これからのウェブ解析とUXの関係を江尻理事が語る~UX Days Tokyo主催者よりインタビューされました

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ウェブ解析士協会の代表理事をインタビュー

自己紹介をお願いします。

  • 江尻 俊章
  • 一般社団法人ウェブ解析士協会代表理事

ウェブ解析士協会事務局の江尻です。
2000年からアクセス解析による解析と開発ツールの開発をしており、2010年からはウェブ解析士協会を設立、カリキュラムを作り、アクセス解析をする人材育成をしています。

アクセス解析のデータと「ユーザーの心」

アクセス解析のデータから「相手の心」「ユーザーの心」を判断できないのでしょうか?

ブログを読ませていただいて、共感した言葉がありました。
「どんなに巧妙なマーケティングテクノロジーを駆使しても、相手の心をつかむことができなければ、たいてい嫌悪感しか生まない。」アクセス解析のデータから「相手の心」「ユーザーの心」を判断できないと考えていますか?

アクセス解析を使ってサイトを改善するということで言うと、第一段階として、離脱率、直帰率、CVRなどの数値を使って、問題のあるページを直すというのがよく行われる手法です。

ただ、それだけだと、結局本当にユーザーが満足しているか判断するのは難しいです。つまり、ユーザーの心を判断することができません。

ユーザーをセグメントして、その「ユーザーに合った情報を提供できているかどうか」などの深い部分の分析や改善をしたい場合、どの施策がユーザーの満足度を上げるために貢献したかを、こと細かに測定しないと高い精度で結果を出すのは難しいと考えています。

よって、ユーザーの満足度を起点に考えることから始めることが必要であると考えています。アクセス解析の数値のみでユーザーの満足度を判断することは非常に難しいと考えています。

マーケターの考え方の転換

マーケターの考え方の転換が難しいと感じたことはありますか?

アクセス解析の定量的なデータは、体験を数値化できないですが、「PVやコンバージョンイコール満足度」のような方法でいままでマーケティングをしてきた方々が、考え方を切り替えるのに難儀しているように感じたのですが、どうお考えですか?

従来のアンケートなどの標本調査と違い、アクセス解析は、全数としてデータが取れてしまいます。これが良くも悪くも、理解を難しくしている一因になっているように思います。全部の数字が取れているから、それが全てだと思ってしまう。

でもアクセス解析のデータだけを眺めても何もヒントは得られない。集計された全体のデータでは観察も洞察も困難だからです。

UXの分析手法は、特定のユーザーを観察する、洞察することによって、ユーザーの満足度につながることを探る方法ですよね。一人の挙動に対する深い洞察をするアクセス解析と反対のアプローチです。

それはかなり価値の高い優秀な施策だと認識しています。ただ、UXは数値化しづらいが為に、周りの理解を得にくい場合があるんじゃないかと思います。

経営者のような事業の成果につなげる方は、いままで数値を判断材料にしてきたので、意思決定しにくいこともあると思います。そこをアクセス解析のような数値的なデータで補完することで、説得力を持たせることが可能なのではないでしょうか。

UXへの興味

UXに興味があると聞きましたが、どんな部分に興味がありますか?

先ほどの話しにも繋がるのですが、一番接点があるのが、UXメトリックスです。

ユーザーの満足度をどのようにして測定するか。結局、どのようなものがユーザーの満足度をあげていくのかを測定していくのが大前提で、いろいろな手法があり、そのひとつの手法の部としてアクセス解析があると考えています。

UXの手法をしっかり理解して、アクセス解析で得た全数データーを統計的思考等でうまく使っていくことが、大切なスキルになると考えています。

UXを意識した具体的な施策

アクセス解析によって得たデータをもとに、UXを意識した具体的な施策などは過去にありますか?

コンセプトダイアグラムなどの手法を用いて、ユーザとクライアントの両面からどのようなアプローチが態度変容を促すのか図示した上で数値情報を定義しています。

ウェブ解析士協会のカリキュラムでも上記の手法が入っているのですか?

UXの現場にはカスタマージャーニーマップなどを使った解析などがあると思うのですが、ウェブ解析士協会の上級のカリキュラムではカスタマージャーニーマップとコンセプトダイアグラムを使い、ユーザーの行動をセグメントしてアクセス解析を行って、単純に「CVが上がった下がったではない部分」を読み取れるようにしましょう、という指導をしています。

またNPSなどの手法で満足度測定も紹介しています。上級ウェブ解析士は合格するためにそれぞれレポートする義務があります。

これからのデジタルマーケティング、サービス

これからのデジタルマーケティング、サービス等はどのようになっていく必要があると感じていますか?

現在のデジタルマーケティングは、アドテクノロジーも含めて、ユーザの挙動や属性に応じた配信を細かく設定できるようになっています。

例えば、結婚相談を検索したら、どのページを見ても追っかけてくる結婚相談のバナー。
おっかけマーケティングと言われて、しつこく営業をかけるようなスタイルの方法になってしまっています。そのしつこさにユーザーは飽きてしまうと思います。

CVや売上だけを見ていると、やはりそうなってしまうんです。

このような手段は最終的に、ユーザーには嫌がられます。そして、行き着く先は、予算と瑣末なテクニックによるレッドオーシャンの戦いにしかならないのではないでしょうか。

現在は色々な技術が進化して、より細やかな情報を取得したり、解析することができるようになってきています。これらを活用して、ユーザーやカスタマーの満足度上げていく、ユーザーのことをちゃんと考えていくマーケティングがとても大事です。デジタルが最も身近なメディアになった現代、私たちデジタルマーケータはお客様に好きになってもらうための当たり前の、本当の意味でのマーケティングをしていく必要があるのです。

例えば、ZOZOTOWNでは、住所変更すると住宅に関する(ZOZOTOWN風の部屋の模様がけ)情報を提供しています。売り込みじゃなくユーザがもっと好きになってくれる情報が、ユーザーにとって必要であったり親切であると考えて発信しているのです。

ひと昔であれば、テレビやラジオで知ったものを店頭に並べれば売上に繋がっていけたので良かったのですが、いまはウェブで自在に情報を取得するのが当然の時代です。

いい印象を与えるとか、面白い商品だなと思わせるために、私達のテクノロジーを使っていくべきなのです。テクニック主体の施策では、ユーザーの満足を得ることができず、結果売上にもつながらなくなるでしょう。 テクノロジーは、ユーザーの満足度を上げるために活用することが重要なのです。

編集後記

ユーザーの心理はアクセス解析から読み取れないですが、行動の軌跡は見ることができます。

UXの道具やアクセス解析のどちらが優位なツールではなく、両方を上手に利用する必要があると改めて感じることができました。とは言え、日本ではUXの定性データーを取り入れる方法がまだまだであるように感じています。

UX Days Tokyo 2017では、定性データをどのように取得するのか?そして、どのように活かす事ができるのか?を学ぶことができるエリカさんのワークショップがあるので興味がある方は参加されてはどうでしょうか。

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江尻 俊章
WACA一般社団法人ウェブ解析士協会代表理事 2000年、株式会社環を創業、2016年株式会社 環 取締役会長退任。業界ではもっとも早い時期からアクセス解析に着目し、アクセス解析を軸にしたコンサルティングを行っている。 アクセス解析ASPサービス「アクセス刑事Pro」、「シビラ」を自社開発、運営、アクセス解析からエリアマーケティングを行う「エリアレポート」を提供している。 著書に「稼ぐホームページ損なホームページ―アクセス解析で一発判明!」「繁盛するWebの秘訣「ウェブ解析入門」 ~Web担当者が知っておくべきKPIの活用と実践」がある。