スタートラインが盲点! 収益モデルを把握して事業にインパクトのある成果に導くポイント

スタートラインが盲点!収益モデルを把握して事業にインパクトのある成果に導くポイント-01

こんにちは。食品製造業・飲食業の商品開発・企画担当者向けに人材育成、コンサルティングを行っているフードドラマ研究所所長の関原雅人です。ウェブ解析士マスターです。

また行政の支援機関の経営相談窓口にて、5年間で3,300件以上の相談対応を行っています。

今回は小規模事業者・中小企業の経営相談の経験から、ウェブ解析士として事業の成果を導くために最も重要と考えている「企業概要の把握」「収益モデルの把握」についてお伝えします。

その担当者、盲点の渦中につき

ウェブ解析士としてクライアントを「事業の成果」に導くため、担当者にヒアリングを行い、データ収集や戦略の構築のため環境分析(PEST分析や3C分析等)を取り組みながら、情報を整理される方が多いのではないでしょうか。

実はこのスタートラインの段階で、重要な情報が欠落するケースがあります。

  • 情報が欠落するとは、どういうこと?
  • ヒアリングをしっかりしているのに、そんなことはないはず?

そう感じられた方もいるのではないでしょうか。

実は担当者が自社の収益モデルを把握していない、所属部門の業務だけしかわからない、また経営者も経理部門に収益の数字を任せていて把握できていないといった話はよくあることです。

これらの話は私が5年間、経営相談業務に従事し、よく驚かされたことのひとつです。

「担当者や経営者が情報を把握している」という先入観に惑わされてはいけません。

ウェブ解析士でいう「事業の成果」に貢献するには、経営全体に視野を広げる必要があります。環境分析に入る前段階で「企業の現状把握」を理解している担当者、経営者から正確な情報を収集する、不足していればわかる担当者を交えて、不足部分を肉付けして情報を整理する必要があります。

このスタートラインが盲点で、見誤ると戦略の根底が揺らぐことになります。

なぜ、この盲点に気づかないのか、見落としてしまうのかの2点を説明していきます。 

経営者のスピード感と場当たり感は紙一重

1つ目は経営者の行動に合わせて、私たちが行動を起こしてしまう点です。

スピード感のある経営者は、戦略や戦術を実行プランに合わせて次々と打ちだし、大きく前進する傾向があります。その情報は得か損か、あるときは場当たり的でアクションプランが乱立します。

たとえば経営者が知人から、「コロナ禍でお客様の来店が絶望的になったが、ネットショップで売上を維持できた、絶対やったらいいよ」と聞くと、弊社でも取り組みたいと唐突にスタートします。ウェブ担当者はトップダウンで指示された業務に取り組み、ネットショップの新規開設や改善の取り組みを行います。ここでウェブ解析士に相談される案件が発生してきます。

ウェブ解析士はこの状況が「事業の成果」とどう結びつくのかを再考する必要があります。

もともとクライアントの事業がBtoB向けであり、唐突にわいたネットショップがBtoC向けで売上を伸ばそうとしているなら、事業の転換を確認していきます。

事業のインパクトは、新規のBtoCを行うより、本来のBtoBの事業を伸ばすほうが収益性は高いです。BtoBのオンライン商談や成約につながるコンテンツ、情報発信を強化することが有効ではないかと提案することもできます。

「企業の現状把握」で従業員数を把握していて、コンシューマー向けであるため、お客様からの問合せが増えることを想定していれば、自社で対応できる人員が不足することを説明することが可能になります。担当者や経営者にお客様サポートセンターを外部委託した場合に採算が取れるか、BtoCに参入するかの判断を確認することも可能です。

そのままクライアントの希望を聞き、行動するだけでは、成果につながりません。収益モデルを知っていれば、原点に立ち返るきっかけになります。

事業部の担当者によって見ている成果指標が違う

さまざまなターゲットのイメージ

2つ目は事業部毎に見ている成果指標が違う点です。

縦割り企業で部門間連携がない場合は、以下のように、異なるKGIが存在します。

  • 通販部門はサービスの告知や物販で売上を伸ばしたい
  • 不動産部門は空き地情報を情報提供者から募集したい
  • 総務部門はリクルート向けサイトを充実させたい
  • 広告部門はタイアップできるマッチング先を募集したい など

ウェブ解析士は、それぞれ独立したKGIがあることを判断して、KPIをどう組み立てようかと判断し先を見通せます。

しかし担当者は部門毎の希望を伺い、何をどこから取り組んでよいか判断がつかず、ウェブ解析士へ依頼する内容も曖昧な状態になっていきます。担当者はウェブの分析のプロに任せたから「販売数が増え、売上が伸びる」や「問合せが増える」など成果が上がるはずだと思い込んでいる場合があります。

思い込み以外にも、組織でウェブ担当者を任せたプロセスにも課題が見受けられます。

たとえば企画部門はウェブについて詳しいと判断され任される、お客様サポートセンターは外部との窓口だから任されるといった、ある意味、事業全体の把握を抜きにして、業務上ウェブ担当者として任されてしまったという状況です。

私たちウェブ解析士が、この任されてしまった担当者に、環境分析のヒアリングを行っていることはないでしょうか?

担当者が自社の収益モデルを把握していないままのヒアリングは、戦略の根底が崩れるに他なりません。

ウェブ担当者とのギャップを埋める

担当者が自社の収益モデルと経営上の優先順位を把握できていない状況下では、どこから着手するのか判断がつきません。

ウェブ解析士も担当者や経営者が情報を把握しているという先入観で、担当者が企業の収益モデルを、「知っている前提」ではじめてしまうと事業のインパクトが上がらない状況になります。

このため、ウェブ解析士を目指したいと考えるウェブ担当者には、ぜひ環境分析を行う以前に「企業概要」と「収益モデル」を把握してもらいたいです。

正確な現状把握のもと、担当者と情報を共有し、収益モデルを把握することで、何を優先して取り組むのか、「優先順位」を示すことが可能になります。

収益モデルから、どの部門のKGIを取り組めば事業にインパクトがあるか、優先順位を組み立て「事業の成果」に導く視点が必要になります。

ウェブ担当者や経営者だけでなくウェブ解析士も事業の成果のギャップを埋めるため、事前に「企業概要の把握」と「収益モデルの把握」をしておけば、あとのコンサルティングは円滑に進みます。

過去の失敗を乗り越えて

収益モデルの把握を推す理由は、私自身が創業した20年前、デザインの仕事を受けていた頃、気づけなかったことが発端になります。

当時、企業の広告部門から依頼される新商品の案件のデザインを納品し、販促活動で売上を伸ばすことがゴールでした。

しかし事業全体でみれば食品部門の売上はごく一部であり、他事業の収益性の比率が高く、今思うと商品に対して経営者の力の入れ方が違っていたことに気づけませんでした。

デザイン依頼された食品部門のゴールは「商品が売れること」を成果と考えていました。しかし企業の収益性から見るとインパクトを求めているところは別にありました。

広告部門から依頼された仕事を納めること、商品が売れることをゴールとしか見れず、当時、事業全体に目を向ける余裕と知識が兼ね備わっていなかったことを後悔しています。

とくに制作会社系でウェブ解析士を目指す担当者には、事業全体に目を向ける余裕と知識を持ってもらいたいです。

ウェブ解析士も経営の数字を見る、知見を深める

経営分析のイメージ

ウェブ解析士は「事業の成果を上げる」ことが命題です。しかしどの事業を改善すれば、インパクトがあるのか把握していなければ、私たちのコンサルティングは成果に結びつきません。

ウェブ解析士のテキストでは、5フォース分析、3C分析、ペルソナ分析、カスタマージャーニーマップなど数々のフレームワークが記載されています。

企業の内部環境分析のみにとらわれず、外部環境である企業の業界をしっかりと分析することが必要ではないでしょうか。3C分析で競合や市場の検討はヒアリング前に調査しておけば、担当者が考えている市場とズレがないか、なぜそのように考えているのか質問ができるようになります。

就職活動をされた方は希望する業界の分析をして、どのような収益モデルや成長性があるか調べた方も多いはずです。就職して実務を行うなかで、過去に調べた業界毎の収益モデルを忘却していることもあります。また世の中の動向が変わっている場合もあります。担当者からヒアリングするだけでなく、今一度、不足な情報がないか検証してみる必要があるでしょう。

環境分析が済んでいる段階でも、担当者と認識のギャップがあれば、あらためて収益モデルがどうかという視点に立ち返って検証する必要があります。

事業の成果を求めるウェブ解析士には、取り組みの初期段階から事業にインパクトのある成果を見出す視点、事業の優先順位を整理する視点が必要です。

事業の成果の本質はどこにあるのか

おわりに。

私は5年ほど前から行政の支援機関で中小企業支援の業務を行うようになり、実務レベルで事業全体を「引いて見る」ようになりました。どの事業で売上を上げているのか、利益を取っているのかを把握し、改善する箇所の優先順位を決めるところから業務を行っています。

「収益モデルの把握」として部門別の収益を調べ、どこのインパクトを上げるのがよいか正確な情報を担当者から引き出し、把握している人材に同席してもらうことにより、スタートラインから担当者と施策のブレをなくすように努めています。

とくに中小企業、小規模事業者のウェブサイトを扱う場合には、事業の収益性は窓口担当者だけでなく経営者ですら把握できておらず、儲かっている事業が何であるのか気づいていないケースもあるでしょう。年1回の決算期、確定申告期にしか把握していない事業者もあり、経理部門や税理士に任せているだけという状況も見受けられます。

独立行政法人中小企業基盤整備機構が「経営計画つくるくん」(https://tsukurukun.smrj.go.jp/)を開発した経緯は、日本の全企業数の9割以上が中小企業であり、場当たり的な経営で計数管理ができておらず、経営状況を正確に把握できていないことが理由のひとつです。中小企業の支援を行う際は、こうしたアプリを使いながら、事業全体の経営計画をいっしょに検討するのもよいかもしれません。

経営計画つくるくん トップページ
出典:経営計画つくるくん https://tsukurukun.smrj.go.jp/
経営計画つくるくん 作業画面
出典:経営計画つくるくん https://tsukurukun.smrj.go.jp/

経営者が把握していない事業は、ヒアリングしてもブレがあることは明確です。

一部門の成果を追うよりも経営全体から優先順位を考え、どのKGIから着手するかを提案し、実行することでインパクトが大きくなると考えています。

環境分析に入る前段階で「企業の現状把握」を理解している担当者、経営者から正確な情報を収集すること収益モデルを把握することが最も効率良く事業の成果に結びつけられる本質といえます。当たり前ながら前提条件が覆ると施策が変わってきます。

私自身も「担当者や経営者が情報を把握している」という先入観にとらわれず、ウェブ解析士として事業にインパクトのある成果を導けるよう心掛けています。

今回はウェブ解析士として事業にインパクトのある成果をどのように把握するかを解説しましたが、私は現在、更に踏み込んでお客様の経営改善も行っています。そこに至るまでの経緯などのインタビュー記事がありますので、ぜひご一読ください。

著者:関原 雅人

フードドラマ研究所所長。神戸芸術工科大学芸術工学部卒業後、広告代理店、食品メーカーにて販促計画策定、グラフィック、ウェブ、パッケージデザインの制作・ディレクション業務に携わる。フードコーディネーターとして食シーンを想起させる商品開発、マーケティング、販促提案、撮影指導を得意とし、主に食品関連事業者の経営相談、コンサルティングを行う。日本フードコーディネーター協会理事。ITコーディネーター、ISO22000(食品安全)・ISO9001(品質)審査員補、JGAP審査員補。愛媛県知財総合支援窓口 知財専門家。愛媛6次産業化プランナー。

フードドラマ研究所 https://fooddrama.jp/
日本フードコーディネーター協会 https://www.fcaj.or.jp
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