本当に価値ある解析を行うための3つのポイント~上級ウェブ解析士発表会より

目次

本当に価値ある解析を行うための3つのポイント

「お前、上級ウェブ解析士の資格、取ってみたら?」

30歳を節目に、未経験でIT業界(Web業界)に転職して半年。仕事でなかなか思うような成果が上がらない私に、そう提案してくれたのは私を雇ってくれた、株式会社ウィナス代表取締役社長   浜辺拓でした。

20161127_1

 

私が上級ウェブ解析士の資格取得したのは2015年6月。入社当時は「思いとやる気」しかなかった私でした。上級ウェブ解析士の資格を取得してからは、コンテンツSEO、A/Bテスト、解析コンサル、運用型web広告提案/運用、web受託開発ディレクション、自社メディア責任者など様々な仕事をマーケッターとして行ってきました。

そこで今日は、少しだけそのストーリーを紹介させてください。

子供3人。嫁1人を説得して、アルバイト転職活動。

20161127_2

妻に「正社員で決まるかわからないけど、挑戦したいのでアルバイトからスタートでもいいかな?」と相談して就職活動をスタートさせたのが2014年4月のこと。

当時の就職活動の面接で私は、「とにかく社長と会わせてほしい」「時給1000円でもいいから雇ってください」と伝えていました。企業からすると、当然履歴書を提出しているわけで、子供3人いて時給1000円って、ちょっと頭がおかしい人なのかな、って思われたかもしれません。さらに、そのときはちょうど、キャッシュアウトが多い時期だったので、妻からしたら反対したい気持ちも大きかったと思います。

前職が年収500万円程度だったのですが、本当に時給1000円で採用された場合、年収は200万円に満たなかったわけで・・・。そういうリスクも話したうえで、転職を認めてついてきてくれた妻には感謝しています。

そうして就職活動をしている中で、運よく今の会社、株式会社ウィナスに拾ってもらい、「正社員」として再就職することになります。

入社した会社の事業内容

私が入社することになった(株)ウィナスは、ベンチャーですがathome、JAL、ABCクッキングスタジオ など大手企業様と直接取引させていただくケースが多い、ちょっと珍しいIT企業です。(通常は代理店はさむケースがほとんどですよね)

ウィナス取引先一覧

ウィナス取引先一覧

行っている事業は多岐にわたっており、近年はIoT、Fintechの分野に力を入れている企業です。(先日も日経MJに取り上げていただきました

 

入社時の私のスキルと、2年半で積んだ経験値

入社当初の私のスペックを記載しておきます。

===================

  • 30歳
    コールセンターSV経験 3年
    法人営業経験(人材派遣・紹介) 3年
    webの知識 なし

===================
入社してからの2年半で取り組んだ業務が下記です。

  • 各種WEB広告運用(アカウント開設/初期設定/運用)
  • コンテンツSEO(自社メディア)
  • SNSキャンペーン企画/提案/運用
  • A/Bテスト設計・運用(VWO使用
  • IoT製品を使ったモニターキャンペーン/コンテンツ制作
  • 有料のアクセス解析資料の作成
  • ディレクター全員に解析スキルを標準搭載することで提案視点の醸成
  • ディレクション業務全般
  • 新規メディア事業 事業設計

・・・など。

実は、上記のうち、ウェブ解析士の資格を取ってからの1年半で経験したものが8割。上級ウェブ解析士の資格を取得は、私が営業・企画する案件の受注率・売上を大きく飛躍させることに貢献しました。数字でいうと、私も営業や企画にかかわり、ウェブ解析の技術も持ち込むことで、案件の受注率が取得前と比べて30%~40%アップさせることができました。

初めて解析の仕事を受注して感じた、難しさ

ウェブ解析士の資格を取得してから、初めにお仕事を頂くまでに1か月とかからなかったと思います。その時の仕事は、ざっくり言うと大手企業のサイトについて「Google アナリティクスの数字を見て、今のサイトの課題を抽出してほしい」という内容でした。

この仕事は、「自分でお客様の話を聞いてきた」のではなく、「営業が取ってきた」解析の仕事でした。とはいえ、早速取得した資格が活用できる!と意気込んで解析作業に入りました。

20161127_4

大手のウェブサイト解析改善は特有の難しさがある

ところが、1人日かけてWeb解析をしても、サイトの課題が見えてきませんでした。

大手のサイトはプロモーションも多岐にわたっているので、たとえば「なぜこの日のアクセスが多いのか?」というのは事業の当時者に直接聞かないとわからないことが多いのです。結果、Google アナリティクス上の数字だけを並べて、「では、指標やディメンションの数字をもとに解決施策を考えてみてね」という意思・提案のない、数字の羅列報告するだけのような現状分析にとどまったレポートが出来上がってしまいがちでした。

そうでないときは、クライアントに提案するのに都合の良い部分の数字だけを切り取って「課題を作り上げる」レポートになってしまい、『本当にこの解析結果から導いた仮説は正しいのだろうか・・・?』と自分自身でも疑問に思ってしまうことも。こういうレポートの場合は、今一つ自信をもってお客様にプレゼンができなかったのです。

中小企業のウェブサイトの改善の難しさは予算と売上への寄与のバランス

一方で、中小企業のサイトであれば課題がわかりやすくて、解析も比較的やさしいです。しかし、改善するには予算とWebサイトそのものへのトラフィックがそもそも少ないという問題があります。

だから課題がわかっていても、その課題を解決して、売上をスケールさせるための改善に十分な投資することができなかったり、トラフィックが少ないので現段階でサイト改修を行っても売上への転換はあまり見込めなかったりします。

結果として「『月3万円でリスティング広告でもやりますか』というケースが多かったかな、と思います。

良い解析を行うための3つのルール

この会社で、初仕事の際、なんとも歯切れの悪いプレゼンを終えて、私は気付きました。

「お金をかけて解析しても、それ自体が売上を上げてくれるわけじゃない」

重箱の隅をつついて、ああだこうだ言うためのレポートではなくて、事業者やユーザーの目線から見て、今どこにテコを入れるべきなのかを明らかにすることに注力したほうがよいのではないか?と考えたのです

そこで自分が解析を行う場合のルールを下記のように決めたのですが、そのルールが功を奏してそこから驚くほど受注率、案件化率が上がりましたので、そのルールをご紹介します。

20161127_5

【ルール1】課題を改善した際に売上インパクトが出せる部分のみ解析する

解析する際は、アクセスの多い場所に焦点を絞って解析することがとても大切です。
とりあえず広く浅く解析を行ったとしても、クライアントに見せる資料に載せる数字はなるべく必要最小限にとどめることを強く意識しました。

レポートに記載される情報は多ければ多いほど、その数字たちが示す課題がぼやけていきます。お客様がKPIをしてウォッチしている値に影響の大きいページ、値に絞って解析を行うことがいいです。

【ルール2】クライアントへ初めて訪問する際、解析士が競合分析を行い、その資料を自社の営業に持たせる

この競合分析は、特に資格を取得したての方々が実践力を身に着けるためにおすすめです。シミラーウェブを使って、セッション数、直帰率、1セッションあたりのPV数、滞在時間などを比較して簡単な資料化するのですが、とにかく数をこなしていくことで経験値を蓄積させていきます。

また、初訪段階ではお客様はお金を払っていないため、わざわざ競合調査資料を持ってくるとは想定していないため、もし、競合調査資料の内容に多少誤りがあっても「シミラーウェブを使った簡易な解析なので」という形で営業サイドも逃げられます。実際はお客様より感謝されることがほとんどでした。

また、営業サイドから言われたのは、「競合調査資料があることでヒアリングが非常にスムーズに行えるようになった」ということです。

「ウェブサイトの課題を教えてください」と聞かれて素直に答えてくれるお客様はまれです。
また、お客様が課題だと考えていることが実は課題ではなかったり、また、営業から聞かれたので、その場を取り繕うのに今思いついた内容を回答している場合も多いかと思います。

競合調査資料があれば、競合の数字と、自社の数字を比較しながら会話をする中で、様々な情報を引き出すことができ、その情報から「そうすると、今の課題は〇〇ということでしょうか?」という課題設定が行われるようになったようです。

【ルール3】解析を行うクライアントとは必ず直接会話をする

私自身も前職で営業を行っていましたが、他人が訪問してきた内容に基づいて企画書や資料を作ることはとても難度が高いです。そのため、そうして作成した企画書や資料で提案してよい結果に結びつくことは少なかったです。

解析も同様で、解析士自身できちんとお客様の事業の「今の状態」をお客様からヒアリングしなければ、良い解析を行うことは非常に難しいのです。

現在私は、解析の依頼をうけるときには、先方の会議室を2~3時間確保してもらい、直近の売上データや会員数の推移なども含めてディスカッションしながら解析を行うことも珍しくありません。

事業者とのコミュニケーションをとりながら話を進めることで、同じ目標に向かって頑張ろう!という空気が生まれれば、その仕事は十中八九、決まります。

まとめ

さて、参考になりましたでしょうか。

ウェブ解析士の資格は、取得しただけではあまり価値がありません。メリットとしては、少しだけお客様が「なにこの資格?」「解析士なんですね、すごいですね」と話を聞いてくれるようになるだけだと思います。

とにかく実践で解析を続けること、それが何より大切です。資格を取った後に、「私はプロです!」と営業先で言いながら、水面下で必死に勉強を続けていく必要があるのはどの士業も一緒です。

会社の事業や自分の職種に応じて、「どうやって解析を売上・利益に転換するか?」という視点で、今の自分の仕事を見直してみると、よりよい解析の活用方法がみえてくるのではないかな、と思います。

(個人的には、「自分のクリエイティブ実績を数字で語れるデザイナー」とか、すごく強いと思います。)

上級ウェブ解析士 飯島 正博
株式会社ウィナス 企画・マーケティング事業部 マネージャー

デジタルマーケティングを基礎から総合的に学ぶには

Google アナリティクスをはじめとしたGoogle系のツールは、その使い方を知ることも大切ですが、使うための戦略や設計が必要です。それは、ビジネスに成果をもたらすために必須の考え方です。

ウェブ解析士協会では、このようなデジタルマーケティングの基盤となる「ウェブ解析」を体系的に学べる環境と、知識・技術・技能に一定の評価基準を設け、あらゆるデータから事業の成果に貢献する人材を育成しています。

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

大手企業を中心にウェブ解析、ABテスト設計・運用、ディレクション、コンテンツマーケティング支援などウェブマーケティング全般の支援を行っています。
株式会社ウィナス 企画・マーケティング事業部マネージャー

目次