ウェブ解析士協会のアナリティクス導入をコンセプトダイアグラムで分析

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#2 アナリティクスの要件定義は図解が効果的

~図解によってわかったこと~

今回から、ウェブ解析士協会へのアナリティクス導入プロジェクトを実際にどう進めたかについて具体的に解説していきます。最初に、要件定義としてのコンセプトダイアグラム活用について、ご紹介します。

ウェブ解析士協会のウェブサイトにAdobe Analyticsを導入するにあたり、計測して分析する指標を定義するために、コンセプトダイグラムを作成することになりました。データをビジネスで活用するためには、戦略や戦術を踏まえた上で、追うべきデータとその活用方法を定義する必要があります。

ウェブ解析のツールが標準的に提供する「ページビュー」「セッション数」「直帰数」といったシステム都合のデータだけでは、有意義な意思決定にはつながりません。そもそも、ウェブ解析のツールはウェブ上の行動データという限定的なデータしか取得できません。それ以外にどんなデータを統合する必要があるのか、という広い視点で現状と理想をコンセプトダイアグラムを作成する過程で整理しました。

まず、ターゲットユーザーが何を価値と感じているのか、そして協会の役割など議論を繰り返しながら「ウェブ解析士」という資格制度の現状、目指す方向性、課題を整理しつつ、出来上がったのが以下の図(コンセプトダイアグラム)です。

図解において込めた意図、改めて再認識できたこと、得られた発見についていくつか紹介します。

■理念や優位性を意識したビフォーアフター

まず、どんな状態の人にどうなってもらいたいのかを考え、スタート地点とゴールを定義しました。

「会員を増やす」「売上目標を達成する」などは中間的なゴールでしかないので、企業理念や存在意義、強豪との優位性を意識しながら長期的なゴールを設定しました。

また、カスタマーアナリティクスでは顧客に自然で心地よい体験を提供することが重要なので、「解析(って)いいね(と漠然と思う)」「活躍する」と、顧客の視点でスタートとゴールを表現しました。

ただし、顧客のニーズだけでゴールを決めてしまうと、企業のパフォーマンスを評価しにくくなってしまいます。そのため、企業(団体)として望む顧客の最終状態を顧客視点で表現することが重要です。

スタート地点の「解析いいね」は、就職または転職を意識している人が様々な業界や職種を検討する中で、「伝統的なマーケティングよりもデータ系の方が将来性がありそう」「クリエイティブに限界を感じているので分析・解析の道に進むのも良いかも」等と可能性を感じ始めた状態を簡潔に表現しました。

ゴールに「顧客視点の」と入れたのは、専門知識を振りかざすのではなく、データを活用しながらクライアントやその先の顧客(消費者)を理解し、寄り添う形で提案ができるような人が増えて欲しい、という運営側の想いを表現しました。その想いがあるからこそ、ウェブ解析士のプログラムは単なる解析ツールの使い方を超えて、戦略や顧客を理解するための考え方や手法が大きく取り上げられています。

また、「解析士として活躍」と表現したのは、転職やキャリアUPのために資格を取ることを目的とするのではなく、得られた知識とスキルを実際に使い、成果を出せるようになってほしい、という想いを込めました。

■顧客の態度変容を要因で分解する

スタートとゴールを定義すると、企業として推進すべき顧客の変化が明確になります。どんな状態の人にどうなってもらいたいのか?それをさらに具体化するため、何が高まるとゴールに近づくのか、という変化の要因を縦と横の軸で分解しました。

理想と現状のギャップ、課題を踏まえて設定したのが「人とのつながり(の強さ)」と「実力・実績」です。ウェブ解析に興味を持った人がコミュニティに参加し、仲間を見つけて共に学び、影響を与え合いながらレベルアップしていくのが横軸、学び、実践しながら実力を高めていき、それに伴って実績も増えていくのが縦軸です。

縦横の両方の要素が高まらないと、ゴールに到達することができないことを確かめながら、ゴール到達のための要素を十分に異質な2つの要素に分解することが重要です。たとえば「人とのつながり」だけが増えて、実力が伴わない人は、単なる「人脈だけの人」になってしまいます。逆に「実力・実績」は優れているのに人とつながらない人は「孤高の研究者」になってしまい、活躍の場が制限されてしまいます。一方の軸だけを振り切った状態を「ピットフォール(落とし穴)」として定義し、図の上に書き込むようにしました。

この2つの軸をどう設定するかには、企業として顧客をゴール達成に向けてどう導くのか、という意味でのコンセプトが色濃く反映されます。

つまり今回は、ウェブマーケティング関連の資格制度がいくつかある中で、ウェブ解析士の特徴は、

  • 顧客視点を重視する
  • 実務で役立つ実践的な資格である
  • 仲間と学び、対話し、協業できる

という点がユニークな特徴であり、課題でもある、ということをゴールと軸で表現しました。

■顧客のストーリーを物語る

ゴールと軸の設定によって、企業(団体)が望む顧客の変化が明確になりました。

次は、その変化を起こすために、企業として顧客をどのように導くのか、というストーリーを具体化します。そのストーリーの中で、企業が行う各種の施策(集客やコンテンツ、接客など)が位置付けられるはずです。

そこで、顧客の行動や気持ちの変化を「ステップ」で分解し、矢印でつなげることでストーリーを組み立てていきました。

顧客視点で表現し、自然な流れを作るために、主語を顧客にしています。また、起こしたい変化を明確にするため、「訪問」「申込」「購入」といった手段としての行動ではなく、その手段の先にある目的としての行動や気持ちの変化をステップにするようにしました。

スタート地点の「解析いいね」は、就職または転職を意識している人が様々な業界や職種を検討する中で、「伝統的なマーケティングよりもデータ系の方が将来性がありそう」「クリエイティブに限界を感じているので分析・解析の道に進むのも良いかも」等と可能性を感じ始めているけれどもアクションを起こしていない状態です。そういった人たちにメッセージを伝えて意欲を高め、「実際に解析を学んでみたい」という意欲を高める必要があります。その結果として、書籍を購入したり、ウェブサイトで検索したり、セミナーに参加したりするはずです。その選択肢の中で、ウェブ解析士も検討してほしい、というのが企業(団体)が望む顧客の変化です。

次のステップは、単なる「資格取得」ではなく、「学びながら資格取得」としました。「就職対策で資格を取るだけ」というよりも、実力をつけて実務に活かしてほしいので、「学ぶ」という行為を強調しました。

箱の位置は、軸を意識しながら縦または横へ移動させていきます。右端、左端、上限、下限の位置にも留意します。

「学びながら資格取得」というステップでは、独学の人もいるかもしれませんが、同僚と一緒に学んだり、疑問点を人に聞いたりすることもあるはずです。そうであってほしいので、仲間と学べる機会を運営側としてはなるべく増やしています。そのため、箱の右端は横の軸が進んでいると解釈し、右方法へ延長しています。

このようにして、ステップを繋げてゴールに到達できるようなストーリーを具体化しました。

■顧客のステージを定義

資格制度の企画・運営では、受講者を増やすだけでなく、資格を取得した後のフォローアップも重要です。今回は「カスタマーアナリティクス」として、CRMのように顧客一人ひとりを軸とした分析を行いたいので、ロイヤルティの物差しとして「ステージ」を定義しました。

コンセプトダイアグラムのステップとの関係も図の中で明確にしました。

各ステージにいる人たちの人数や進み具合を確認できれば、資格制度のパフォーマンスを「申し込み人数」「合格者」「満足度アンケート」などのデータよりも細かく把握できるようになります。また、リアルタイムで判定できれば、ターゲティングやオートメーションも可能になります。

■コンセプトダイアグラムとカスタマージャーニーマップはどう違う?

今回は「コンセプトダイアグラム」という手法を使いましたが、同じく顧客視点でユーザーを可視化するフレームワークとしては「カスタマージャーニーマップ」も有名です。最適な顧客体験を提供するために行動と心理の変容を整理するという点は同じですが、カスタマージャーニーマップでは、企業とのタッチポイントごとの課題と打ち手を顧客視点の時系列で整理します。一方、コンセプトダイアグラムでは、企業が望む顧客の態度の変化を軸としてステップに分解し、その変化を促進するために行う施策の位置づけを明確化するという点が大きく異なります。コンセプトダイアグラムはまた、顧客の行動と心理の長期的な変化をデータで可視化し、施策の効果を測ることができる分析フレームワークでもあります。

次は施策の整理とレポート設計

この後は、このコンセプトに基づいて、計測して分析するべきデータの定義と、行うべき施策の洗い出しにつなげていきまました。つまり、図解をベースとしたアナリティクスの要件定義です。詳しくは次回に!

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