台湾の SNS でビジネスをやるための「知名度UP」と「運営体制」

皆さんこんにちは。ウェブ解析士の黄 威翔(コウ・イショウ)です。

前回は台湾のデジタルマーケティング現状について、ご紹介しました。台湾のマーケティングに大きな影響を与える SNS は、例えごく一般的な商品だとしても、話題になれば、大きな反響があります。

そんな台湾の SNS マーケティングについて、今回は具体的な事例を合わせてご紹介します。日本のようなビジネスマナーはほとんどありませんが、キーワードは「企業より個人」です。

目次

台湾の SNS 紀元前

台湾 SNS 使用者が急上昇する前、ネットを使えるのは主にパソコンが使える若い年齢層の人でした。その時は Yahoo! メッセンジャーが主流で、大学へ行ったら MSN に切り換える方がほとんどです。それらの連絡ツールとプラスして、ほとんどのネット使用者はブログを書いていました。台湾のデジタルマーケティングは、この頃から始まります。

一般なブロガーはもちろん、「図文作家」という、日常生活を単編漫画などで描いたりするイラストレーターたちも同時期から生まれ始め、その後 SNS の波に乗り、台湾の SNS を代表する文化のひとつになりました。

台湾の SNS 感覚

前回の記事、台湾におけるデジタルマーケティングのコツは「友達」?にて、台湾の SNS 使用状況を簡単に紹介しました。今回は台湾の SNS 御三家「Facebook」「Instagram」「LINE」それぞれの習慣をご紹介します。

台湾の Facebook = 日本の Twitter ?

日本における Facebook は、正式や専門的などのイメージがあります。日本の友人から「Facebook はスーツ、Instagram はおしゃれ、Twitter は全裸」と聞いた時に、ものすごく面白いと思いました。

一方台湾人たちは Facebook しか使わないという背景はあるものの、Facebook の使い方は日本人の Twitter とさほど変わりません。楽しい交流場で気軽に投稿したり、シェアしたりします。ですので、企業としても会社のイメージをアピールする必要がなく、気軽にファンと会話しているのが特徴です。

完全個人主義な Instagram

日本では、飲食店や雑誌、メディアなどの Instagram をよく見かけますが、台湾では Instagram を運営している業者は少なく、芸能人や有名人はもちろん、個人が発信・フォローするのがほとんどです。

これは前回もお話ししたように、台湾は「企業より個人の情報を尊重する」という考え方が主流なので、わざわざ業者が投稿している写真より、実際に体験したことある個人、もしくは信用のある人が紹介したものだけが見られるからです。特に Instagram は写真がメインで Facebook のようにリンクしたり記事を貼ったりなどができないため、業者の写真を見るためだけにフォローすることはしません。

LINE は SNS というより連絡ツール

SNS に分類されている LINE ですが、台湾では基本的に Yahoo! メッセンジャーや MSN のような連絡ツールとして使います。自分が見たい新しい情報は Facebook にすぐ入ってくるため、日本のように自分が好きなブランドの公式 LINE アカウントを追加し、新しい情報を見るような習慣はありません。

連絡ツールのため、プライベート以外に同僚や業者との連絡なども頻繁に使われ、個人客自らが連絡のために、業者に LINE 交換を要求するのも普通にあります。

SNS マーケティングを実行前にやるべきこと

今年3月に「奇跡のカメラ」と言われ、最終撮影日は2015年だった、石垣から台湾に漂流した日本人女性のカメラが1日で持ち主を見つけたと言う話はご存知でしょうか?

参考:カメラ漂流 石垣島から台湾へ ネットで落とし主特定  :日本経済新聞

このように、SNS は強大な力を持ち、話題になれば一日で全国に広がります。しかし、自社商品やサイトを SNS に投稿すれば、大量な反応が来ると思ったら大間違いです。地道なマーケティングが必要になるのは日本と変わりませんが、広告を使うのが効率的な方法と言えるでしょう。

とはいえ、中国語で Facebook の広告を出したとしても、サイトに入ったら日本語のままといった失敗例は少なくありません。日本人としても、興味を持って見た先のページが英語や中国語だったら、ショックを受けて離脱しますよね?

台湾向けに SNS マーケティングを考えているなら、次の3点をやっておきましょう。

①サイトを繁体中国語化する

まず、中国語サイトは必要です。言語は「繁体中国語」(台湾では近年「正體中文」と呼ぶことが多い)です。繁体中国語は主に台湾・香港・シンガポール・マレーシアなどで使われ、「簡体中国語」は中国で使われています。特に台湾は中国に対して敏感なので、簡体中国語で書かれているものは離脱されやすくなります。

もしサイト全体を繁体中国語にするのが難しければ、ランディングページを繁体中国語で作成してはいかがでしょうか。

②台湾人の社員を雇う

SNS はアカウントを作って終わりではなく、運営が必要です。中国語のページやサイトを用意するだけでなく、お客様のフォローをしなくてはなりません。

しかし、台湾人だからといって SNS の運営方法を知っているとは限りません。日本も同じで、Twitter や Facebook を使えることと、 SNS を運営できることとは別ですよね。ですから、育成は大事です。日本のやり方を教えながら、どうやって台湾方式に変換するかを考えさせ、育てましょう。

もし台湾人の社員を雇うのが難しいようであれば、中国語のできる日本人や、海外マーケティング専門の業者も多いので、自社の状況に合わせてうまく使い分けてみてください。

③SNS をちゃんと運営する

意外と多いのが、ページの内容が数ヶ月前に投稿した会社紹介のみという Facebook ページです。何の投稿もなく、単に Facebook で広告を出すためのページもよく見かけます。これは台湾の SNS 運営以前の問題です。

「ユーザーをサイトに来てもらうことを目的としているのだから、ちゃんとサイトを運営できていれば良いのでは?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、台湾は「企業より個人」の考え方が主流なので、企業の情報は最初から疑問視しています。そんな状況で Facebook ページにユーザーとの交流がカケラもないなら、ページの「いいね!」すら押さないでしょう。

定期的に投稿し、ユーザーと交流するコミュニティの場を作ることが大切です。

台湾の SNS における集客と運営

台湾では Facebook が主流

いよいよ本格的に SNS を利用した集客と運営についてお話しましょう。台湾の風習に配慮しながら、具体的な事例及び注意点をご紹介します。日本との違いを考えてみてください。

ビジネスを目的とした SNS 運営の基本

日本と同じように、個人情報の掲載や誹謗中傷などの発言は厳禁です。この辺りはそれほど変わらないように思います。

しかし、台湾では「政治」や「中国」に関する話題には非常に敏感で、すぐ炎上する可能性が高いです。実際、Facebook ではよく見られる光景です。もちろん炎上をうまく使って一気に知名度を上げるのも一つの手ですが、不注意に行うとたくさんの批判者にフォローされ、投稿内容を一方的に批判されてしまいます。

その他は日本のように「Facebook はちゃんとしたイメージ」「Instagram は綺麗でおしゃれ」「Twitter は面白く」などに分けて運営する必要はなく、 SNS の趣旨である「人と人とのつながりを促進する」という原則を守ってユーザーと対話し、友達を大切にする感覚で運営すれば良いでしょう。

自社で KOL を生み出そう!

KOLとは「Key Opinion Leader」の略で、いわゆる「インフルエンサー」のことです。何回もお伝えしているとおり台湾人は「企業より個人」の考え方なので、ブランドよりはインフルエンサーの方が断然愛されています。

もちろん会社運営のサイトやサービスであれば、個人として発信するのは難しいでしょう。そこでオススメなのが、SNS 投稿者の本名ではなくニックネームをつくることです。

こうすると、ユーザーは投稿者の性格やクセをより身近に感じられるようになります。投稿する管理者が多くなっても、それぞれの管理者にだんだんファンが集まってきます。たまに顔を出すとリアルさが増すので「日本でがんばっている台湾人」として、更に効果を期待できます。

Facebook の新たな運営法「グループ」

日本では、Facebook ページは会社として発信、 Facebook 個人アカウントは自分のプロフィールのような使い分け方がよく見られます。もちろん台湾でも個人アカウントで自分ができることなどを友達にアピールし、仕事をもらうなどの使い方はありますが、やはりプライベートの発信がメインで、仕事などはあくまでもおまけです。

個人のアカウントと Facebook ページ以外、近年台湾でよく使われているのは「グループ」です。 Facebook ページのように管理者が一方的に情報発信するのではなく、誰でも自由に投稿し、質問し、発言し、回答しあえるのがグループの魅力です。最初はブロガーやインフルエンサーから始まりましたが、現在は企業でもよく使われています。特に旅行業界のグループでは、まるで観光ポータルサイトのような観光情報で溢れています。

グループは誰でも簡単に会話できるため、エンゲージメント率は非常に高いです。しかしその反面、管理が難しいというデメリットもあります。

Facebook グループ内は毎日違う投稿やコメントであふれ、検索しても量が多く、時系列で並ばないなど、欲しい情報はなかなか見つかりません。そこで「ハッシュタグ」をうまく使い、情報を分類することが推奨されています。管理者はこのような「グループルール」を作り、新しいメンバーに守ってもらうようにする必要があります。他にも、他社の無断広告宣伝や誤情報の削除など、管理者は随時グループをチェックしないといけません。グループを管理するのは大変そうだと思いますよね。

そこで「このグループは○○社が経営しているから従うように!」と押し付けるのではなく、あえてグループを公開し、「このグループは皆の楽しい交流場だから、一緒に無断広告や誤情報から守ろう!」とする考え方が増えました。これによって無断広告や誤情報があっても、管理者以外のメンバーに注意してもらえる文化ができてきます。

コラボは両者のメリットを活かして積極的に!

もちろん少しずつ自社ブランドを築いていくのも良いのですが、初期は知名度がないので時間がかかります。この時インフルエンサーなどに頼んで、宣伝してもらう方法もありますが、予算を考えないといけません。

そこで他社さんやまだ知名度が低い個人 SNS 運営者などとコラボし、両方のメリットを保ちながら、お互い win – win のやり方もよく見られます。日本の Twitter にも見られる業者同士が冗談を言い合う感じで、他業者や個人運営者とコラボし、ユーザーに楽しんでもらうことを目的としてみてください。

SNS を運営しない運営法

最後、「台湾の SNS は活用したいけど、SNS を運営する時間がない!」という場合です。

この場合、自社で SNS を運用するのではなく、インフルエンサーに頼んでプロモーションしてもらうのが一番効率的です。しかし色々なインフルエンサーがいますので、自社にとってどの方法が一番ふさわしいのか、慎重に考えましょう。

台湾のインフルエンサーは、大きく3種類に分かれます。

「YouTuber」「ブロガー」、そして記事の最初に触れた「図文作家」です。YouTuber とブロガーは日本にもよく見られるので、ここは台湾特有の図文作家を紹介します。

台湾の図文作家は Facebook ファンを大量に抱えており、自分のプライベートや日常の面白いことなどを漫画やアニメーション、動画を投稿しています。業者の広告案件も受けており、つくったものは図文作家自身及び業者の Facebook ページに投稿します。ファンが大量に集まっているためインプレッション効果が大きく、台湾ではよく使われている広告手法の一つです。

私がよく見る図文作家の Facebook ページをご紹介します。

辛卡米克 – https://www.facebook.com/sinkcomic/

辛卡米克さんは猫を飼っているため、漫画の中に猫がよく登場します。猫派のファンにとってはたまりません。ユーモアな漫画で、猫を擬人化し、日常生活を表現するのが得意なようです。たとえば以下は、マウスの動画広告です。

https://www.facebook.com/sinkcomic/videos/2005432759469387/

百鬼夜行誌Black Comedy – https://www.facebook.com/hiphop200177/

ホラーや妖怪をメインとする図文作家です。座右の銘は「怖いとおもろいは紙一重」で、日常現象などを妖怪化や怖い話にするのを得意としています。しかし最後はいつも会心の笑みを浮かべるような仕掛けがなされているので、ファンがとても多いです。

賴賴 & 織織 – https://www.facebook.com/LailaiChichi/

イケメン&美女カップル図文作家として有名で、カップル生活などがメインです。広告依頼を漫画にするのはもちろん、モデルレベルの外観を持つ二人が自ら広告出演することもよくあります。

これらの図文作家以外にも、たくさんの図文作家が存在しています。自社商品の特徴に一番合うインフルエンサーを探し出し、徐々に知名度を高めていきましょう。

まとめ

今回は少し具体的に台湾の SNS 運営法を紹介しました。台湾の人にとって SNS は、自社で運営するにしても、インフルエンサーに頼むにしても、「企業より個人」という考え方が共通しています。

しかし個人といっても、日本でよくある「綺麗なプロっぽい写真を使い、プロフィールを詳細に書いて、ビジネス雰囲気全開でアピールする」のは、台湾では通用しません。「自分もあなたと同じ人間、同じ立場だから一緒に楽しもう!」と感じさせことが何よりも重要です。

そのために必要なことを押さえた上で、SNS の本意である「ソーシャル・ネットワーキング・サービス」として、ユーザーと楽しく交流しましょう。

デジタルマーケティングを基礎から総合的に学ぶには

Google アナリティクスをはじめとしたGoogle系のツールは、その使い方を知ることも大切ですが、使うための戦略や設計が必要です。それは、ビジネスに成果をもたらすために必須の考え方です。

ウェブ解析士協会では、このようなデジタルマーケティングの基盤となる「ウェブ解析」を体系的に学べる環境と、知識・技術・技能に一定の評価基準を設け、あらゆるデータから事業の成果に貢献する人材を育成しています。

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この記事を書いた人

台湾出身。大学期間に琉球大学一年間交換留学終了後、台湾国立雲林科技大学機械工学科卒業。台湾のホイールメーカーに入社し、日系車担当エンジニアを経験し、再び来日。旅行会社一社を経て、WordPressでブログを立上げ、主に沖縄文化歴史関係の情報を発信。
2017年にウェブ解析士・ウェブデザイン技能検定3級・宅地建物取引士を取得。

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