「青い池」で知名度UPした北海道美瑛町で「町おこしプロジェクト」なぜ、地域活性化が必要なのか?/#1

はじめまして。北海道美瑛町在住の上級ウェブ解析士の小林孝司と申します。

まず自己紹介を簡単に。某AV機器メーカーでエンジニアとして半導体やオーディオ製品の開発に携わっていました。念願であった美瑛町への移住のため、2009年に早期退職。その年、44歳にしてデジハリに入学、ウェブ制作全般と映像制作に関する知識を習得し、現在は美瑛町のまちづくりを担う組織で町の活性化の取り組みを行っています。
フライフィッシングが大好物で、重度のオーディオマニアな52歳。

人の営みが織り成す美しい丘の農業景観が美瑛町の誇り

今回から前後編で「北海道美瑛町で行った地域活性化の取り組み」を紹介します。

近年では、MacBook Proの壁紙に採用された「青い池」で知名度も上がり、観光客も増えた美瑛町。そんな美瑛町で「なぜ、町おこしのプロジェクトをしなければいけなかったのか?」を説明していきます。

さて、本題に入る前に美瑛町の紹介を少しだけしたいと思います。
美瑛町の魅力は、「十勝岳の雄大な自然と人の営みが織り成す美しい丘の農業景観」です。


<緑のじゅうたんのような秋まき小麦とカラマツの紅葉が輝く秋の美瑛>

風景写真家、前田真三氏の代表作「麦秋鮮烈」がきっかけで広く知られるようになった美瑛町ですが、この美しい農業景観に癒やしを求めて、現在では年間150万人もの観光客が訪れる北海道でも代表的な観光地となりました。

パッチワークの丘とよばれる奇跡の絶景が訪れるものを魅了する

独特な丘陵地形に点在する畑で生産される農作物やその花によって生み出される彩が、大地にパッチワーク模様を描きます。3,000枚もの四角い畑が広がる丘には、じゃがいもの花が一面に咲きほこり、収穫間近の小麦が黄金色に輝き、緑肥のキカラシやヒマワリは、畑一面を黄色いじゅうたんのように見せてくれます。

さらには、同じ作物を続けて作らない輪作体系により、毎年異なる彩が丘をより魅力的に演出しています。


<農作物やその花によって彩られるパッチワークの丘>

このように、美瑛町は一般的な観光地とは異なり、農家の営みそのものが観光資源となっていることが特徴であり、それに魅力を感じる感度の高いお客様が多く訪れる場所なのです。

美瑛町の「青い池」が超人気スポットに!

現在、美瑛町で最も人気の高い観光スポットのひとつになった「青い池」。この「青い池」の写真が、2012年発売のApple社のMacBook Proの壁紙に採用され、話題となったことは、皆さんの記憶にも新しいことでしょう。

実は、この話題がネットメディアで取り上げられたのは、「Macのお宝鑑定団Blog[羅針盤]」に情報を掲載してもらったことがひとつのきっかけでした。
その後、GIZMODOなどのメディアでもこの話題が取り上げられ、瞬く間に拡散していきました。

この直後、「青い池」の観光情報を掲載していた美瑛町観光協会ウェブサイトの訪問者数が3倍以上に増加、実際に「青い池」を訪れる観光客数も増加していきました。

その後、2014年ころから観光情報サイトや旅行雑誌、テレビの旅行番組など、多数のメディアで「青い池」がしばしば取り上げられ、私たちも把握しきれない状態でした。

メディアで取り上げられるたびに、美瑛町観光協会ウェブサイトへの訪問者数が増加、実際の観光客数も確実に増加し、現在でも美瑛町観光協会ウェブサイトの検索ワードのトップは、「青い池」です。

「青い池」の人気が思わぬ展開に

こうして、「青い池」のブームによって、美瑛町の知名度もさらに高くなっていきました。
これにともない観光客数も急激に増加する一方で、通過型観光(美瑛町で宿泊をしない)の加速や観光客のマナーなど、さまざまな問題が浮き彫りになってきました。


<美瑛町観光協会ウェブサイトへの訪問者の年齢構成>

美瑛町はそれまで、丘の農業景観に癒やしを求めて、感度の高い中高年層が比較的多く訪れる観光地でした。
彼らは、ゆったりとした美瑛時間のなかで、お気に入りのペンションに泊まって、旬の美味しい野菜料理を目当てに、毎年、美瑛町に訪れていました。

ところが、「青い池」がブームとなり、これまでとは異なる層の観光客が多く訪れるようになりました。
「青い池」がブームになる前(2014年)と後(2016年)で美瑛町観光協会ウェブサイトへの訪問者の年齢構成を比較すると、若年層の増加が顕著であるのに対し、注目すべき点は、中高年層の減少です

丘の農業景観に魅力を感じ、美瑛町に経済効果をもたらしてきた中高年層の減少は、美瑛町の観光事業者に多大なマイナス効果を与えることは明らかです。
実際に観光客数は、増加しているものの、宿泊延べ数は、減少しています。


<ページ/セッション、平均セッション時間の比較>

こうした状況は、次のように分析できます。

「青い池」を訪れる観光客は、若年層に多く、「青い池」に立ち寄るだけで、本来の美瑛町の魅力に触れることなく、美瑛町から離れていきます。

一方、丘の農業景観に癒やしを求めて訪れていた観光客は、最近の「青い池」ブームで観光客が激増し、ゆったりとした時間を過ごすことができなくなった美瑛町の実情に幻滅し、離れていったと考えられます。

残念ながら、このことはウェブ解析結果やアンケート調査結果からも明らかであり、早急に対策を打たなければなりません。

今回のことを教訓に美瑛町ならではの観光戦略や情報戦略のあり方を検討し、もう一度、「十勝岳の雄大な自然と人の営みが織り成す美しい丘の農業景観」の魅力をしっかりとつたえていきたいと考えています。

次回は、美瑛町のブランド再構築のためにスタートしたいくつかの取り組みをご紹介します。
美瑛町の魅力を伝える体験型イベントを実施/#2

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