たかがメルマガ、されどメルマガ!アパレルブランドのECサイト売上を対前年比で2.3倍にした、ブランド戦略に沿ったメルマガ運用とは

こんにちは。ブランディング・マーケティングに関するコンサルティング事業を展開している、株式会社ピージェーエージェント代表取締役の加藤です。

今回は、アパレルブランドのECサイト売上を対前年比で2.3倍にした、メールマガジンの運用事例をご紹介します。

企業からお客様へ直接アプローチできる貴重な手段の一つであるメルマガは、まだまだ有効な販促施策の一つです。メルマガ運用における各種KPI設定の実例や、効果を最大化するためにテクニックよりも大切なことなど、成果につながるメルマガ運用に関するお話です。

目次

メルマガは時代遅れ?

創業10年以上の歴史をもつアパレルブランドのA社は、実店舗での販売をメインとして今まで事業を展開してきました。ECサイトも運営はしていたものの、実店舗での販売の片手間程度に細々と実施をしている程度でした。しかし、インターネットが普及してきた昨今の時代背景をふまえて、本格的にECサイトの運営に力を入れていく必要性を感じ、弊社にご相談を頂きました。

A社の現状のマーケティング活動をヒアリングする中で見えてきた問題点は、「企業側からお客様に対してのアプローチをまったく実施していない」ということでした。実店舗でのポイントカード(スタンプカード)は発行をしていたものの、発行時に個人情報を取得するということは行っていませんでした。ECサイトでも、購入者のメールアドレスの取得(リスト化)なども特に実施しておらず、「自社の顧客リスト」というような考え方はまったくありませんでした。お客様が自分のタイミングで実店舗やECサイトへ訪れてくれるのを待つ、完全な「プル型」の販売スタイルです。

そこで、弊社がA社にご提案をしたのは「メルマガの発行」でした。「メルマガなんて、今さら時代遅れでは?」という声をよく聞きますが、私個人の見解としては、メルマガはまだまだ有効な販促施策の一つだと自信を持って断言できます。弊社のクライアント様では、メルマガ経由での売上が、全体売上の30%以上を占めるという企業様もいらっしゃいます。

メルマガは、「一度自社の商品やサービスを購入してくれたお客様」に対して、企業から直接アプローチできる貴重な手段の一つであり、特にアパレルや食品などとは相性が良いと言えます。また、お客様の属性(年齢、性別、都道府県など)や時間帯を見ながら、開封率や購入率などを分析することで、定量的な数値を使って改善を図っていくことができる点もメリットして挙げられます。

各種KPI設定の実例

A社でのメルマガ会員の集め方は非常にシンプルです。まずは、実店舗にてポイントカード(スタンプカード)を発行する際に、必ず氏名とメールアドレスを聞くようにしました。また、ECサイトでの購入者には、購入手続きの途中でメルマガ会員の登録を促すようにしました。

「メルマガ登録で特別ポイントを付与」「メルマガ会員限定の特別クーポンの配布」など、メルマガ登録を促す施策を実施し、「購入者の70%をメルマガ会員にすること」を目標にメルマガ会員を集めていきました。

メルマガを有効活用して売上向上につなげるには、KPIを設定して配信結果を検証し、PDCAを回すことが最も重要です。A社では、以下の指標を目標KPIとして設定し、効果測定と改善を繰り返していきました。

  • 購入者のメルマガ会員登録率:70%
  • 配信数に対するメルマガ開封率:20%
  • 開封数に対するメルマガ内URLクリック率:20%
  • クリック数(ECサイト訪問数)に対する購入率:10%

各種KPIをメルマガの発行毎に計測し、「何がよかったのか」「何がダメだったのか」ということを、時には経営者も交えながら議論をし、愚直に改善を続けていきました。

まずは開封してもらうこと

メルマガは、まずは開封してもらわなければ意味がありません。どんなにメルマガの本文中に魅力的な文章や写真を載せていても、開封してもらわなければお客様の目に触れることはないのです。

そのため、A社で最も重要視したKPIは、「開封率」でした。お客様が最もアクティブになる時間帯を見つけて、配信時間や曜日を調整したり、お客様が思わず開いてしまうような「件名」を考えることが大切です。

1:メルマガ配信時間の工夫

開封率を高めるために、まず取り組んだことは「最適な配信タイミングを見つけること」でした。

A社では、最適な配信タイミングを考えるにあたり「自社ECサイトで最も購入者が多い時間帯」をゴールデンタイムとして、その時間帯にメルマガを配信するようにしました。

自社ECサイトの販売データから、「土曜日の夜8:00前後が最も購入者が多い」というということが分かったので、その時間帯にメルマガを配信するようにしたのです。現在でも、毎月販売データを確認しながら、実績に合わせて細かな配信時間のチューニングを行っています。

当然といえば当然なのかもしれませんが、たったこれだけでも、開封率は5%以上改善しました。

企業側の都合で、適当にメルマガの配信時間を決めている企業様は、ぜひ、「自社ECサイトで最も購入者が多い時間帯に配信する」ということを実施してみてください。

2:メルマガ件名の工夫

メルマガの開封率は「件名」で大きく変わります。メール本文の文章や写真に力を入れている担当者様も多くいらっしゃると思いますが、それらは、まずメルマガを開封してもらわなければ何の意味がありません。ですから、メルマガにおいて最も力を入れるべきは「件名」であると言っても過言ではありません

ここでは、A社で色々と試行錯誤をする中で見えてきた「開封率を高めるためのメルマガ件名のポイント」をいくつかご紹介します。

お客様の名前を入れる

昨今のメルマガ発行システムでは、差し込み変数を使って、それぞれのお客様の名前を入れることができるものが多いと思います。「鈴木様への特別限定商品のご案内」「佐藤様にオススメの春のコーディネート」など、お客様の名前を件名に入れることで開封率のアップを狙えます。

記号を多用しない

「【ポイント5倍!】★☆夏休みキャンペーン★☆ABCショップのお得なご案内◆◆」など、【】や★、◆などの記号による装飾を多用してしまうと、「プロモーション感」が出過ぎて、開封率が下がってしまいます。本当に強調したいことがある場合など、限定的に使用するのであれば良いとは思いますが、日常的に多用することは避けましょう

限定感・緊急性を訴求する

「期間限定」「会員限定」「夏休みの特別案内」「xx日間の限定販売」「あとxx日でポイント失効」など、限定感、緊急性を訴求した件名にすることで、開封率が上がります。ただし、毎回そのような煽った件名にしてしまうと、お客様に「またか・・・」と思われてしまいますし、不快に感じてしまう恐れもありますので注意が必要です。ここぞというタイミングでメリハリを持たせて、限定感・緊急性をアピールしましょう。

季節やトレンドのキーワードを入れる

「お花見シーズンに最適な・・・」「この夏休みに海に持っていきたい・・・」など、季節やトレンドのキーワードを入れると開封率のアップを狙えます。Google トレンドなどの人気検索キーワード調査ツールなども活用しながら、世の中の関心が高いイベントやトレンドに沿ったキーワードを探して件名に入れることも効果的です。

テクニックよりも大切なこと

メルマガの件名や本文を考える上で最も大切なことは、「自社のブランド戦略に合ったものにする」ということです。上記の件名のテクニックなどは、もちろんTipsとしては有用ですが、必ずしもすべての企業に当てはまるものではありません。また、小手先のテクニックを使って開封率を高めたところで、最終的な購買までつながらなければ意味はありません。

そこで本当に重要になるのが、自社の商品(ブランド)をお客様にどのような印象で感じて欲しいのかという「ブランドアイデンティティ」を明確にすることです。「真面目で誠意のあるブランド」としての印象を感じて欲しいのであれば、長文で一つの商品についてじっくりと説明をするようなメルマガにしても良いですし、「デザインが素敵なブランド」としての印象を感じて欲しいのであれば、派手な写真や画像をメインとした視覚に訴えるメルマガにしても良いと思います。一概に、「文字数は何文字が良い」とか「こんな表現手法を使うと良い」といったような単純な話ではありません。

A社においても、各種KPIの向上に向けて、一般的に言われている様々なテクニックやTipsを参考にしながら、色々と試行錯誤を実施してきました。もちろん、何も考えずに適当にメルマガを発行するよりは、それらのテクニックを参考にした方が確実に成果は出ます。メルマガ運用の最初の一歩としては、「世の中にあるテクニックを真似ること」が有効であるのは間違いありません。しかし、さらにそれ以上の成果を出そうと思った際には、「ブランド戦略に沿った、自社らしいおもてなしのメルマガ」を考える必要が出てきます。A社でも、各種KPIの伸び悩みの際には、毎回自社のブランドアイデンティティに立ち返り、「お客様が自社のブランドに期待するメルマガとはどういうものだろう」と常に考え続けることで、今も改善をし続けています。

ブランド戦略に沿ったメルマガ運用によって、なんとA社のECサイト売上は対前年比で約2.3倍にも向上しました。たかがメルマガ、されどメルマガです。まだメルマガを発行していない企業様は、ぜひメルマガの発行を実施してみてください。

また、思うようにメルマガの効果を出せていない場合は、小手先のテクニックだけに踊らされるのではなく、一度自社のブランド戦略に立ち返って「お客様が自社のブランドに期待するメルマガとはどういうものだろう」と考えみてください。何か新しい気づきがあるかもしれません。

デジタルマーケティングを基礎から総合的に学ぶには

Google アナリティクスをはじめとしたGoogle系のツールは、その使い方を知ることも大切ですが、使うための戦略や設計が必要です。それは、ビジネスに成果をもたらすために必須の考え方です。

ウェブ解析士協会では、このようなデジタルマーケティングの基盤となる「ウェブ解析」を体系的に学べる環境と、知識・技術・技能に一定の評価基準を設け、あらゆるデータから事業の成果に貢献する人材を育成しています。

メルマガ戦略

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この記事を書いた人

株式会社ピージェーエージェント代表取締役。中央大学理工学部卒業後、NTTコミュニケーションズ株式会社に入社。IT・WEBを活用したデジタルマーケティングに関する法人企業向けコンサルティング業務に従事。顧客の購買プロセスに基づいたマーケティングシナリオ設計、メールマーケティングを基軸としたCRMコンサルティング等、法人企業の売上向上に寄与するコンサルタントとして活躍。その後、2016年、株式会社ピージェーエージェントを設立、代表取締役に就任。ブランド戦略の立案を強みとして、ブランディング・マーケティングに関するコンサルティング事業を展開している。

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