企業としての信頼度を高める!ウェブサイトにおけるストループ効果とは?

こんにちは。ブランディング・マーケティングに関するコンサルティング事業を展開している、株式会社ピージェーエージェント代表取締役の加藤です。

今回は、「ストループ効果」という心理学用語をもとに、とある販売会社のウェブサイトの改善を行った実例についてお話しをします。ウェブサイトの構造やデザイン自体を変更するような大掛かりなリニューアルではなく、明日からすぐにでも改善に取り組むことができるような、具体的ポイントについて、解説いたします。

目次

ウェブページリニューアルの必要性があるか

販売事業を営んで創業8年になるA社。売上は毎年伸びており、業績も順調ではあるものの、さらに飛躍をするために、ウェブサイト、名刺、チラシ、封筒などのクリエイティブの印象をより良いものに改善できるポイントはないかというご相談をいただきました。

ご相談を受けて弊社では、まずA社のウェブサイトを閲覧してみました。商品やサービスの購入検討に必要な情報も十分掲載されており、お問い合わせ獲得までの動線や、コラムなどの情報提供コンテンツ掲載の仕組みなども一通り整っているようです。

全体の予算も限られている中で、ウェブサイトの構造やデザイン自体を変更するような、大掛かりなリニューアルをする必要性は、特に感じませんでした。

よく、部屋の模様替えのような感覚で、「そろそろ新しくしたいなぁ」と感じて、自社ウェブサイトのリニューアルをする企業もいらっしゃいます。もちろん、予算が豊富にあるような状況であれば、そのような感覚で楽しみながら定期的にウェブサイトをリニューアルするのも良いでしょう。

しかし実際、一般的な企業に豊富な予算があると言えるでしょうか?中小・ベンチャー企業にとってウェブサイトのリニューアルにかかる費用は、かなり大きい負担になります。そこで弊社では、もしリニューアルをする必要がない状況であれば、無理に実施せず、空いた予算を別の施策に回す方が良いと考えています。

では、リニューアル以外の施策を検討するための、心理的なヒントをお伝えしましょう。

ストループ効果とは

みなさんは、ストループ効果(Stroop Effect)という言葉をご存知でしょうか?「記載されている文字(情報)の意味」と「その文字(情報)の視覚的状態」に整合性が取れていない状況、ズレが発生した際に起こる現象です。このズレによって、脳が混乱し、適切な認知や反応をするのに時間がかかることを指す、心理学用語の一つです。

例えば、青色で書かれた赤という文字、赤色で書かれた黄という文字、緑色で書かれた青という文字、黄色で書かれた緑という文字を、左から順番にノートに書きます。そして、「赤、黄、青、緑」という順番で、声に出して読み上げていくという実験があります。有名な実験なのでご存知の方も多いとは思いますが、下の図で試してみてください。

実際にやってみていただくとわかると思いますが、かなり違和感があり、普通に読み上げるよりも時間がかかるはずです。青色で書かれた赤という文字を、とっさに「あお」と読んでしまった人もいるのではないでしょうか?これは、「記載されている文字の意味=赤」と「その文字の視覚的状態=青色で書かれている」にズレが生じているために、脳が混乱をして、適切な認知に時間がかかったためです。

ウェブサイトにおけるストループ効果

ストループ効果が起こると、人はストレスを感じたり、混乱したりします。企業のウェブサイトにおいては、このストループ効果をなるべく起こさないようにすることが重要です。

「ストループ効果」と聞くと、難しい専門的なことのように感じるかもしれませんが、要は「掲載している文字情報と、視覚的な状態(色や写真など)がズレないようにする」ということです。

A社においても、ウェブサイトの構造やデザイン自体を変更するような、大掛かりなリニューアルをするのではなく、「ストループ効果が起こらないように既存のウェブサイトを細かくチェックして、改善ポイントをつぶしていく」という改善を行っていきました。

さすがに、上記の実験のように、「青色で赤という文字を書く」というレベルのズレがあるウェブサイトはないとは思いますが、細かなポイントをチェックしていくと、実はかなり多くの改善ポイントが見つかる場合も少なくありません。

次に、具体的に改善を実施したA社の実例をご紹介します。

ストループ効果の改善例

文字のフォントに意味を持たせる

「真面目な内容が記載されているのに、文字のフォントに丸文字フォントを使っている」「親近感を持って欲しい内容が掲載されているのに、文字のフォントに明朝体を使っている」などのズレが生じているケースが少なくありません。

A社においても、ウェブサイトを作った際の担当者の気分で、なんとなく、明朝体やゴシック、丸文字などが混在している状況でした。また、太文字や下線などの強調についても特にルールがあるわけではなく、バラバラと使用されていました。

このような状況では、ウェブサイトの閲覧者は無意識のうちに混乱します。「このような内容を記載する場合にはこのフォントを使う」「このようなことを表現したい場合には、強調(太文字、下線)を使う」などのルールをきちんと整備して、そのルールに従った記載に改善しました。

色の持つ意味をウェブサイト内で統一する

色の持つ意味をウェブサイト内で統一するということも重要です。

A社では、いくつかの図や表などの挿絵を用いて、商品やサービスの説明をするようなページが、ウェブサイト内にいくつも存在していました。

「お客様」と「自社」を対比しながら、色々な説明を実施するような図表がいくつかあったのですが、それらの中でのお客様と自社に関する色使いが統一されておらず、それぞれの図表でバラバラになっているというような状況でした。一つ一つの図表を単体で見ている分には、大きな違和感はありません。しかし、いくつかの図表を見ているうちに、無意識に「お客様側は何色で、自社側は何色」といったイメージを作ってしまい、それらにズレが生じて違和感が発生します。

A社では、「お客様関連は黄色」「自社関連は青色」というような色使いのルールを統一して、そのルールに従った記載に変更するように改善を実施しました。また、「強調は赤色」「矢印などは緑色」というような細かな色使いのルールも整備して、徹底しました。

文章と写真の整合性を保つ

「気さくなスタッフ一同がお待ちしています」と書いてあるのに、掲載されている写真は店舗の外観だけで、スタッフが一人も写っていない。

「真面目で誠実な社員が丁寧に対応します」と書いてあるのに、社員の写真がスーツではなくカジュアルな服装で写っている。

「アットホームな雰囲気のセミナーです」と書いてあるのに、写真素材サイトから持ってきた、100名以上の大規模セミナーの素材写真を使っている。

「和気あいあいとしてチームワークが良い職場です」と書いてあるのに、社員が一人で机に向かって黙々と仕事をしている写真を使っている。

・・・など、掲載している文章と写真がずれてしまっているケースは本当に多いです。

写真素材サイトの画像などを使ってウェブサイトを制作したような場合には、特にこのような状況が発生しがちです。写真のクオリティ自体は、どれも悪くはないのですが、記載文章との微妙なズレによるストループ効果が発生してしまいます。

A社では、自社にプロのカメラマンを呼び、すべての写真を撮影し直しました。1日出張でプロのカメラマンが自社に来て撮影をしてくれるようなサービスもたくさんありますし、サイトリニューアルと比べれば、そこまで金額が高い訳でもありません。写真はウェブサイトの顔でもあるので、思い切ってすべての写真を取り直して、文章と整合性の保てる写真に変更するというのも良いかと思います。

企業としての信頼度に関わる重要なポイント

実は、ストループ効果に関する改善は、企業としての信頼度にも関わる非常に重要なポイントです。

人間は、「言っている事と、やっている事に整合性が保てている人」に対して、「信頼できる」という評価をします。逆に、無意識のうちに、記載されている内容と視覚情報にズレが生じると、「信頼できない」とか「説得力がない」とか「怪しい」などのネガティブな印象を持ちます。

いくら素晴らしいアピール文章が記載されていても、いくら素敵な写真が使用されていても、それらにズレが生じていると、ストループ効果によって無意識のうちに「何か信用ができない」となってしまうのです。

この「表現の一貫性」というのは、企業のブランディングにとって本当に大切なことです。ウェブサイト、名刺、チラシ、封筒などのクリエイティブを制作する際にも、一つ一つのクオリティを高めることだけに集中するのではなく、「一貫性を持って表現できているか」という点を意識して制作すると、企業としての信頼度を高めることができます。

あなたも上記の改善例などをヒントにして、自社のウェブサイト内で「ストループ効果」が起こってしまっている点はないかを確認し、改善してみてください。お客様からの信頼度の向上につながるはずです。

デジタルマーケティングを基礎から総合的に学ぶには

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この記事を書いた人

株式会社ピージェーエージェント代表取締役。中央大学理工学部卒業後、NTTコミュニケーションズ株式会社に入社。IT・WEBを活用したデジタルマーケティングに関する法人企業向けコンサルティング業務に従事。顧客の購買プロセスに基づいたマーケティングシナリオ設計、メールマーケティングを基軸としたCRMコンサルティング等、法人企業の売上向上に寄与するコンサルタントとして活躍。その後、2016年、株式会社ピージェーエージェントを設立、代表取締役に就任。ブランド戦略の立案を強みとして、ブランディング・マーケティングに関するコンサルティング事業を展開している。

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