資格取得後のキャリアを考えてみよう。ウェブ解析士マスター、寺岡 幸二さん

「仕事とウェブ解析士」をテーマにお送りさせていただくウェブ解析士インタビュー。22人目は、ウェブプラ合同会社の寺岡 幸二さん。2019年1月にマーケター向けの講師活動を主な事業とする合同会社を設立し、キャリアとスキルの両面から人材教育のコンサルティングをされています。

ウェブ解析士講座のカリキュラム作成に携わり、ウェブ解析士が学ぶ知識と経験について考えられてきた寺岡さんに、これまでのキャリアに囚われない資格の活かし方について伺いました。

(インタビュー・編集:ライター ふじねまゆこ)

ウェブ解析士マスター 寺岡 幸二
写真:ウェブ解析士試験対策1 イントロダクション:日経クロストレンド

スキルの棚卸しと、なりたい自分像を描く

まず自己紹介と主な活動について教えていただけますか?

インターネットに関わりだした経験からお話するとパソコン通信の時代まで遡りますが、2004年から本格的に仕事としてウェブマーケティングの仕事を始めました。ウェブ解析士マスターを取得したのが2011年で、以降、広告会社でウェブコンサル部門を立ち上げたり、子会社を作ったりした後、講師活動に専念したいと思って2019年1月にウェブプラ合同会社を立ち上げました。企業のウェブコンサルタントをしながら、ウェブ解析士の法人研修などをしています。

会社立ち上げから約1年ですが、どういった事業を展開されていますか?

まだまだウェブコンサルとして動いてることのほうが多いですが、マーケターの人材育成って未完成な領域だと思っていて、そこのニーズを汲み取り、人材育成をメインでできたらいいなという状況です。

「マーケター」というと幅広い業種で必要とされる職種ですが、業種を絞っていらっしゃるのでしょうか?

僕の経験はウェブマーケティングを中心に、多ジャンルのマーケティングや会社経営など浅く広く携わっているので、対象はあまり絞っていません。ビジネスフレームワークを使って戦略を立てたり、コンサルティングをしたりしていて、どちらかと言えば戦略側の話が得意ですね。人材系の経験が長かったこともあって、マーケターのキャリアをどう考えたら良いかみたいなことも伝えてたいと考えています。
広告業界の一部には、広告運用のことだけやって「マーケターです」と語る人もいらっしゃいますが、もったいないなと思っていて。もうちょっと広い視野を持って実績を上げれば価値が上がるのにと。そういう視野を広げるきっかけを生み出したいですね。

確かに、最初の業界経験がその人のベースになるので、視野を広げるきっかけが欲しい方の需要が高そうです。

マーケティングは一言でまとめるには範囲が広いので、自分が今持っているスキルのことや、どの領域でどう活躍したいか描く方法って意外と知らないと思うんです。いくつか記事にしてまとめているので、よかったら参考にしてみてください。
「1万時間の法則」という話はご存知ですか?ざっくりといえば、ある分野の「天才」がそのスキル習得にかかった時間は「1万時間」だという研究結果です。じゃあ、マーケターが「1万時間」使ったら、どういう人になれるんだろう?そんな事を考えて書いた記事がこちらです。まだ改良の余地がありますが。

1万時間の内訳まとめました→スキルマップ作った。
1万時間の内訳まとめました→スキルマップ作った。
WEBPLA[ウェブプラ]|マーケターのキャリアノート

これすごく面白いですね!ゲームでよくあるスキルシステムみたい。

できるだけ細かい要素で分けて、分野ごとにグルーピングしました。業務でよく発生する調整や根回しはスキルと言えるのか微妙なので省いています。どの領域に自分のスキルが分布してるか見て、このあとどういうキャリアをたどりたいのか考えるときに使えると思います。

ウェブコンサル、制作、広告代理店など、いろいろな立場の方の指標になるスキルマップですね。

とはいえ、みんながスキルをもって自分の価値を上げ、独立できることが目的かと言うとそうでもないなと思って、もう一つこちらの記事を書きました。

キャリア・アンカーとは?8つの分類でキャリアをイメージする
キャリア・アンカーとは?8つの分類でキャリアをイメージする
WEBPLA[ウェブプラ]|マーケターのキャリアノート

キャリア・アンカーという言葉があってですね。要はなりたい自分像をはっきりさせて、そのスキルをどう活かすかみたいな話ですね。ウェブ解析士マスター講座でも「マスターをとってどうなりたいですか?」という話を必ず一番初めにするようにしています。マスター講座ってプロフェッショナルになりたくて来る方が多いですが、全員が全員プロになればいいかというと、そうではないですよね。ワークライフバランス重視の方や、チームサポーター的な立場の方もいらっしゃる。自分の目指すイメージを、現在持っているスキルの棚卸しをしながら、見定めてから進めば迷うことはないですよね。

自分の人生で重視したいことを立ち止まって考えてみるわけですね。ウェブ解析士でいえば、上級、マスター、どこまで受講したらいいか迷う場面もありそうです。

上級ウェブ解析士講座まで受ければ、ある程度の実務スキルは身につけられます。じゃあマスターは?ってなったときに、これまでは講師資格の取得がメインだったんですが、今後は講師活動に加えて、各地域のウェブ解析士コミュニティを引っ張っていける存在になってほしいという話はしています。企業という枠組みは関係なく、時にはマスター、上級、ウェブ解析士という上下関係を感じないフラットにつながるコミュニティ。その中心にマスターが立ち、ウェブ解析士同士が情報共有しながら、地域に根ざした良いマーケティングができる形を作りたいなと。資格取得後のフォローアップ講座でも、「これからはコミュニティの価値をつくっていきたいので、ぜひみんなで横のつながりを大切にしていきましょう」と、マスターの方々にもご協力いただいているところですね。

WACAコミュニティのあり方【案】
ウェブ解析士コミュニティのかたち

地方は特にそうですが、周りにウェブ解析士を持った方が少なく、イベントも無い地域もあって孤立しがちですから、今後がとても楽しみになりました!

実務で資格を活かす近道は、講座で覚えたことを1つずつやってみる

寺岡さんは日経クロストレンドでウェブ解析士認定講座の連載をされていますよね。

ウェブ解析士 認定試験対策講座
ウェブ解析士 認定試験対策講座
日経クロストレンド

全22回(1回目のみ無料公開、2回目以降は会員限定コンテンツ)が公開されています。受講を検討されている方や独学で受験予定の方にとって嬉しいコンテンツですね。

以前のウェブ解析士認定講座はだいたい4時間位で終わっていたのが、今や5~6時間やってたりするんですね。この連載ではポイントをギュッと凝縮して、要点の細かいところまで説明できているかなとは思っています。

講座時間が増えたのは最近ですか?

去年のテキスト大改訂によるボリューム増に加えて、未経験の方の受講が増えてきていることも時間が長くなった要因かなと思われます。以前はウェブ関連の経験を3~4年積んでいる方が、肩書を目当てに受講するケースが多かったのですが、今は新入社員向けの受講がだいぶ増えてきてですね。前提になる知識や経験が無い方を想定しています。

動画講座の内容はウェブ解析士の範囲ですよね。上級はもっと範囲が広がりますか?

ウェブ解析士と上級ウェブ解析士で、カリキュラムの範囲に差はつけないようにしています。ウェブ解析士で知識を情報として覚えてもらい、上級では初級で覚えた知識を活かして経営やビジネス全体に活かす方法を学ぶという連続性を大切にしたいと考えています。

ウェブ解析士の知識を身につけて、いざ仕事で成果を出そうと思ったときに一番必要なことは何でしょうか?

覚えたことは次の日に実践してほしいです。まとまった体系を全部実務に置き換えようと思うと難しいと思いますから、気になったことを1つずつ試してみてください。実務はイレギュラーが多いですし、業界特性や企業特有のルールがあると思うので、ウェブ解析士の知識を実務の全てに当てはめるのは難しいでしょう。全体像を捉えてほしいところもありますが、覚えたことは使わないと1~2週間くらいで忘れるんで。やると決めたらすぐやるのがベスト。

確かに業種や会社によって試せない項目はありそうですが、できることはありそうです。

それこそ上級のレポートは範囲が広いです。SEOやマーケティングの計画書なんかも作成します。マーケティングの戦略面を新たに考え直す機会は、経営者層や専門部署でない限り少ないと思うんですけど、独自でターゲットを新しく見直してみたいなら使ってみてもいいでしょうし。ピンポイントでSEOの効果をレポーティングしてみたいなら、そこの部分だけ切り取って使ってみるのもいいでしょう。

新卒社員は成長の近道に、ベテラン社員は視野を広げるきっかけになる

ウェブ解析士マスターを取得して、よかったことはありますか?

僕は福島県いわき市出身で、2011年の東日本大震災がきっかけでマスターを取得しました。震災後、みんな仕事に困っていました。その人達がIT系の知識を身につけることで、それまでの経験との掛け算で新たな仕事ができるならば、そういう手助けができないかなと思って講師を始めたんです。しかし僕は地元から離れていたので、いきなり故郷へ帰っても自分の名前だけでは不審がられてしまうでしょう。多くの人が想像しやすい名称で自分を語れるようになるのは確かだと思います。

それに加えて、先程お話した地域ごとのコミュニティによる横のつながりは、大きなメリットになると思います。最近は様々な知識を持ったウェブ解析士が増えていて、人工知能系の機械学習をされている方や、経営コンサルタント、グローバルで活躍する方が視点を広げるために資格を取得されています。視点が全然違う人とつながるので、話をしていて面白いなと思っていて。そういう人のつながりが一番の価値かなという感じはありますね。

まだまだITにハードルを感じる経営者や自治体が多いです。そういった方が興味を持ったときの受け皿にウェブ解析士のコミュニティがなり得そうですね。

新型コロナウイルスによって外出自粛が求められている状況ですので(2020年4月8日取材時点)、みなさんオンラインのあり方とか考え直している局面ですよね。ニーズや課題はあると思います。

違いないですね。新型コロナの影響はおそらく長期にわたるでしょうから、テレワーク等の導入でウェブを使うことがさらに重視されそうです。
ちなみに、セミナーなどでお話されている定番の話などありますか?

人材業界にいる期間が長かったので、スキルよりもキャリアに関する話をよくしますね。どうして学びたいのか、この先どうなりたいのかを考えることのほうが大事だと思っています。実は、教えることよりも、生徒の方から教えられることのほうが多いかもしれません(笑)。もともと勉強会を開くことのほうが多く、先生と生徒の関係よりもフラットに教え合うスタイルのほうが好きだなと思っていて。教壇に立ってただ教えてるのってそんな好きじゃないんですよね

ベテランも新人もお話できる勉強会のほうが私も面白く感じます。
寺岡さんが事業でされているマーケター向けのイベントは、勉強会に近しいものですか?

去年からバタバタと忙しくてできてなかったんですけど、以前は勉強会ばかりでしたね。8割~9割が勉強会でした。だから僕も先生をしつつ、参加者にもお願いして先生をやってもらって、月1くらいで勉強会を回していましたね。

どういった業種の方が多かったですか?

その時は開発系、エンジニアの方が多かったです。実はマーケ系の方はあまり来なくて、デザイナーとか制作者がマーケターの知識を身に着けたいという方が多かった印象ですね。有名な有識者の方が教壇に立って大勢に向かって話すセミナーよりも、グロースハック勉強会みたいなものをやってたほうが、面白い人を多く集められるし活発な意見が飛び交う様子を身をもって体感していました。

マーケターの知識を取り入れることで視野が広がり、エンジニアで培ったPDCAサイクルを活かせば、経験を積むのにすごく良い組み合わせですね!マーケターとしてお仕事をされている方にとっては、エンジニア的な思考に触れて視点が広がりますし、 新卒の時点でウェブマーケティングの基礎知識とPDCAを回す習慣が得られれば、どんな業界出身でも重宝される人材に成長しそうですね。貴重なお話をありがとうございました!

あとがき

インターネットが生活インフラのように利用されているにも関わらず、ITにハードルを感じる方はまだまだ多く感じます。新型コロナによる外出自粛を契機にテレワーク環境の導入や仕事効率の見直しが全国的に進むなか、ウェブ解析士の知識とコミュニティに可能性を感じるインタビューでした。

ウェブ解析士の資格取得を目指す方へ

寺岡さんが講師を務める日経クロストレンドの「ウェブ解析士 認定試験対策講座」がおすすめです※。
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2020年版、ウェブ解析士公式テキストとあわせてご覧いただくことで、ウェブ解析士認定試験のポイントを押さえることができます。