IPv6の最新事情とIPv4とIPv6におけるジオロケーション情報の差異

IPv4とIPv6のイメージ

こんにちは、株式会社Geolocation Technologyの小針将史です。国内では数少ないIP Geolocation情報のベンダーとして、日々IPアドレスを眺めています。

今回は、いよいよ今年は普及するぞ、と業界ではずっと言われ続けているIPv6の最新事情と、ウェブ解析でも重要な要素となるIPv4、IPv6におけるジオロケーション情報の差異について説明します。

IPv6アドレスについて

インターネット上の住所と言われるIPアドレスには、IPv4アドレスとIPv6アドレスがあります。インターネットの普及により、IPv4アドレスでは足りなくなることが想定され、後継として考えられたものがIPv6アドレスです。

それぞれの数は、IPv4が232=約43億個、IPv6が2128=3.4×1038個(参考:340兆 × 1兆 × 1兆)となり、IPv6であれば、世界の人口(77億人:2019年)と比較しても十分に余裕があることがわかります。

足りないならすぐに移行しよう、と思うかもしれませんが、IPv6は後継とは言うものの、IPv4とは互換性がなく、単純に置き換えることはできません。場合によっては、ハードウェアのリプレースが必要にもなってきます。なぜ、互換性がないの?と思うかもしれませんが、これは、世界中の人々が話し合って、IPv4の問題を改良しながら、IPv6の仕様を作り上げた結果です。背景を話すと話は尽きないので、ここでは割愛します。

ユーザPCのIPv6アドレスの普及状況

インターネットプロバイダ(ISP)においては、IPv4とIPv6の互換性がない中で移行を進めるにあたり、現行のIPv4の環境にIPv6も利用できる環境を追加するデュアルスタックと呼ばれる方法が主にとられており、IPv4とIPv6の両方でアクセスができるようになっています。両方での通信が可能である場合、IPv6を用いた通信を優先する仕組みです。他にもIPv4とIPv6の共存技術がありますが、ここでは割愛いたします。

GoogleやFacebookは自社のサービスがIPv6アドレスでアクセスされている割合を公開しており、2020年7月時点でGoogleの統計では34.16%(https://www.google.com/intl/ja/ipv6/statistics.html#tab=per-country-ipv6-adoption)、 Facebookの統計では40.89% (https://www.facebook.com/ipv6/?tab=ipv6_country)となっています。ちなみに当社のサービス(https://www.iphiroba.jp/)でもウェブビーコンを用いて、IPv6アクセスがどの程度あるかを確認したところ、25.87%でした。このことから、日本国内では30~40%程度のユーザがIPv6でアクセスできる環境が整っているとみて良いと考えられます。ちなみに、自身の環境がIPv6による通信かどうかは、https://test-ipv6.com/index.html.ja_JP で確認できるので、興味がある方は試してみてください。

次は、アクセスされる側であるウェブサーバを運用する側の対応状況に目を向けます。

ウェブサーバのIPv6の普及状況

IPv6で通信を行うには、ユーザのPCからコンテンツが配信されるウェブサーバまでの経路すべてでIPv6へ対応が完了している必要があります。具体的に挙げると、ユーザPCのOS、家庭に設置しているルータなどの設定、ISPのインフラ、アクセス先のウェブサーバとそのネットワーク、OSのすべてがIPv6へ対応が完了している必要があります。OSについては、現在サポートされているほとんどのOSはIPv6に対応しているので問題ありません。ルータ等のネットワーク機器についても同様です。

問題は、アクセスされるウェブサーバです。ウェブサーバを運営するコンテンツ事業者側から見てみると、現状、IPv4だけですべてのインターネットユーザにリーチできるわけですから、追加でIPv6に対応する場合、使われるかわからないIPv6のための管理運用コストが発生してしまうという状況です。この状況がここ数年ずっと続いており、なかなか普及が進んでいません。実際日本の主なサイトがIPv6対応できているかを公開しているサイト(https://www.vyncke.org/ipv6status/detailed.php?country=jp)によると、国内のTOP100のサイトのうち、13(9月5日現在)サイトしかありません。こういった状況により、IPv6アドレスはこのまま普及しないんじゃないか、と揶揄されることもあります。

コンテンツ事業者側にはIPv6に移行することで、これといったメリットがないだけでなく、ウェブ解析に有用なジオロケーション情報がIPv4と比べて十分ではなく、移行することで同等の情報の取得や情報の利用ができなくなるというデメリットもあると考えられています。次はIPv6を取り巻くジオロケーション情報事情について、説明します。

ジオロケーション情報について

ジオロケーション情報とは、ユーザの位置情報を識別する技術のことで、GPSやIPアドレス、Wi-Fiなどの電波強度などから取得できます。ここではIPアドレスからジオロケーション情報を取得するIP Geolocationについて述べます。IP GeolocationはGPSほど位置情報の正確さはないものの、端末側の操作の必要がないことや、位置以外のIPアドレスに紐づいた組織や回線情報など多様なデータを取得できることが特徴です。最近ではGoogle Analyticsでネットワークドメインが取得できなくなったことの代替技術にもなり、さらに注目されています。

IPv4とIPv6のジオロケーション情報の差異

IP GeolocationはIPアドレスの登録状況やインターネット上での使用状況を調査、分析、統計をすることで地域情報、組織情報、接続回線(光回線、ケーブルテレビ、モバイル回線など)の属性を定めています。そのため、普及度が高くなければ、属性の特定が難しい面もあります。こういった事情により、IPv4アドレスとIPv6アドレスでは、取得できる属性の種類は同じものが取得できるものの、その質が異なります。

地域情報については、国レベルであれば同等の水準、都道府県以下ではIPv6はまだIPv4と同じ水準とは言えない状況です。IPアドレスはインターネット全体で共有する資源のため、利用するエリアは管理されています。その管理の単位はおおよそ国であり、IP Geolocationでの国判別はその管理情報をもとに定められるため、IPv4とIPv6は両方同等の情報が取得できます。国以下の都道府県、市区町村については、国内ISPそれぞれのIPアドレス管理事情とインターネット上で利用されているIPアドレスを調査、分析、統計することにより定められています。そのため、流量の違うIPv4、IPv6では、IPv6のIP Geolocation情報が劣っているというのが現状です。回線の情報の質も地域情報と同様の理由で現状ではIPv6の方が劣っていると言えます。

組織情報については、IPアドレスやドメインの所有者を検索できるWHOISというサービスをもとに定められることが多いので、WHOISに登録されている量が大きく影響します。国内のWHOIS情報登録数は、当社の調べでは、2020年7月現在でIPv4の登録数は60,035件、IPv6での登録数は 1,698件と大きく違います。このことより、組織については、IPv6の導入はまだまだ進んでいないと考えられます。IP Geolocationベンダーそれぞれに独自の調査を行っているので、この数がそのまま反映されるわけではないですが、組織がIPv6を導入していないのであれば判定できるはずもないので、組織情報についてもIPv6が劣っているという状況です。

まとめ

  • IPv4とIPv6は互換性がなく、単純な置き換えはできない。
  • IPv6をユーザが使うためのインフラは整ってきているが、実際にインターネット上で利用できるユーザはまだ3~4割程度。
  • コンテンツ配信側から見れば、IPv6対応はコスト増とデメリットが多いため、なかなか進んでいない。アクセスTOP100のサイトでも1割強しか対応していない。
  • IPv4とIPv6でのIP Geolocation情報を比較すると、地域情報、組織情報、回線情報などすべてにおいて、まだIPv6アドレスが劣っている。

著者:小針 将史

小針さん

株式会社Geolocation Technology 技術開発部 課長、ウェブ解析士マスター
ログ解析ツールの開発などを経て、IP Geolocation API「どこどこJP」、IP Geolocation Technology 「SURFPOINT」、DSPサービス「どこどこad」の責任者。ウェブ解析をやるときは、まずIPアドレスに着目する。

https://www.geolocation.co.jp