江戸時代の商人に学ぶ、顧客台帳の重要性。生け簀に餌をまいて自社ブランドのファン化を促進し売上が倍増した事例

こんにちは。ブランディング・マーケティングに関するコンサルティング事業を展開している、株式会社ピージェーエージェント代表取締役の加藤です。

今回は、建築材料の卸売業を営むBtoB企業のコンサルティング事例をご紹介します。

今まで無駄にしてしまっていた顧客リストを蓄積する仕組みを整え、自社のブランドアイデンティティを明確にした上で、顧客の求める情報を定期的に提供することで自社ブランドのファン化を促進し、新規顧客からの売上のみに依存した体質から脱却したというお話です。

目次

ビジネスにおける顧客リストの重要性

建築材料の卸売業を営むA社。ニッチな商品かつ、ライバルも比較的少ない状況の為、安定した業績を維持できていました。しかし、今後さらに売上を増やし発展していくために、何か新たな戦略を考えたいということで、弊社にご相談を頂きました。

A社は15年以上の歴史をもつ優良企業です。経営者様とお話しをする中でも、自社商品への愛情と自信をひしひしと感じました。しかし、戦略立案のために何度もお打ち合わせを重ねる中で、だんだんとA社の問題点が見えてきました。それは、「顧客リストを蓄積していない」ということでした。

過去の販売情報や名刺などは、まったく整理をしていない状態で、むしろ「個人情報を持っているのは気持ちが悪いので、一定期間経ったら顧客情報は破棄している」とのことでした。

江戸時代の商人は、火事になっても顧客台帳だけは抱えて逃げたといいます。それだけ、ビジネスにおいて顧客リストというのは重要だったことがわかります。私は、経営者様に顧客リストの重要性をご説明し、「今すぐ顧客リストの作成に取り掛かってください」と強くお伝えしました。

一本釣りよりも養殖の方が効率的

すぐに顧客リストの作成に取り掛かり、過去の販売情報や名刺などを整理し、数千件の顧客リストが集まりました。これは、今までA社の商品を購入してくれたり興味を持ってくれた、「ファンの生け簀」ともいえます。

一度A社と接点を持ったお客様は、一見さんである初めてのお客様よりも、商品を購入してくれる確率が高いのは、当然と言えば当然の話です。

マーケティングの世界には、「1:5の法則」というものがあります。新規顧客に対して商品を販売する労力は、既存顧客に対して商品を販売する労力の5倍であるという法則です。常に新しいお客様を一本釣りすることを狙うよりも、今までのお客様を養殖して育てた方が、明らかに効率的だということです。

しかし、A社の経営者様は顧客リストの作成当初はまだ半信半疑で、「うちは建材を扱うBtoB企業だからねぇ」とおっしゃっていました。アパレルブランドやホテルなどのBtoC企業においては、顧客リストを作ってDM送付や割引キャンペーンメールなどを送るというイメージはつくものの、BtoB企業における顧客のリスト化については、まだあまり腹落ちしていないご様子でした。

生け簀にどんな餌を撒けばいいのか

確かに、A社は建材を扱うBtoB企業です。顧客リストに対して、BtoC企業のように、「今だけ何%割引キャンペーン」とか「今シーズンのおすすめ新商品」といったようなプロモーションを打つことは、現実的ではありません。

そもそもBtoB企業においては、商品の購入検討期間や再購入サイクルが長いため、「今すぐに買ってください」とプロモーションをしたところで、あまり意味がありません。むしろ「押しが強い」という印象を与えてしまい、逆効果ということもありえます。

では、A社の場合は、顧客リストに対してどのようなコミュニケーションをとっていくべきなのか。弊社では、まずはA社のブランド戦略を立案するところからコンサルティングを始めました。

自社のブランドアイデンティティと顧客の求める情報を明確にする

ブランド戦略を立案するために、まずはブランドアイデンティティを明確にし、顧客の求める情報は何なのかを明確にしようと考えました。ブランドアイデンティティとは、「自社が顧客からどのように思われたいのか」を明確にしたものです。

競合他社と比較した際に、「自社の特徴は何なのか?」「なぜ、今までお客様から選ばれてきたのか?」ブランドアイデンティティを明確にするために、何度も議論を重ねました。その結果、「圧倒的な技術力や品質を保ったプロフェッショナル」というA社のブランドアイデンティティが徐々に明確になっていきました。

そして、次に顧客の求める情報は何なのかを整理していきました。企業側から一方的に「うちの会社は他社よりこんなに技術力が高いです」「うちの会社の商品はこんなに品質が良いです」とメッセージを押し付けたところで、お客様はそんな情報は求めてはいないはずです。

お客様が求める形で自社のブランドアイデンティティを訴求するためには、どのようなコミュニケーションをとるべきなのか?その解決案として、弊社では「該当建材を利用して実際に施工をする際の注意点や、建材の保管方法、取り扱いに関するTipsなどを、詳細に情報提供する」ということを考えました。

単純に商品の良さをアピールするのではなく、その建材を使用する過程でお客様が知りたくなるであろうお役立ち情報を提供することで、「技術力の高いプロフェッショナルである」というブランドアイデンティティを表現すると共に、顧客満足の向上によるファン化の促進ができると考えたのです。

定期的な顧客へのコミュニケーションがもたらす効果

早速、A社の技術者にコラム形式でいくつかの文章を作成してもらいました。必要に応じて写真や動画なども使いながら、お客様が知りたくなるであろうお役立ち情報をきめ細やかに解説をしたものです。その建材のプロでなければ気づかないポイントなども織り交ぜながら、「本当にお客様の役に立つ情報」を強く意識をして丁寧にコンテンツを作成していきました。そして、2週間に1回程度の頻度で、そのコンテンツをメールで顧客リストに定期配信していったのです。

すると、なんとメールの配信開始から2ヶ月で、該当顧客リストから数十件の注文が入ったのです。これらの注文は、もし今回の施策を実施していなければ獲得できていなかったものです。A社が今までまったく掘り起こしてこなかった、まさに新しい販路が開拓された瞬間でした。

顧客をリスト化するための仕組みづくり

顧客リストを蓄積し、定期的にコミュニケーションをとることの威力を体感したA社は、その後すぐに、弊社と共に顧客をリスト化するための仕組みづくりに取り掛かりました。

具体的には、今まで電話番号とFAX番号のみを掲載していたホームページを改修し、問い合わせフォームを設け、その顧客情報がリストとして貯まる仕組みを早々に構築しました。

加えて、販売時の顧客情報や名刺などについても、定期的にまとめてデータ化をして、一元的に顧客リストとして蓄積する運用体制と仕組みを作っていきました。

当然のことですが、A社の顧客リストは今も拡大をし続けています。もちろん、生け簀の中にいる魚の鮮度は考慮する必要がありますが、単純にいえばA社がビジネスを続ける限り、この生け簀の大きさはどんどん拡大をしていきます。

「企業としての中長期的な視点で考えると、このタイミングで顧客リストの重要性を理解して仕組みを作れたことには、非常に大きな意味がある」とA社の経営者様はおっしゃっています。

当たり前すぎて見落としてしまいがちな大切なこと

「既存のお客様を大切にする」ことは頭では分かっていても、A社のようにきちんと顧客をリスト化して、定期的にコミュニケーションを取りながら、生け簀に餌を撒いている企業は、実は少ないのではないでしょうか?

「新しいお客様を獲得してこそ商売だ」と考え、新規顧客獲得にばかり、時間やお金などの労力をかけ、既存顧客の扱いをないがしろにしていませんか?

既存のお客様が求める情報を、真摯に提供していけば、それは必ずお客様の心に響きます。そして、自社のファンになってくれたお客様は、商品やサービスの購入だけではなく、周りへの口コミによる販売促進など、企業に対して大きなメリットをもたらしてくれます。

新規顧客からの売上の伸び悩みを感じている方は、ブランドアイデンティティを明確にした上で、顧客が求める情報が何なのかを整理し、顧客リストに対して定期的にコミュニケーションをとることを試してみてはいかがでしょうか。

デジタルマーケティングを基礎から総合的に学ぶには

Google アナリティクスをはじめとしたGoogle系のツールは、その使い方を知ることも大切ですが、使うための戦略や設計が必要です。それは、ビジネスに成果をもたらすために必須の考え方です。

ウェブ解析士協会では、このようなデジタルマーケティングの基盤となる「ウェブ解析」を体系的に学べる環境と、知識・技術・技能に一定の評価基準を設け、あらゆるデータから事業の成果に貢献する人材を育成しています。

顧客台帳

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この記事を書いた人

株式会社ピージェーエージェント代表取締役。中央大学理工学部卒業後、NTTコミュニケーションズ株式会社に入社。IT・WEBを活用したデジタルマーケティングに関する法人企業向けコンサルティング業務に従事。顧客の購買プロセスに基づいたマーケティングシナリオ設計、メールマーケティングを基軸としたCRMコンサルティング等、法人企業の売上向上に寄与するコンサルタントとして活躍。その後、2016年、株式会社ピージェーエージェントを設立、代表取締役に就任。ブランド戦略の立案を強みとして、ブランディング・マーケティングに関するコンサルティング事業を展開している。

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