なぜPDCAサイクルは回らないのか?

みなさん初めまして、電通西日本コミュニケーションプランニングセンター・ビジネス開発部ディレクターの廣瀬亘と申します。

入社以来、主にマーケティングセクションで数多くのクライアント様の事業計画策定にたずさわらせて頂く機会があり、貴重な経験を積んでまいりました。

その経験を繰り返す中で、実際に実行が困難に陥ってしまったケースと、なぜそうなってしまったのかという原因を考察し、皆様と共に次のステップへの道標を示すことができればと考え寄稿させて頂きます。

目次

PDCAサイクルとは

改めて説明するまでもなく、もうすでに慣れ親しんだPDCAという言葉。実はその歴史は古く、日本にこの言葉が入ってきたのは1950年と言われています。当初は経営手法としての考え方だったものが、その後生産や製造、品質管理などの現場で使われるようになりました。

それが時代と共にマーケティングのフレームワークとして重用されるようになります。そして、このP(計画)→D(実行)→C(評価)→A(改善)という考え方は、マーケティングの基幹として受け入れられ、事業計画策定のフレームワークとして広く浸透していきました。

変化するPDCA

その慣れ親しんだPDCAも時代と共に変化がもたらされました。それは日本市場に1990年代インターネットが登場し、2000年代になって一挙に普及したという背景に大きく影響されています。

グラフデータ元:統計調査データ:通信利用動向調査メニュー

ネット普及以前、コミュニケーションの主体はマスメディアであり、その一方通行のコミュニケーションの中でおこなうPDCAは四半期、半年間という中長期の期間で使用されていました。ただC(評価)の段階では市場の反応をリアルタイムに取得するにはほど遠く、実際にA(改善)へと結び付けることもハードルが高かったと記憶しています。

しかし、ネットの普及後に双方向のコミュニケーションが実現し、実行した施策の効果もリアルタイムで分かるようになります。そうするとPDCAサイクルが短期間に超高速で回すことが可能となりました。

失敗が許されない日本の規律

しかし、いざPDCAサイクルを稼働させようとすると、障壁となるものが現れてきます。それは悲しいかな、勤勉な日本人の持つ気質というか、長々と根付いている『失敗は許されない』というルールなのです。

試験勉強などにおいて、最後に合格すればいいのに『小テストでも決して失点は許されなかった』という経験をした人は多いでしょう。失敗したら厳罰という文化はPDCAサイクルにも影響を与えます。

これは事業計画の会議でもたびたび現れ、PDCAのC(評価)の段階で自己評価をする必要があります。結果としてよい評価もありますが、悪い評価もあります。この悪い評価が曲者で、自分のミスをさらけ出しているように受け止める方もいらっしゃいます。

私も、その想定外の結果はなぜ起こったのか、最初から無理だったのではないか、などと叱責された経験もあります。そこで、評価をしないと改善に結び付けられないということを説明し、PDCAサイクルの機能に理解を得ることに苦労することもありました。

ハロー効果が邪魔をする

みなさん。ハロー効果というものをご存知でしょうか。これは、出会った事柄の印象から他の印象まで引きずられて判断してしまうというもので、初対面の人の印象からその人のすべてを判断してしまうというような事象です。

日本の組織の中ではこのハロー効果が根強く存在しているのです。例えば『以前同じような案件に携わった経験があり失敗した。だからこれにはあまりいい印象を持てない』とか、『最近よく名前を聞くので、きっと流行だろう。それは持続可能なのか』などということです。それを組織の肩書のある人が事業策定の時に語ると、大きな影響力を持ったとたんにPDCAサイクルは回りづらくなります。

事業を成功させるためのPDCAサイクルなのか、会社組織のためのPDCAサイクルなのか、おのずと結論は分かるはずですがハロー効果に惑わされないことが大切です。

主役は誰かを考える

以前、日本映画の主人公が『事件は会議室で起こっているんじゃない』と叫ぶシーンがありましたが、実はこのPDCAサイクルにおいても同じことが言えるのではないかと考えます。いくら綿密に計画し、実行した結果からのデータを分析し改善策を投入したとしても、その施策を遂行する人が『なぜ?』や『どうして?』を理解していなかったら、期待した結果にはたどり着けないと考えます。

実行現場との意思疎通ができておらず、ただ紙やメールだけの指示が回る。プランナーがいくら考えをめぐらせても、プレイヤーがそのプランに練り込まれた意図を理解していないと、PDCAサイクルは決して回ることはないと考えます。

意外と回りにくいPDCAサイクル

こうして、いくつかの事例を見てきましたが、実はPDCAサイクルは良く聞く言葉ですし、親しみもありますが実は意外と回せていない実情があります。いや、回そうとして計画し実行するのですが、P(計画)→D(実行)……で終わってしまうケースに出会うこともしばしばあります。PDCAサイクルを回すこと目的とするのではなく、現状を改善しスパイラルアップを叶えることを目指していきたいものです。

事業計画・PDCAに関するお話は、弊社HP内『エリアシ』記事でも触れています。是非ご覧ください。

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※このコラムは執筆者の個人的見解であり、株式会社電通西日本の公式見解を示すものではありません。
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この記事を書いた人

電通西日本 コミュニケーションプランニングセンター ビジネス開発部ディレクター
電通西日本入社後企画営業スタイルを創造し、プロモーションとマーケティングを融合させたソリューション・セクションの立ち上げに従事する。2011年よりコミュニケーションプランニングセンターに所属し新規ビジネスの開発に携わる。近年は、数字では見えないクライアントとユーザーとの関係性。たとえば共感・愛着・信頼が生み出す価値を重視してプランニングすることを目指している。

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