「そろそろホームページのリニューアルを」と言われたら?

目次

中小企業や小売店向けオーナーが理解しておくべきポイントと
制作会社に要望を伝える上手な方法

「お宅のホームページ、そろそろリニューアルしませんか」 行きつけのヘアサロンで施術中にかかってきた電話がそれでした。
店主はお断りしていましたが、戻って来て開口一番「こういう電話が今一番多いよ」と困惑しながら話してくれました。「確かにHPは古いし更新もしていない。リニューアルはしたいけど、どこに頼んでいいかわからないし相場もわからない。」
以前からこのお店のHPについては私もいくつか指摘したいところがあったのですが、「相談して」とも気軽に言えず、話しを合わせただけでこの日は店を後にしました。
こうしたHPのリニューアルについてのセールス電話を受けた中小企業や小売店のオーナー様は実際に多いのではないでしょうか。
相互に理解を深めてから納得のいくHP作りをしていただくため、私はクライアントと制作会社の間を円滑に繋ぐ通訳のような役割を担うことがあります。
その仕事で実践してきた中で知り得た、HPリニューアルを検討する前に知っておきたいポイントと、制作会社へ要望を伝える上手な方法をお伝えして参ります。

リニューアルに関して理解しておきたいポイント

ポイントの説明の前に、オーナーがHPのリニューアルの依頼に踏み切れない理由を3つ挙げてみました。
  • リニューアルの必要性を感じない
  • 相場が不明瞭でわかりにくい
  • 品質への疑問
といったところではないでしょうか。

リニューアルの必要性を感じない

「デザインも気に入ってるし、情報も網羅しているからこのままでいい」
「新事業を起こすわけでもないから特に新しい情報を加える予定がない」
「HPに売上貢献を期待していない。ネット上の看板としてあれば良い」 これらは私に相談に来られたオーナー様が仰っていた「リニューアルの必要性を感じない理由」です。HPは仮想世界でお店を持ったようなものであり、24時間365日働いてくれる営業所でもあります。
例えば事業を拡大し支店を構えた時、そのまま支店長に任せっぱなしで大丈夫でしょうか。定期的にオーナーが視察し、ちゃんと働いているかを確認するものではないでしょうか?

【ポイント1】「そろそろリニューアルを」と外から言われる時は、一般から見て「違和感を感じる」部分があるからだと思ってください

ではどこがおかしいのでしょうか?
自分で見直してもわからない場合は、当初制作に関わっていなかった従業員や知人にHP全ページを見てもらい、意見を募ってみてください。
高確率で欠損が見つかります。

【よくある事例】

  • 誤字脱字が5年間修正されずにそのままになっていた
  • 同じ文章が重複していた
  • 画像やリンクが破損
  • 外部リンク先URLに誤りがあったあるいはページがなくなっていた
  • メールフォームの転送先アドレスの誤記載
  • ページ移動が複雑で知りたいページにたどり着けない
じっくりと見直せば、リニューアルの必要を感じることができるはずです。

相場が不明瞭でわかりにくい

最初に制作してくれた会社ではなく、リニューアルの時は違う制作会社に依頼したい時はオーナーご自身で探すか、取引先や知人の紹介で選ぶことになります。

ネットで検索して制作会社を探す場合

「ホームページ 制作」という複合キーワードをネットで検索すれば「1ページ○○円」からと具体的に金額がコピーで示される制作会社がヒットすることもあります。それを見るだけで最低金額はわかりますが、実際はその最低金額で済むことはほぼありません。クライアントの希望をヒアリングしてから実際にかかる見積が提出されます。トータルすると結構高額な費用を提示されることもあります。ただし、それは要望を全て叶えたらその金額になる、ということです。

取引先・知人の紹介で探す場合

同じ規模で、同ページ数程度のHPを運営している取引先があれば「リニューアルにいくらくらいかかったか」を雑談の折りに聞いてみるのも良いかと思います。

比較見積が欲しい場合

何をどこまでやりたいか、具体的に項目を作っておき、いくらでリニューアルが可能かをそれぞれの制作会社に問い合わせてみましょう。
ただし、同条件であっても制作会社の規模やスキルにより、価格は変わります。あらかじめ依頼候補の会社の制作例も確認しておきましょう。
注意点としては、トップページは別の会社が担当し、中身のテンプレートページだけ制作している会社もあります。念のため「このサイトのどこのページを請け負ったのか」も聞いておくと良いでしょう。
テンプレートだけ請け負っていたからといって悪いわけではありませんが、制作会社自体に想定しているデザインセンスがあるのか、そこは外注を使うのかで見積の価格にも影響があります。 制作会社側は全面リニューアルを提案してきますが、要望項目をあらかじめ伝えておくことで「どこまで対応が可能か」を知ることができます。
制作会社の本音としては他社が制作したものを改良・修繕するのは消極的で、そのため割高の傾向があります。
(改良・修繕を積極的にされる制作会社は別) 個人的には5年周期での全面リニューアルをお勧めしています。なぜならネット環境はどんどん変わっており、セキュリティ面においても厳しくなりつつあります。端末もPC、タブレット、スマホとサイズも解像度も異なるものが増え、それぞれの画面サイズに対応した旧式の制作方法では更新作業も煩雑で無駄なコストばかり増えてしまうからです。

要望項目の中に漏れてはいけない確認事項

原稿制作や更新作業は社内でやるのか、それとも制作会社に依頼するのか。 原稿を渡して画像やテキストを入れて更新するだけなら、社内で十分できますし、即時性もあります。制作会社に更新作業を任せてしまえば、画像編集加工もプロですので、綺麗にしてくれます。ただし文章に関しては専門のライターがいるところは少ないため、預かった原稿がそのまま入力される形になるケースが多くあります。また原稿の確認などの時間を要するため、早くて2週間、もしくは1ヶ月ほど更新するのに時間がかかります。

サーバー管理費という名の中身を確認

HPにはそのファイルを保管する先のサーバー利用料というランニングコストがかかります。見積依頼時には月額管理費があるならば入れるように伝えておきましょう。
制作会社では自社所有のウェブサーバーあるいはレンタルサーバーを利用しているので、「サーバー管理費」として請求項目に上がります。
オーナーが直接レンタルサーバー会社と契約し月額利用料を自社で払う場合であっても、制作会社から「サーバー管理費」という名目で請求されることがあります。サーバーの月額利用料を除いていたとしても、更新費用などを含めた上で、便宜上その名目にしている場合もあります。内容は必ず確認しておきましょう。

担当者との相性も大事

HPの現状の問題点(技術・デザイン)以外にSEO対策のためのライティング(文章の構成)の提案や、ネットビジネスのトレンド情報までわかりやすく率直に話しをしてくれる担当者ならまず問題はないでしょう。
一番ダメなのは、オーナーの意見を聞かなすぎ、聞きすぎの担当者。
前者は独りよがりな制作をしがちで、後者はオーナーの意見が強すぎて思考停止に陥ってるケースです。いずれも共通するのは「自己満足」。
担当者の専門知識が豊富だからと全て任せることも危険です。
会社やお店に所属してみないとわからない顧客や従業員との現実もあるからです。実店舗まで赴き詳細にヒアリングしたい(あるいはアンケート収集を図りたい)と申し出るならば、良質な担当者だと言えます。
ただし、ここまでしてくれる担当者がいる制作会社は少々値が張ります。
それでも良いものを作りたい、真剣にHPのリニューアルを目指したいならば、そうした担当者に巡り会うまで探した方が良いでしょう。

【ポイント2】 HPはオーナーの満足度を高めるものではありません

運営管理するHPは「ユーザー・ファースト」のサイトでなくてはなりません。制作会社の意見はもちろん、直接顧客に対応する従業員にも意見を求め、予算の範囲で「顧客を増やすために使いやすく魅力的なサイトを作ろう」という意識を忘れないようにしましょう。

品質への疑問

いざ制作を始めてもらい仕上がった頃には修正するのも難しい段階に来ていた…そんなケースはありませんか。諦めてそのまま納品してもらったという声もあります。 多くは、打ち合わせでわからないことをそのまま聞けずに契約し、任せてしまわれたことが原因です。専門的な説明や馴染みのないカタカナ言葉で説明を受けると「何がわからないのかが伝えられない。」と悩みを漏らす方もいらっしゃいました。
わからない言葉が出て来たら、どのようなものか一般にわかるよう説明してもらいましょう。納得できないまま先に進めてしまうと大概は「こんなこと頼んでいないのに」と我慢しながら大金を払う羽目になります。

【ポイント3】 主流である「レスポンシブウェブデザイン」を採用しましょう

PCからスマホサイズまでデザインレイアウトを最適化できる更新管理画面も基本的には1つで済ますことができます。もしも未採用ならば、まずはこの基本構造を変えることを主軸にして要望を出しましょう。 
おおよそ5年程経過すれば、HPの制作技術方法は様変わりします。新しすぎるものや古すぎる方法だとWEBサーバーやユーザーの閲覧環境に合わなかったり、セキュリティの面でも表示に制限がかけられたりします。
「今、ほどほどに普及している方法」を選ぶことで品質は保証されます。

【ポイント4】 工程途中で数回は確認が必要です

複数人でページを確認し、目的や仕様に沿ったものになっているか、誤字脱字はないか、リンクは破損していないかなどを確認しましょう。

品質を良くも悪くも変えるのは「時間と人」次第

納品予定よりも早く仕上げて欲しいという希望が途中で入ることもあります。
もちろん制作会社は合わせるよう努力します。ですがあまりにも制作にかかる時間を無視したタイトなスケジュールや引き伸ばしを希望されるケースもたまにあります。
制作人員は限られていますので制作会社にとっても厳しくなります。また引き伸ばしをされることで予定していた他社の制作計画にも支障をきたします。当然のことですが、お互いに良いものをリリースしたい思いは同じ。最初に決められたスケジュールは特殊な事情がない限り、お互いできるだけ守るように努めましょう。 また品質への疑問が生まれるのは制作段階のみならず、約束事の有無でもあります。

【ポイント5】 契約書なしで制作を依頼するのはNG

HPのリニューアルに際しては、ファイルをアップロードするWEBサーバー情報を提示しなくてはなりません。
制作会社が決まった後はIDPWなどを会社情報の一部を預けることになります。その点の安全管理を軽く考えないようにしてください。委託する制作会社の基本情報(スタッフの人数、環境、セキュリティに対する考え)も見積や企画書の段階で確認した後、契約書を交わすようにしてください。お互いを信用するための第一歩です。納品が完了するまでに交わされたメールでのやりとりは、できるだけ保存しておきましょう。 依頼する前に理解しておいていただきたいポイントは他にも沢山ありますが、次は見積と企画書を貰い、比較検討と制作がしやすくするための書類作成について説明します。

制作会社に要望を伝える上手な方法とは要望書を提出すること

要望書は同一の条件のもとで複数社に見積書や企画書などを提出してもらう際に比較検討しやすくなります。提案書通りに企画書を作成してくるところもあれば、そこからさらに広げて思いがけないプランを提供してくれる会社もあります。予算に合わせるか、提案書以上のものを選ぶかはオーナーが選択できます。また制作中においては目的にブレが生じないための柱ともなります。ここに記載されていない追加要望は納品スケジュールを狂わせる可能性があります。見積検討のためだけでなく、品質を守るための重要な役割を持っている書類となります。

要望書の内容

特に決まったフォーマットはありませんが、これだけの項目があれば制作会社もイメージしやすく見積もしやすい内容を押さえました。
  1. 会社(店舗)概要
    職種内容や住所・電話番号、メールアドレス、HPのURL、代表者名、従業員数などを記載します。支店がある場合は全部記載しておくと良いでしょう。
  2. 集客したいユーザー
    年齢層、性別、趣味、生活スタイルなどを具体的にあげます。
    この目線を軽視しがちですが、対象ユーザーの興味を掻き立てるサイトを作らなくては集客できません。ユーザーの種類が多ければ誰の興味も引かないサイトになってしまいがちです。イメージを1人に絞ってその人の興味を引くデザイン・トーン・マナーを設定します。
    またここは集客対象がオーナーでもなく制作会社の担当者でもないことを宣言しているようなものとお考えください。
  3. 同業他社サイト
    いくつかの同業者サイトのURL を記載しましょう。他社と比較することでサイトの強み、弱みを制作会社が把握しやすくなります。
  4. デザイン・参照サイト
    基調とする色があれば、ここに記しておきます。色でイメージチェンジを図る場合については、希望の色を書いておくのも良いでしょう。
    また同業ではないけど、「希望するデザイン・イメージ・レイアウトはこれが近い」というものがあれば、URLを記載しておきましょう。
  5. 現状のサイトの問題
    オーナー・従業員目線で気になっていることと、顧客や第三者の意見でこう言われたという2つの目線で感じている問題点を書いておくと良いでしょう。
  6. リニューアルの目的と範囲
    5 の改善と新しい試みを希望する場合は、ここに目的として記載します。範囲については、具体的にどう制作するのかという点をわかる範囲で箇条書きにします。例えば既存の文字原稿はそのまま流用するのか、あるいはSEO対策を踏まえた文字原稿にしたいのか、サイトマップから考え直すのか、画像は撮り直しにする、などです。
    (例)
    目的:
    ・レスポンシブウェブ対応
    ・SEO対策
    ・スマホ検索対応(SSL導入など)
    ・予約フォーム追加
    範囲:
    ・イメージ画像や文字原稿は制作依頼
    ・更新作業は従業員もしくはオーナーが担当など
  7. 基本仕様・環境
    「リニューアルの範囲」と一部重複するかもしれませんが端末の技術的な対応範囲を決めておきます。例えばPCのモニタ画面サイズ、ブラウザ、スマホの種類や画面サイズを数字で明記します。
    既存HPにアクセス解析ツールが設定されていれば、ユーザーのスマホの種類やPCのOSなどより詳細がわかります。もしもそれが可能であれば、訪問する多くのユーザーが使用しているものを記載するのがベストだと思いますが、それが叶わない場合はチェックする側の環境を記載しておけば良いかと思います。
  8. 希望納品スケジュール・予算
    ページ数にもよりますが、オリジナルで制作する場合は3ヶ月〜6ヶ月余裕をみておいてください。
  9. 提出資料(見積・企画書など)の提出期限
    提案書を提出後、1週間〜10日間を目処に記載します。
  10. 見積・資料の提出先・問い合わせ先
    担当者のメールアドレス、電話連絡先、質疑応答の方法(電話・メール)などを明記

要望書はいわゆるRPGの企画書のようなもの

具体的な要望を明文化し制作会社に提出することで、より具体的な見積と企画書を受け取りやすくなります。もしも予想外に見積が高かった場合は、どこを抑えるかも検討しやすくなります。HPのリニューアルは綺麗にデザインされたものをアップしたら終わりではなく、ユーザーへの配慮、趣味思考や行動パターンを連想しながら作り上げる、戦略的RPGのコンテンツを作り上げるようなものです。 「そろそろリニューアルを」と声がかかったオーナー様にとっては絶好の機会ですので、ぜひ自社のコンテンツを見直して新たな戦略を考えていただければと存じます。 詳しく紹介できませんでしたが、もしもウェブ解析ツールで過去のアクセス解析データがありましたら現状が把握しやすく、問題の根拠も示すことが可能となります。また無駄のない改善提案ができるようになるのと、実店舗との連携も組み合わせて考えると更に面白い展開が期待できます。 良質な制作会社との出会いがありますように。

デジタルマーケティングを基礎から総合的に学ぶには

Google アナリティクスをはじめとしたGoogle系のツールは、その使い方を知ることも大切ですが、使うための戦略や設計が必要です。それは、ビジネスに成果をもたらすために必須の考え方です。

ウェブ解析士協会では、このようなデジタルマーケティングの基盤となる「ウェブ解析」を体系的に学べる環境と、知識・技術・技能に一定の評価基準を設け、あらゆるデータから事業の成果に貢献する人材を育成しています。

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この記事を書いた人

個人事業主。紙媒体の広告制作の他、既存ウェブサイトの改善提案、制作会社への要件依頼書の作成代行、コンペ代行、折衝、制作進行管理も担う。
個人商店から中小企業を中心にアクセス解析を利用し、予算と規模に適したサイト作りを提案。クライアントにわかりやすく伝えることを心がけている。

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