問い合わせや資料請求を無駄にせず、売上を最大化するための業務設計の重要性とは

こんにちは。ブランディング・マーケティングに関するコンサルティング事業を展開している、株式会社ピージェーエージェント代表取締役の加藤です。

今回は、ウェブを活用した新規見込顧客を獲得するための仕組み作りの際に発生した落とし穴ついて、事例をご紹介します。営業リソースが足りない中小企業の場合は特に陥りやすいケースです。

最終的な目的である売上の最大化のためには、ウェブサイト上の工夫だけではなく、営業担当者一人一人を巻き込んだ業務設計が非常に大切であるという事例を元にしたお話です。

目次

見込顧客を獲得するためのウェブサイトへ

対面営業やアウトバウンドコールなどの営業力に絶対の自信を持っていた販売会社のA社。

将来的な収益拡大に向けて、従来の方法とは異なる新しい方法での見込顧客獲得の仕組みを考えたいということで、ウェブなどを活用したマーケティング戦略の立案で弊社にご相談をいただきました。

ご相談を頂いた当初、A社では自社ウェブサイトは存在していたものの、「見込顧客獲得」という観点ではまったく活用がされていない状態でした。中小企業のウェブサイトでは多いケースですが、お問い合わせフォームなどの見込顧客獲得の仕組みは特に設けておらず、ただ看板や名刺のようなイメージで「とりあえず作ってある(見せるだけ)」という状態でした。

そこで、まず弊社が行なったのは、「ウェブサイトは何のために存在するのか」ということを、A社の経営者様と認識を合わせるということでした。

ウェブサイトは看板や名刺とは違い、「見込顧客情報を取得するために活用できる仕組みなのだ」ということ、「企業におけるウェブサイトの役割」について、ご理解を頂きました。自社のウェブサイトの目的や役割を理解していないままにやみくもにサイト改善や施策を実施するのではなく、「見込顧客の獲得のためのウェブサイト」というゴールイメージを明確にした上でプロジェクトをスタートさせました。

この「ゴールイメージの明確化」は非常に重要なプロセスで、ここでしっかりと認識が合っていないと、「かっこいいウェブサイトにしたい」「最新の解析機能を具備したい」など、見た目や機能ありきの改修になりがちです。企業にとって、ウェブサイトはアート作品ではなく、マーケティング機能の担うひとつのパーツであるという認識を、経営者様とすり合わせをすることが重要です。

順調な滑り出しと落とし穴

その後、「見込顧客の獲得のためのウェブサイト」という目的に向けて、サイトの改修や各種施策を実施していきました。

具体的には、

  • 見込顧客情報を取得するための問い合わせフォームを作成し、フォームへ誘導するバナーをウェブサイトのヘッダー、フッターに常に表示することで、サイトに訪問したお客様をスムーズに問い合わせに誘導する
  • 無料でダウンロードできるお役立ち資料(PDF数十枚レベルのボリューム感)を用意し、それをダウンロードコンテンツとして、見込み顧客情報を取得する

……という、非常にオーソドックスな施策を実施しました。「電話以外の問い合わせ手段を設ける」「フリー(無料提供品)を使って顧客情報を取得する」といった、マーケティングを学んでいる方からすれば当たり前なことですが、今までそれらを行なっていなかったA社にとっては、十分に効果的な施策となりました。

また、ウェブサイトへの集客については、特にウェブ広告などは使わずに、まずは名刺やチラシ(DM)に目立つようにウェブサイトのURLを掲載したり、営業マンがお客様にお会いした際に、「ウェブサイトも見てみてください」と口頭でアピールをしたりなど、愚直な方法で徐々にウェブサイトの認知を高めていきました。

どれも目新しい華やかな施策という訳ではないですが、A社は今まで特に何も実施をしてきていなかったということもあり、上記に取り掛かってしばらくすると、徐々に問い合わせや資料ダウンロードで新規見込顧客情報を取得できるようになっていきました。「ウェブ閲覧者が、きちんと見込顧客として個人情報が判明した状態になり、企業からアプローチすることができる「見込顧客リスト」として、企業の財産として貯まっていく」……今までとはまったく異なる見込顧客獲得の仕組みができあがったことに、A社の経営者様は喜びと驚きの声をあげていらっしゃいました。きちんと各種施策の効果が現れ、順調に成果も出始め、弊社としても一安心でした。

当初の目的であった「見込顧客の獲得のためのウェブサイト」という目的は無事達成をし、一旦プロジェクトは経過観察に入りました。すべてが順調に滑り出したように見えたのですが、しばらくするとある問題が判明したのです。

見込顧客は増えているのに売上が上がらない!?

それは、「新規見込顧客は増えているのに、売上が上がっていない」という問題でした。

なぜ、売上が上がっていないのか?その答えは、お客様からの一本のクレームから判明しました。そのクレームは、「3日前にホームページから問い合わせをしたのですが、連絡が来ないのですが……」という内容でした。

そうです。A社では、せっかく入ってきた問い合わせや資料ダウンロードといった新規見込顧客に対しての営業アプローチがおざなりになってしまっていたのです。どこの会社も同じ状況だとは思いますが、A社も、「通常業務が忙しく、営業リソースが足りていない」という状態でした。日々の忙しい業務の中で、従来の方法とは異なる新しい方法で獲得してきた新規見込顧客への対応は、営業担当者の意識の中で優先度が下がってしまい、対応が後回しになってしまっていたのです。「そんな新しい仕事をやっている時間はない」「そんな新規見込顧客を相手にしても無駄だ」といったような意識が、どうしても営業担当者に芽生えてしまっていたのだと思います。

改めて最終的な目的を考え直す

営業担当者のマインドの問題と言ってしまえばそれまでですが、弊社やA社の経営者様の頭の中でも、「見込顧客の獲得」にばかり目が行きすぎてしまい、ウェブページ上でのコンバージョン(問い合わせや資料ダウンロードといった見込顧客情報の獲得)に意識が集中して、その後の業務の流れの設計に時間をかけていなかったということも、根本的な原因のひとつでした。

せっかく企業側で練りに練った戦略通りのシナリオでお客様が行動をし、ウェブページ上のゴールである問い合わせや資料ダウンロードが獲得できたにも関わらず、そのお客様に対して「どの営業担当者が対応するのか」「どのように対応をするのか」「いつまでに対応をするのか」といった業務フローを明確には定めておらず、営業担当者の判断に任せる要素が大きくなってしまっていました。その結果、問い合わせが来てから数日経ってから返答をしたり、ダウンロード資料を送りっぱなしにしてその後何も連絡をしていなかったりという事態が起きてしまっていたのです。

確かに、A社から弊社へのご用命の内容は、「新しい見込顧客獲得の仕組みを考えたい」というものでした。しかし、当然ながら本来の目的は「見込顧客を獲得すること」ではなく「売上を伸ばすこと」です。いくら見込顧客が増えたとしても、その先に売上につながらなくては何も意味がありません。

売上につなげるための仕組み作りの重要性

営業リソースが足りない中小企業の場合は特に、このような落とし穴はよくあるケースなのではないでしょうか。しかし、そんな中小企業だからこそ、1件の問い合わせ、1件の資料ダウンロードの重みは相当なものだと強く認識しなければなりません。対応が遅いことでビジネスチャンスを失っていては非常にもったいないですし、逆に対応の悪さからクレームや悪評にさえつながりかねません。

A社においては、大至急で営業業務フローの設計に取りかかりました。営業担当者全員を集め、ウェブサイトでの認知から、問い合わせや資料ダウンロードの実施、その後の商談といった、受注までの一通りの流れ(カスタマージャーニー)について、徹底的に議論を重ねました。

ウェブサイトから問い合わせをするお客様はどのような心理状態にあるのか、資料をダウンロードしてくれたお客様はどのようなことに困っているのか、それらの見込顧客への営業対応は受注までの全体の業務の中でどのような意味があるのかなど、お客様心理や全体の流れについて時間をかけて整理しました。それらを「ウェブからの問い合わせや資料ダウンロードに対しては、このように対応しよう」という業務マニュアルに落とし込んでいきました。

ただ単に業務マニュアルを作成しただけでは、各営業担当者への浸透は見込めません。時間をかけて全員で考え、その業務の目的、意味を理解した上でマニュアル化することが大切です。

今では、ウェブからの新規見込顧客による売上がA社の全体売上のうち約2割を占めており、A社のビジネスとって非常に重要な役割を担っています。営業業務フローも含めた確固とした一連の基盤ができあがったので、今後はウェブ広告なども活用しながら、さらなる新規見込顧客の獲得に向けた集客施策も展開をしていく予定です。

「ウェブからの見込顧客の獲得」に取り組もうとされている企業様は、必ずその後の営業業務設計まで含めて、戦略的に取り組むことが大切です。営業担当者一人一人が、獲得した見込顧客への対応業務について、お客様心理や全体の流れを理解した上で納得して対応が行えるようにすることも意識して、業務設計を行ってみてください。そうすれば、御社の売上に寄与する新たなチャネルのひとつとして、きっとウェブサイトを有効に活用できることでしょう。

デジタルマーケティングを基礎から総合的に学ぶには

Google アナリティクスをはじめとしたGoogle系のツールは、その使い方を知ることも大切ですが、使うための戦略や設計が必要です。それは、ビジネスに成果をもたらすために必須の考え方です。

ウェブ解析士協会では、このようなデジタルマーケティングの基盤となる「ウェブ解析」を体系的に学べる環境と、知識・技術・技能に一定の評価基準を設け、あらゆるデータから事業の成果に貢献する人材を育成しています。

業務設計

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この記事を書いた人

株式会社ピージェーエージェント代表取締役。中央大学理工学部卒業後、NTTコミュニケーションズ株式会社に入社。IT・WEBを活用したデジタルマーケティングに関する法人企業向けコンサルティング業務に従事。顧客の購買プロセスに基づいたマーケティングシナリオ設計、メールマーケティングを基軸としたCRMコンサルティング等、法人企業の売上向上に寄与するコンサルタントとして活躍。その後、2016年、株式会社ピージェーエージェントを設立、代表取締役に就任。ブランド戦略の立案を強みとして、ブランディング・マーケティングに関するコンサルティング事業を展開している。

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