中国と日本のデジタルマーケティング市場、何が違うの?

大家好!我是百度(Baidu)日本的国井雅史。初めまして、こんにちは。百度(Baidu)日本法人の國井雅史です。バイドゥ株式会社の国際事業部という部門で、中国デジタルマーケティングに関するコンサルティングを主な業務としています。

近年、「越境EC」や「インバウンド」という言葉をよく耳にするようになったと思いませんか?中国デジタルマーケティングの重要なビジネスターゲットです。

今回より、注目に値する中国市場の今を、わかりやすくお伝えしていきます。

目次

越境EC、インバウンドとは?

越境ECとは、Eコマースサイトを通じた国際間の電子商取引を指します。もともとインターネットは国際間の通信手段なので、なぜわざわざ「越境」と呼ぶのか疑問に思うかもしれませんね。実は国を跨いだ商取引には関税や物流といった、日本国内のEコマースとは異なる課題があります。加えて、ターゲットである消費者は商品を提供する側と異なる文化、市場で生活しています。「越境」という言葉には、ビジネス課題、複雑さが含まれているのです。

インバウンドは、外国人が日本に旅行にくることを指しています。日本に来る、或いは来ている外国人旅行客がターゲットになります。モバイル時代、情報は欲しいときにすぐ手に入るものです。旅行者は旅先の決定前から、旅の目的・旅行料金・ビザなどに関する情報収集を始めます。渡航先が決定し旅程を計画する際には、膨大な情報の中から、いつ・どこで・何をするのか、おおよその意思決定を済ませてしまいます。つまり、インバウンドの市場で優位に立つためには、日本に来る前に、競合に先んじて商品説明やブランドイメージといった「情報」を、異なる文化で生活する消費者に届けることが必要となります。

越境EC、インバウンドの市場規模は?

日本における越境ECやインバウンドの市場規模は年々拡大しており、ビジネスチャンスとして取組みを始める企業も増え続けています。そして、市場拡大をけん引しているのは中国です。

図1:訪日中国人客数

2016年の日米中間における越境ECの市場規模は前年比24.9%増の3兆4549億円でした。そのうち、中国からの購入が前年比32.6%増の2兆1,737億円で取引全体の62.9%を占めています。なお日本からの購入は前年比23.9%増の1兆6522億円です。(METI,2017年4月)

参考:「平成28年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」調査結果要旨 平成29年4月24日 経済産業省

インバウンドでは、2016年の訪日外国人客数は前年比21.8%増の2403.9万人、うち中国本土からの旅行客が最も多く637.3万人で全体の26.5%を占めました。台湾が416.7万人で17.3%、香港が183.9万人で7.7%。中国語圏の旅行客が実に全体の51.5%を占めています。(JNTO,2017年1月)

参考: 2016年過去最高の2,403万9千人 訪日外客数(2016年12月および年間推計値)平成29年1月17日 日本政府観光局

数字が示す通り「ウェブサイト」の運用担当者にとっても、日中間のビジネス拡大は、無視できない時代になりました。中国語のウェブページを作成するなど、中国マーケットに本腰を入れて向き合おうとする企業が増加しています。

さらに数字で見る中国デジタル市場の面白さ

中国といえば、何を思い浮かべますか?「パンダ」「ラーメン」「上海」「ニーハオ」「漢字」といった文化的な側面が多いのではないでしょうか?日常生活では「中国」を意識して生活することは多くないので、改めて問われると回答に窮するのではないかと思います。国土の広大さや、13億人という人口規模など日本人にはなかなか想像しにくく、マーケットとして手強い印象を抱くところです。もちろん、外国なので言語という壁もあります。

そこで、まずは数字から中国デジタル市場の特徴を見ていくことで、なるほど感を醸成していただけないか……と考えました。では行ってみましょう!

10の数字でみる中国デジタルマーケット

【1】1.08億人……広東省の人口規模

中国で最も人口の多い省市区は広東省で1.08億人。インターネット人口は8,024万ユーザー(普及率:74%)。広東省は香港、マカオの両特別行政区に隣接しています。ハードウエアスタートアップの製造拠点で有名な深セン市がある省です。域内総生産額は7.28億元(2015年)で上海市、北京市の約3倍規模で中国トップ!一方、日本の人口は約1.27億人で、インターネット人口は約1億ユーザー(普及率:83.0%)です。中国のユーザー規模が理解できる比較対象ですね。

【2】7.31億ユーザー……中国インターネット人口

図2:インターネットユーザー数と普及率

中国のインターネット人口は7.31億ユーザーで、なんと日本の7倍超。都市部が5.31億ユーザー(前年比7.7%増)、農村部が2.01億ユーザー(同比2.7 %増)。性別は、男性が52.4%、女性が47.6%となかなか良いバランスが取れています。年齢別では10歳未満が3.2%、10-19歳が20.2%、20-29歳が30.3%、30-39歳が23.2%、40-49歳が13.7%、50-59歳が5.4%、60歳以上が4.0%。一般に消費活動が活発な世代がコア層ですね。モバイルインターネット人口は前年比10.9%増の6.95億ユーザーに成長し、3年連続で10%超の増加率となっています。

【3】53.2%……中国インターネット普及率

図3:中国国内インターネット普及率

中国のインターネット普及率は53.2%で、日本のインターネット普及率は83.0%です。地域格差があるようです。省市区別でみると、北京市が最も高く77.8%(前年比2.6%増の1,690万人)、次いで上海市が74.1%(同比1.0%増1,791万人)、広東省が74.0%(同比3.3%増8,024万人)。3大経済圏の普及率が、74%超で全国水準より20%程度高くなっています。2016年ユーザーの増加率でみると、福建省のお隣にある内陸の江西省(こうせいしょう)がトップで同比15.7%増、安徽省(あんきしょう)が同比13.6%増、貴州省(きしゅうしょう)が同比13.2%増となっています。

【4】3.7時間/日……中国インターネット利用時間

中国の1人当たりインターネット利用時間は3.7時間(222分)/日。2012年は2.9時間(174分)/日で、4年間で1日当たりの利用時間が0.8時間(48分)伸びた計算です。動画や音声のサービスがトレンドになった影響がありそうですね。2016年の中国インターネット人口は2012年比1.67億ユーザー増の7.31億ユーザーのため、1日あたりのインターネット総利用時間としては4年間で10億6,910万時間増えたことになります。インターネットの用途の広がりを感じますね。

【5】6.02億ユーザー……中国検索ユーザー

図4:中国検索エンジンユーザー数

図5:中国検索エンジン浸透率

中国における検索サービスユーザー数は前年比6.4%増の6.02億ユーザーで、利用率は82.4%。モバイルは前年比20.4%増の5.75億ユーザー。サービスごとの内訳は百度検索の使用率93.1%、360検索37.0%、捜狗検索35.8%(2015年末時点)。モバイルでは、百度検索が87.5%、捜狗検索が22.7%、360検索が20.9%。検索サービスの利用時間帯は、8:00〜16:00がボリュームゾーンで全体の70%を占めます。利用シーンではPCでは「仕事・勉強時」が74.9%でトップ。「外食ニーズ時」の場合PCが32.6%、モバイルが52.4%と最も差が大きいシーンです。

【6】83万9,640回……検索数でみる「富士山」

2016年に百度検索で「富士山」というキーワードが検索数された回数です。単月で最も検索数が多かったのは7月で80,192回(前年同月比6.3%増)、最も少なかったのは1月で56,797回(同比23%増)。デバイス別でみてみると、PCが330,776回(同比8.6%増)、モバイルが508,864回(同比15.9%増)。省市区別にみてみると、1位:広東省、2位:上海市、3位:江蘇省(孫悟空の生まれた花果山があります!)、4位:北京市、5位:浙江省(世界遺産西湖のある省)の順で、5地域の検索数合計が全体の約46.8%。

【7】200ワード……検索クエリでみる「富士山」

「富士山」というキーワードを含む検索ワードは200ワードあり、合計検索数は359,210回。「富士山天气(富士山のお天気)」「富士山旅游攻略(富士山旅行の攻略)」「富士山一日游(富士山で一日遊ぶ)」などが上位です。中国語の検索ワードには、大きく2つの特徴があります。(1)スペースを使わない(2)文章でも調べる です。キーワードにスペースを入れて検索した回数は約4%程度。つまり「富士山 天气」ではなく、「富士山天气」と調べます。文章で調べる例としては、「富士山是活火山?(富士山は活火山ですか?)」、「箱根到富士山交通(箱根から富士山までの交通)」など疑問文で検索するといった傾向があります。

【8】1.22億人……中国人海外旅行者数

2016年中国から海外への旅行者数は前年比4.3%増の延べ1.22億人に達しています。渡航先トップ3は、1位:タイ、2位:韓国、3位:日本で、同3か国への旅行者数が全体の18.7%を占めました。4位以降は、インドネシア、シンガポール、アメリカ、マレーシア、モルディブ、ベトナム、フィリピン。出発地別でみると、1位:上海、2位:北京、3位:深セン。4位以降は、広州、杭州、成都、南京、天津、武漢、重慶と新一線都市(経済、政治、学術などの指標による総合評価で定義)がけん引しています。

【9】2兆9,000億米ドル……中国デジタル決済額

2016年の中国デジタル決済でAlipay(阿里巴巴アリババのサービス)とWeChat Pay(腾讯テンセントのサービス)の合計決済額が2兆9,000億米ドルに達し、4年間で約20倍に増加しています。中国モバイル決済サービスは、前年比31.2%増の4.69億ユーザー。オンラインでの利用以外にも、レストラン、スーパーマーケット、コンビニなど実店舗での利用が進んでおり、利用率は四線都市(経済、政治、学術などの指標による総合評価で定義。一から五線都市まであり、一線都市は北京市、上海市、広州市、深セン市)で43.5%、五線都市で38.0%、農村地域で31.7%と、6%程度と言われる日本での普及率に比べ圧倒的な市場規模に成長しています。

【10】4.67億ユーザー……中国ネットショッピングユーザー

中国のネットショッピングユーザーは前年比12.9%増の4.67億ユーザー。海外ECサイトの利用者は4,091万ユーザー(2015年末時点)なので、全体の10%程度に相当しています。日本、アメリカ、イギリス、ドイツ、韓国などの海外ECプラットフォームが人気です。アリババグループが毎年11月11日に主催する「Global Shopping Festival」は中国ECマーケットを代表するイベントとして知られています。2016年は24時間で過去最高の1,207億元(前年比32%増)を達成。総オーダー数は6.57億回、決済取引数は10億回と驚異的な規模です。

データソース

  • 『中国データ・ファイル 2016年版』, ジェトロ, 2016年8月
  • 『人口推計』, 総務省統計局, 2017年4月
  • 『平成28年版 情報通信白書』, 総務省, 2016年7月
  • 『中国互联网络发展状况统计报告』, CNNIC, 2017年1月
  • 『2015年中国网民搜索行为调查报告』, CNNIC, 2016年4月
  • 『2015年中国网络购物市场研究报告』, CNNIC, 2016年6月
  • 『向中国游客致敬——2016 年中国出境旅游者大数据』, 中国旅游研究院, 2017年1月

 

次回も中国のデジタルマーケティングを、馴染み深いところからご紹介していきます。お楽しみに!

デジタルマーケティングを基礎から総合的に学ぶには

Google アナリティクスをはじめとしたGoogle系のツールは、その使い方を知ることも大切ですが、使うための戦略や設計が必要です。それは、ビジネスに成果をもたらすために必須の考え方です。

ウェブ解析士協会では、このようなデジタルマーケティングの基盤となる「ウェブ解析」を体系的に学べる環境と、知識・技術・技能に一定の評価基準を設け、あらゆるデータから事業の成果に貢献する人材を育成しています。

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この記事を書いた人

国際事業部 中国ビジネスコンサルタント マネージャー。北京大学(社会学部)卒業。SBIサーチナ株式会社に入社。株式会社マクロミルを経て、2014年にBaidu Japan Inc.(バイドゥ株式会社) に入社。現在、国際事業本部にて中国ビジネスコンサルタントとして、中国Webマーケティングを中心に、越境EC、インバウンド、日系企業の中国ビジネス支援などの業務に従事。

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