地方のWeb制作会社が、わずか5名で継続案件を獲得できるようになるまで

こんにちは。上級ウェブ解析士の保科です。
有限会社デザインスタジオ・エルで、Web制作のディレクションやアクセス解析、Web広告運用などを行なっています。

今回は、私たちが行った案件獲得のための活動をご紹介します。

私が所属するWeb事業部は総勢5名で営業専任のスタッフはいません。よって、積極的な営業活動はできていないのですが、それでも今までなんとかやってこられた、という状況でした。

さすがに今後もこのままではまずいのではないか?と危機感をもち、チーム全員で試行錯誤しながら案件獲得に向けた取り組みを始めました。

活動開始から本記事の執筆時点まで約9ヶ月間の実績は以下のとおりです。

  • リード獲得数 前年同期比160%⤴
  • 受注件数 前年同期比200%⤴
  • 受注率 前年同期比120%⤴

地方のWeb制作会社の方々に、私たちの取り組みが参考になれば幸いです。

目次

準備編

活動目的の明確化:良い仕事をし続ける仕組みをつくろう

はじめに行なったのは、活動目的をチームで共有することです。

案件を獲得するといってもただ案件の数だけを求めるのではなく、案件の質にもこだわりたいため、活動の目的を次のように設定しました。

良い仕事をし続ける仕組みをつくる

「良い仕事ってなんだろう?」「こんな風にできたらいいよね」と話し合いを重ね、次のように定義しました。

  • 気持ちよく仕事ができる顧客と出会う
  • 自分たちが望む内容の仕事を請け負う
  • 適正な対価をいただく

これらを実現するために、「誰にどのような価値を提供できるか」という視点でさらに検討を進めていきました。

顧客分析:どんな顧客と付き合いたい?

次に、ターゲットとなる「気持ちよく仕事ができる顧客」とはどんな人たちなのかを話し合いました。イメージしやすいように、これまで実際に取引があった顧客の中から候補を絞り込み、次の内容を整理しました。

  • 基本属性(業種や業界、企業規模など)
  • 心理属性(価値観、ニーズ、課題など)
  • 接点を持ったきっかけはなんだったか

理想の顧客像だけだとイメージしにくい部分もあったので、「こんな顧客はイヤだ」といったネガティブ要素を挙げていき(これはたくさん出ます)、ポジティブ要素に転化する方法でまとめていきました。

(例)短納期でかつ値下げ要求をしてくる → 品質・コスト・スケジュールはトレードオフであることを理解している

競合分析:競合他社の強みは?

ターゲットは業者を比較しているため、競合他社の存在を無視することはできません。

ターゲットが業者選定の際に検索するキーワードで、上位表示されるWeb制作会社をリストアップします。このプレーヤーを暫定的な競合に設定しました。そして自社を含めた各プレーヤーに対して、デザイン力、営業力、ブランド力など複数の項目に得点を与え、各社の強みや総合力を確認しました。

このスコアは、自社の立ち位置を把握したり、コンペ案件の際に自社がどの土俵で戦い、どの土俵で戦ってはいけないのかを判断したりすることにも役立っています。

自社分析:自社が選ばれる理由は?

自社の強みはなにか?これは自分たちで考えるよりも顧客に聞いたほうが早いと思います。

しかし、いきなりそんなことを確認するわけにもいかないので、過去の問合せメールの内容にヒントがあると考え、「お客様が数あるWeb制作会社の中で私たちにお声がけいただけた理由は何なのか」を洗い出しました

私たちの場合、自社サイトに掲載している制作実績のデザインを評価いただく傾向がみられ、これが自社の強みなのだと再認識しました。

コンセプトダイアグラムで施策に落とし込もう

最後に、ここまで整理したことを施策に落とし込むためにコンセプトダイアグラムを活用しました。

有限会社デザインスタジオ・エルで作成したコンセプトダイアグラム

実際に作成したコンセプトダイアグラム(当時)

コンセプトダイアグラムは清水誠さんが提唱された「顧客の心理変容と企業の施策を図解し、顧客の理解と施策の評価を行うメソッド」です。

参考:コンセプトダイアグラムとは – コンセプトダイアグラム公式サイト

  • ターゲットはどんな課題や悩みを抱え、どのように業者選定を進めるか。
  • どのタイミングでどんなコミュニケーションが適切か。
  • 競合他社と比較した際に自社の強みをどう訴求し、弱みをどう補っていくか。

これまで検討してきた内容を振り返りつつ、施策を検討しました。

施策編

私たちが実際に行ってきた施策の一部をご紹介します。

制作実績の改修

改修した制作実績

先に述べたとおり、私たちは営業専任スタッフがいないため、リード獲得の主なチャネルは自社サイトです。過去の問い合わせメールの内容から、自社サイトの制作実績がきっかけになったものが多かったため、その強みをさらに活かすことにしました。

まず、制作実績に掲載するWebサイトは業種やデザインテイストの偏りをなくし、幅広く対応できることを感じてもらえるようにしました。

次に、各制作実績ページをリライトします。以前は公開したWebサイトの一部を掲載していたのですが、最終的な制作物に至る前の検討段階の様子やデザインの意図などを追記しました。こうすることで、業者選定を行なっているターゲットに私たちが普段行なっている業務の内容を理解してもらい、実際に依頼したときのイメージがつきやすいのではないかと考えました。

リライト後、弊社指名でWeb制作をご依頼いただいた顧客に、なぜ弊社にお声がけいただけたのか尋ねたところ「制作実績のデザインが多種多様であり期待がもてた」と言っていただき、施策の効果を実感しました

問い合わせフォームの改修

ここで重視したのは、ターゲットと出会う確率を高めるために、いかにターゲット対象外とのやりとりを避けるか、です。

まず、問い合わせ区分の「見積依頼」の選択肢を削除しました。

業者選定を行う立場からすると、見積額は重要な要素の一つであることは重々承知しているのですが、これまでの見積依頼の問い合わせは往々にして商談に発展しないケースが多く、おそらく費用だけで比較されているのだと推測しました。

私たちは価格優位性で勝負するつもりはないので、思い切ってこの選択肢を削除することにしました。

また、フォームの項目として「ご予算」と「ご希望の納期」を追加し、最低金額や最短納期の選択肢を私たちが希望する内容に変更しました。

これにより「この会社に依頼するにはこのくらいの金額や時間がかかるのか」という心づもりをしていただくことと、費用感やスケジュールが合わない案件を減らす狙いがあります。

フォーム改修後、見積依頼のみの問合せは減りました。予算と希望納期も意外と回答してくれる方が多く、初期対応が進めやすくなりました。

ブログやSNSで情報発信

新規の制作実績や制作過程をブログやSNSで発信し、潜在顧客にアピールしました。実際にこの取り組みがきっかけで案件化したものもあり、特に私たちのような小さい組織こそ、積極的に情報発信を行うべきだと感じました。

https://www.facebook.com/UltraL.net/posts/1951534364866443

イベント・セミナーへの登壇

自社の存在感を高めるためにイベントやセミナーにも積極的に登壇しました。こちらは今のところ案件獲得よりも自社の採用活動に貢献しているかな、といった印象です。

まとめ

活動開始から本記事の執筆時点(約9ヶ月間)の実績は以下のとおりです。

  • リード獲得数 前年同期比160%
  • 受注件数 前年同期比200%
  • 受注率 前年同期比120%
  • 直接取引の案件比率が高くなった
  • 売上単価が高くなった
  • 県外からの引合が増えた

弊社指名の案件が増えたことによる効果もみられました。

  • 無理にコンペ案件に参加する必要がなくなった。
  • 値下げ交渉や納期交渉がほぼなくなった。
  • 時間をかけたい部分にきちんと時間がかけられるようになった。
  • 残業時間がほぼゼロになった。

結果としては上々という自己評価です。しかし、分析内容や施策の粒度はまだ粗いと感じており、実績に対して今回の取り組みがどの程度寄与したのか、どの程度再現性があるのかを把握しきれていないのが正直なところです。このあたりの精度を高めていくことが今後の課題だと感じています。

ただ、活動目的であった「良い仕事の仕組みづくり」は徐々にではあるものの、かたちになっている実感があります。また、地方の小さな会社でもここまでやれるんだという自信にもつながりました。

なにより、これまでインプットしたことを実際に行ったことで、新たな気付きを得たり知見が深まったりしたことは大きな収穫でした。

最後に、デザインスタジオ・エルのWeb事業部(通称「ウルトラエル」)では一緒に働く仲間を募集しています。「超えるをつくる」をテーマにしているウルトラエルで、お客様の期待と、自分の力を“超える”仕事をしてみませんか。

デジタルマーケティングを基礎から総合的に学ぶには

Google アナリティクスをはじめとしたGoogle系のツールは、その使い方を知ることも大切ですが、使うための戦略や設計が必要です。それは、ビジネスに成果をもたらすために必須の考え方です。

ウェブ解析士協会では、このようなデジタルマーケティングの基盤となる「ウェブ解析」を体系的に学べる環境と、知識・技術・技能に一定の評価基準を設け、あらゆるデータから事業の成果に貢献する人材を育成しています。

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この記事を書いた人

有限会社デザインスタジオ・エル/上級ウェブ解析士

2007年4月 インテージ長野(現インテージテクノスフィア)入社。マーケティングリサーチの企画、実施、レポーティングに従事。 その後、リサーチのノウハウを活かしたWeb解析やネット広告の運用に携わる。

2018年1月 有限会社デザインスタジオ・エル入社。 現在は主にWebサイト制作ディレクション、Web解析、Web広告運用を行う。

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