの来訪経路を調べる

SimilarWeb http://www.similarweb.com/

SimilarWebの無料版では、来訪経路ごとの割合、検索来訪のTOP5ワード、リファラー媒体のTOP5、SNSからの流入内訳などを確認できます。これらの情報は、来訪数に差異があった場合の要因分析のひとつとなり、施策を企画する場合の参考にもなります。

図14 来訪経路の割合

図14 来訪経路の割合

図15 SNSからの流入内訳

図15 SNSからの流入内訳

A. 分析の視点や方法

ウェブマーケティングに力を入れている企業の傾向としては、社名や製品名などの指名ワード以外の検索ワードからの来訪が多い、グループ会社など関係会社以外の一般媒体からのリファラー来訪が多い、SNSからの来訪が多い、などの傾向が見られます。またウェブサイト上でサービス提供する業界の場合は、リピート率の高さに比例してダイレクト来訪の数が高い可能性があるため、エンゲージメントの強さを推察することにも繋がります。

SNSの場合は主要媒体に各々特徴があるため、各企業の取り組みがそのまま反映されているケースがあります。YouTubeは動画コンテンツとして、人気タレントのTVCMやハウツーなどに力を入れているケースがよく見られます。TwitterやLINEはプレゼントなどのキャンペーン告知に活用する企業が多い傾向があります。ブログなどのコラム的なコンテンツに力を入れたり、ビジネスパーソンをターゲットにしている企業はFacebookを活用する傾向が強いような印象があります。

B. ツールの使い方

SimilarWebに調査したい対象ウェブサイトのURLを入力すると、そのウェブサイトの来訪数などのパフォーマンスを調べることができます。入経路別パフォーマンスは「Traffic Sources」、来訪キーワードは「Search」、流入元メディアは「Referrals」、SNSからの流入内訳は「Social」にて確認することができます。

無料版の場合は、URL第二階層以下を指定した調査ができないため、調査対象はURL第一階層で調査できるウェブサイトに限られます。無料版は過去3ヶ月間の月平均値を確認することができます。

特に確認したい情報項目

  • 流入経路別パフォーマンス(ダイレクト、リファラー、サーチ)
  • 来訪キーワード
  • 流入元メディア
  • SNSからの流入内訳

Step-4. 検索順位:検索結果におけるパフォーマンスを確認

1. SEOのパフォーマンスを調べる

ランキングチェッカー(検索ランク調査)http://broadentry.com/rankingchecker/

競合各社の検索結果順位を調査します。この調査が行えるツールは無料でもいくつかありますので、自分の好みにあったツールを利用されるのが良いと思います。各ツールによる調査結果の差は特になく、各検索エンジンから実際の検索結果順位を引用してきていることがほとんどです。

図16 検索エンジンの検索結果

図16 検索エンジンの検索結果

A. 分析の視点や方法

検索エンジンでの検索結果順位は、インターネットの世界において、その検索ワードに対しての消費者の純粋想起や助成想起の順位と比例すると言っても差し支えないと考えます。単にSEO施策をして短期的に順位を上げたとしても検索したユーザーの期待と異なった検索結果だった場合にはスルーされてしまうだけであり、その結果、検索結果上位を維持することは難しくなります。

社名や製品名などの指名ワードで獲得できるのは主に顕在層であり、一般ワードで獲得できるのは、各社にとって主に潜在層と言える新規獲得に寄与する来訪者である可能性が高いと言えます。このパートで特にフォーカスしたいのは、この「一般ワード」での検索結果順位です。この結果順位は市場における「化粧品といえば、S社」というような認知度、好意度に比する価値があると言えます。

B.ツールの使い方

ツールに対象ウェブサイトのURLと、調査したい検索ワードを入力してください。結果表示に若干時間がかかるケースがありますので、結果が即反映されなくてもお待ちください。

特に確認したい情報項目

  • 検索結果順位
  • Yahoo! Japan/Google

2. SEOランキングの要因を深掘りする

SEOチェキ! http://seocheki.net/

SEO関係の基本情報を一通り調査できる老舗ツールです。テクニック的なSEOというよりも、HTMLの記述やサイト構造など、現在のGoogle基準にも沿った基本的な項目の情報が中心となっているため、SEOのトレンドに関係なくスタンダードに利用できる調査ツールと言えます。

図17 SEOチェキ!のTOPページ

図17 SEOチェキ!のTOPページ

A. 分析の視点や方法

メタ情報、含有キーワードの情報などを見ると、各社が意図的に検索エンジンを意識しているかの度合いがわかります。また、インテックス数はページ数=コンテンツの量とも言え、その意味でも消費者に対して「化粧品といえば、S社」という情報提供の姿勢を反映していると見ることもできます。

B. ツールの使い方

ツールに対象ウェブサイトのURLを入力するだけで、基本的な情報収集を行います。

特に確認したい情報項目

  • タイトル、ディスクリプション、キーワード、H1
  • インデックス数(ページ数=コンテンツ数)
  • 含有キーワードと出現頻度

Step-5. 表示速度:ページ展開スピードのパフォーマンスを確認

1. ページ展開スピードのパフォーマンスを調べる

pingdom http://tools.pingdom.com/fpt/

ページ展開スピードのパフォーマンス調査ツールの中で、無料版の中でも調査結果データが充実しているのが「pingdom」です。応答時間、ファイルサイズなどのほか、ページ内各ファイルのリクエスト応答速度も細かく調査してくれるため、具体的な改善業務に活かしやすいことが特徴です。

難点は、調査起点がオーストラリアやアメリカとなっており、応答時間の絶対評価自体はあまり参考にならないことです。あくまで他社や他ページ、他ファイルとの相対評価として利用されることをお勧めします。

図18 ページスピードの調査結果

図18 ページスピードの調査結果

図19 ページ内各ファイルのリクエスト応答速度調査

図19 ページ内各ファイルのリクエスト応答速度調査

A. 分析の視点や方法

各社間での応答時間の差異で評価します。応答時間は基本的に短ければ短いほど、利用者の使い勝手が良く、ストレスも低く、エンゲージメントが高まると考えられます。

B. ツールの使い方

ツールに対象ウェブサイトのURLを入力するだけで、基本的な情報収集を行います。ページ展開スピードは「Load time」にて確認することができます。

特に確認したい情報項目

  • ページ展開スピード

2. ページ展開スピードの要因を深掘りする

pingdom http://tools.pingdom.com/fpt/

先のページ展開スピード調査に用いた「pingdom」を利用します。

図20 ファイルサイズ、構成ファイル数

図20 ファイルサイズ、構成ファイル数

A. 分析の視点や方法

応答時間差異の要因分析として、ページのファイルサイズや、構成ファイル数などを確認します。この分析には具体的なページ制作の知識や経験が必要になるため、その経験がない方は、経験のある方と一緒にデータを見ることをお勧めします。

B. ツールの使い方

ツールに対象ウェブサイトのURLを入力するだけで基本的な情報収集を行います。ファイルサイズは「Page size」、構成ファイル数は「Requests」にて確認することができます。

特に確認したい情報項目

  • ファイルサイズ
  • 構成ファイル数

Step-6. 更新頻度:ウェブサイトの更新頻度を調べる

Internet Archive: Wayback Machine http://archive.org/web/

世界中のウェブサイトの履歴をアーカイブしているサービス。そのドメインでウェブサイトが公開された時から、更新された都度、ページがアーカイブされています。Flashなどの時代ごとのプラグインがないと閲覧できないコンテンツはありますが、それも含めて過去を確認することができます。

図21 調査結果画面

図21 調査結果画面

A. 分析の視点や方法

まずは更新頻度の多さを比較しましょう。更新頻度の高さは、ウェブを通じた消費者とのコミュニケーションに対する企業姿勢の表れのひとつであると考えます。また、更新頻度が高いことは、ユーザーにとって情報有益性や情報鮮度が高まることと比例する場合が多く、結果、満足度の高さや再来訪率の高さにつながることが考えられます。更にフルリニューアルの変遷を確認することで、現在のウェブサイトの方針を推察することもできると考えます。

B. ツールの使い方

まず、上部にある年表の山が更新頻度であり、年表がスタートしているところがそのドメインでのウェブサイトの誕生年になります。各年を選択すると、その年内の各月カレンダーが下部に表示され、更新のあった日にマークが付いています。

このマークをクリックすると、その時点のウェブサイトが表示されます。表示されたウェブサイトはリンクなどの機能も基本的にそのまま表示されますが、当時のHTMLを現在のブラウザで正しく表示することは難しく、表示崩れや非表示になる箇所もあります。

特に確認したい情報項目

  • 更新履歴
  • 更新内容
  • 過去のウェブページ

まとめ

大切なのは絶対評価だけでなく、「他社と比較してどうなのか」という相対評価のほうがユーザー目線に近いということです。大きく2つのフェーズに分けると、ベンチマークの設定 → ベストプラクティスの発掘の順に行うことをオススメします。

ベンチマークの設定

  1. まずは市場トレンドが伸びているのかを確認し、次にその業界を牽引している法人(主要プレイヤー)の業績を確認。
  2. 主要プレイヤーのウェブ来訪者の属性や、サイトパフォーマンスは業績と連動しているのか、サービス内容と連動した傾向なのかなど、各社の差分とウェブパフォーマンスを合わせて確認。

ベストプラクティスの発掘

  • ウェブサイトへの来訪経路から、集客への取り組みの違いを確認。
  • SEOのパフォーマンスを確認し、検索流入への取り組みの違いを確認。
  • 表示速度を確認し、閲覧ストレス軽減への取り組みの違いを確認。
  • 更新頻度や更新内容を確認し、ユーザビリティやコンテンツへの取り組みの違いを確認。
  • これらの違いから、自社のベストプラクティスに活かせるかを判断。

それぞれの説明が長くなりましたが、上記に紹介したツールはあくまで環境分析を目的としたものであり、そのツールを扱うことが目的となってしまっては本末転倒です。繰り返しますが、「分析結果から何の施策につなげられるのか」をイメージしながら調査設計することが大切です。施策のための分析ではありません。すべてのケースに当てはまる施策はありえないからです。

以上のステップを参考に多角的な視点で環境分析を行い、自社のベストプラクティスの発掘に役立ててください。

デジタルマーケティングを基礎から総合的に学ぶには

Google アナリティクスをはじめとしたGoogle系のツールは、その使い方を知ることも大切ですが、使うための戦略や設計が必要です。それは、ビジネスに成果をもたらすために必須の考え方です。

ウェブ解析士協会では、このようなデジタルマーケティングの基盤となる「ウェブ解析」を体系的に学べる環境と、知識・技術・技能に一定の評価基準を設け、あらゆるデータから事業の成果に貢献する人材を育成しています。

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この記事を書いた人

デジタル領域のマーケティングコンサルを主業務として、分析、企画、施策運用、体系化まで全体を守備範囲としています。特に競合分析、クリエイティブ制作が得意。VR/AR/IoT/AI/Robotなどのフィジタルコンテンツをマーケテイング活用するためのデータプラットフォーム事業も行なっており、情報メディアの運用もしています。

SimilarWeb日本公式ブログでのコラム連載
https://www.similar-web.jp/blog/archives/3985

宣伝会議での連載「未来技術探検隊」
https://mag.sendenkaigi.com/senden/201805/future-technology/013282.php

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